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CDTVサタデー終了に寄せて ~なぜ偉大な番組なのか

CDTVサタデーが3月で放送を終了するらしい。

ああ悲しい。ショックが過ぎる。かくいう僕は、CDTVと共に人生を歩んできたと言っても過言ではない。なんせ小6の時の文集の将来の夢には、CDTVのスタッフなんて書いた事もある。番組を見始めてからは3度ほど録画に失敗した回を除いて全て視聴しているのだ。

深夜版を終了し、ゴールデンタイムに放送されている派生番組「CDTV ライブ!ライブ!」に一本化する事で方針はまとまったらしいが、そちらはあくまでもゲストライブが中心のプログラムだ。改編を見越してなのか、確かに最近は月間ランキングも放送していた。しかし深夜版のような充実したランキングの放送は今後もないだろう。

では、深夜版のCDTV終了を何故ここまで惜しむのか。ここからは理由を挙げて説明したい。

①28年にも及ぶ異例の長寿番組

1993年4月に放送が始まり、この春で丸28年。J-POP系の音楽番組としてはミュージックステーションに次ぐ長さを誇り、深夜番組全体で見ても相当な長寿番組である。

②番組の基本構成がほぼ変わらない

カウントダウンTVというぐらいなのだから、番組の目的は当然ランキングをカウントダウンする事だ。ここが28年もの間、全くブレなかった。

他の音楽番組のように過度なバラエティ化はなされず、ランキングと特集コーナーを軸にした番組構成で音楽情報を届け続けた功績はあまりにも大きい。番組で扱うランキングがシングルチャートベースから複合チャートへ変わった2017年は大きな転機だったが、それでもカウントダウンを続ける姿勢に一切変わりはなかった。

CGキャラクターによる進行という点も番組スタート時から貫き続けている。そのような特性が生かされたのが、2020年のコロナ禍だ。緊急事態宣言により各番組が自粛モードになった際も、平常時と変わらぬ構成で番組が届けられた。当時ライブ!ライブ!の放送開始により深夜版が「CDTVサタデー」にリニューアルされゲストライブが激減したのも大きいが、あのような非常事態でも番組を遜色なく届けられる底力には心底驚くばかりだった。

ちなみにテレビ東京では昨年「JAPAN COUNTDOWN」が22年もの歴史に幕を下ろしたが、カウントダウンを謳っているにも関わらずランキングは次第に片隅に追いやられ、後期はほぼ特集コーナーで埋め尽くされていた。CDTVはそれを6年も上回る28年もの長きに渡り放送されている時点で既に稀な番組だが、それでいてブレていない。これがどれだけ凄まじい快挙か。

③ランキングはジャンルレス

初めて番組を見た時、衝撃を受けた。当時の自分はHEY! HEY! HEY!やミュージックステーションなど音楽番組のランキングコーナーをいつも楽しみにしていたが、TOP40を全て紹介する番組なんて見た事がない。声優や演歌など、そこにはチャート上位や他の音楽番組では分からない、はじめての世界があった。

そもそもランキングは売れているかどうかが全てであり、ジャンルは関係ない。他の音楽番組では決して登場しないような楽曲も、ランキングという形式をとったからこそ地上波でオンエアされたのだ。自分自身の音楽に対するジャンルレスな姿勢はCDTVによって育まれたものであり、大変感謝している。

④多彩な特集コーナー

最近では「CDTVサタデー」へのリニューアル及び放送時間短縮でだいぶ減ってしまったが、かつては多くの特集コーナーがあった。

例えば新曲EXPRESSのように、1ヶ月分の新曲をまとめて先出ししてくれる企画は他の番組にはない。またアルバムやDVD&Blu-ray(かつてはビデオだった)、カラオケなど多彩なランキングの紹介や、プロモロケ場所ツアーなどユニークなコーナーも多かった。他にも梅雨の時期には雨に降られているPV、クリスマスの時期にはクリスマスソングなど、常に音楽を通して季節を感じさせる企画を打ち出し続けたのも印象的だ。

また、かつては毎月最終週の放送においてTOP100全曲紹介というコーナーがあった。普段は放送されない51位以下の楽曲をダイジェストで全て流すという、ランキング好きとして本当に重宝する番組であった。下位は一曲あたりの秒数もほんの僅かだが、この一瞬から名前を知ったアーティストも数多くいる。

⑤深夜帯から異例の出世

CDTVはゴールデンや年越し特番の放送など、単なる深夜番組の枠に留まらない存在感を見せてきた番組だ。"カウントーダウン!"のかけ声や、"COUNT DOWN TVをご覧の皆さんこんばんは"の挨拶は広く知られているし、バラエティでも度々パロディのネタになっていた。しかも高確率でウケるのだ。

中でも番組の知名度向上に一役買ったのは、1996年スタートの「王様のブランチ」で「CDTVリピート!」というコーナーが放送され始めた事だ。

ブランチと言えば、現在まで続く毎週土曜日の朝~昼をまたぐ4時間超の大型番組である。23歳の女性がターゲットという事でテレビやグルメ、映画などのコーナーが並ぶ中、音楽もそのラインナップに加わった。当時、大衆音楽は若者文化において今よりも遥かに重要なウェートを占めていたのである。

中でも「CDTVリピート!」は、前週深夜に放送されたランキングを昼帯に再放送するという試みだった。当時深夜番組を見る習慣がなかった僕は、ブランチ開始間もない1996年の4月にたまたま番組を見ていてCDTVを知り、後に深夜版も視聴するようになった。同じような経験がある人も多いのではないだろうか。

ちなみに一時期「CDTVゴールド!」という名で土曜7時というゴールデンタイムにレギュラー放送されていた事もある。当時はブランチでのリピートと合わせて週に3回も同じランキングが流れるという異常事態だったが、同じ曲でも映像が微妙に差し代わっていた。

他の時間帯への進出や派生番組の誕生といった転機があっても、一貫して深夜版の放送も続けてきたCDTV。それがよかったのだが、遂にその歴史に幕を閉じる事になってしまった。

CDTVライブ!ライブ!の放送開始

派生番組であるCDTVライブ!ライブ!は2020年3月にスタートした。番組名にも入っている”ライブ”には、観客を入れてライブの熱気を生中継で届けるという意図が込められていたが、コロナ禍により実現が不可能になってしまった。また深夜版のCDTVはランキングを中心とした「CDTVサタデー」にリニューアルし、放送枠も70分→30分に大幅短縮した。

ライブ!ライブ!は正直当初から厳しいと思っていた。現に視聴率では大苦戦を強いられており、春の改編でもテコ入れを避ける事はできず月10→月9への枠移動が決まっている。しかしツイート数は堅調で、毎週トレンド入りするのが恒例になっている。これをどう捉えればよいのだろうか。

実際、視聴者とアーティストには易しい番組であると思う。アーティストのファンは、他の番組ではなかなか披露されないフルサイズでのパフォーマンスを見る事ができる。またアーティスト側の希望する選曲や演出プランを尊重するなど、音楽の作り手と聴き手の見たいものを実現していくという意味では、理想的な番組と言えなくもない。

そもそもTBSは音楽番組にこだわりがあるようだ。例えば初夏に各局で放送される大型音楽特番の元祖はTBS「音楽の日」であり、放送時間も一番長い。長ければよいというものでもないが、それだけ局として力を入れているというのは事実だろう。

また他局がゴールデン帯から音楽番組を引き上げた後も、TBSは粘り強く放送を続けてきた。特に「うたばん」の終了は大きかっただろう。その後も短期間で打ち切りになった音楽番組があったものの、すぐにリニューアルした新番組をスタートさせるなど、音楽への執着はかなりしぶといものがあった。

しかし2013年終了の「火曜曲!」を最後に、TBSからゴールデンタイムの音楽番組は消えた。他局を見てみても、テレビ朝日系のミュージックステーション以外でJ-POPを扱う音楽番組は残っていなかった。そこから7年も経ってライブ!ライブ!をスタートさせたのは相当なチャレンジであり、最初からある程度逆境は承知していただろうと思う。

正直、想定以上に視聴率はついてきていない。出演者のファンでなければ概ねスルーされるような番組内容だろうし、特に4時間スペシャルの回など尺を無理矢理埋めているのではと思う時もある。

それでも番組が続くのは、局全体の視聴率の不振と、音楽班の情熱からではないかとみている。バラエティ化せずストイックに音楽を届けている番組なので、この挑戦がどこまで続くのか、ひとまず見守っていきたい。そして深夜版が終了してもランキングの灯を絶やす事なく、ライブ!ライブ!でランキング発表が続いていく事を切に願う。

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