【SUISEI WORKS🪐】HOTEL SHE, × 泊まれる演劇で挑戦する唯一無二の宿泊体験づくり｜泊まれる演劇の舞台裏Vol.2運営編

2024年8月24日 11:18

株式会社水星のエンターテインメント事業部が展開するホテルに滞在しながら鑑賞・体験する没入型の演劇作品「泊まれる演劇」。日本で唯一無二の宿泊型イマーシブシアターとして、これまで、累計13作品、のべ10000人以上のゲストを動員。これまでの演劇や宿泊体験の枠に留まらない新しい体験として今、大きな注目を集めています。

今回は全3回にわたって、「泊まれる演劇」を特集。泊まれる演劇そのものの価値やクリエイティブの考え方、最新作に関するお話を伺った第1弾に続き、今回はホテル運営やチームマネジメント的な目線で、泊まれる演劇を実現するためのホテルの裏側について、泊まれる演劇ステージマネージャーの飯嶋さんと、HOTEL SHE, OSAKA支配人・伊豆田さん、HOTEL SHE, KTOYO支配人・岸さんの3名にお話を伺いました。

＞＞第1弾はこちら

飯嶋崇
エンターテイメント事業部・泊まれる演劇ステージマネージャー
神戸市生まれ、神戸市育ち。学生時代に演劇と出会い俳優デビュー。映画・劇場・テーマパークを渡り歩いた結果イマーシブシアターに出会い、「泊まれる演劇」にキャストとして出演。花岡直弥との出会いをきっかけに、2022年水星に入社。以降キャストではなくステージマネージャーとして泊まれる演劇の運営を統括している。また、年間の1/3以上携わっているイマーシブシアターでの経験を活かし、キャストへの演技指導及び、スタッフの接客力向上にも努めている。

伊豆田健人
HOTEL SHE, OSAKA支配人
1997年大阪生まれ、大阪育ち。大学卒業後、人材企業にて1年半勤め、2021年水星に入社。現HOTEL SHE, OSAKA支配人。ホテル運営業務をしながら、イベント企画・実行、人材育成や採用など幅広い業務に従事している。個人としてもDJ活動をしており、音楽を中心とした様々なカルチャーを愛している。レペゼンHOTEL SHE, OSAKA。

岸えりな
HOTEL SHE, 統括マネージャー、HOTEL SHE, KTOYO支配人
1994年、兵庫県丹波市生まれ。同志社大学文学部美学芸術学科卒業後、住宅設備メーカーで法人営業を行いながらフリーランスでデザイナーを経験。ホテルという手段を通して世の中に新しい選択肢を与える仕事に興味を持ち、水星に入社。現在はHOTEL SHE, KYOTOの支配人とHOTEL SHE, の統括ブランドマネージャーを兼務しながら、水星のインハウスデザイナーとして全社的なグラフィックデザイン業務までを幅広く手掛ける。

自社ホテルを舞台にするからこその魅力と可能性

ー第二弾では現場の運営視点も含めて、HOTEL SHE, 支配人のお二人とステージマネージャーである飯嶋さんに、ホテルとの連携についてなど、世界観を作っていくための具体的な裏側についてのお話を聞いてみたいと思っています。はじめに、そもそもどのような流れで実際の公演に至るのか、準備段階の流れについて飯嶋さんから教えていただいてもいいでしょうか？

飯嶋
流れとしては、まず台本とか企画ができあがってきて、公演の2カ月前からリハーサルがスタートします。とくに最後の3週間は毎日朝から晩まで稽古場にこもって、アイデアを出しながらゲストとのコミュニケーションなど、舞台の設計をしていきます。実際にホテルに入ってリハーサルできるのは最後の10日間くらいなので、限られた時間の中でホテル全体を使ってみてどれぐらい時間がかかるのかとか、実際の美術セットが組まれていく中でこんな隠しスペースあったら面白いことできないかなとか、いろんなアイデアを考えます。

ーホテルスタッフとの連携はどのようなタイミングで行われるのですか。

飯嶋
リハーサル期間中、ホテルスタッフはまだ通常営業をしているので、その合間をぬって今回の公演のモチーフや台本を共有して内容を伝えるようにしています。最後の10日間の現地リハーサルの際に皆さんにも参加いただき、どんなふうに接客してもらいたいのかを具体的に伝えて、テストプレイ（有観客ゲネプロ）含めて本番までブラッシュアップしていく流れになっています。

ー飯嶋さんはもともと俳優として活動をしていたわけですが、ホテルだからこそ大変だったりする部分はあるのでしょうか？

飯嶋
通常の一般的な舞台演劇でも本番同様のリハーサルができる期間は限られているので、異なるポイントとしては自分たちの持つホテルでやっているところかなと思います。通常の舞台演劇だと劇場の閉館時間があるので22時くらいには出なければいけないのですが、自社のホテルだと比較的融通が利くので、もちろん終了時間はありますが、準備したり、練習に打ち込んだりしやすい環境であると思います。

ーなるほど、自分たちでスペースを持っているがゆえ、心ゆくまで細かな部分にこだわることができると。

飯嶋
もちろん自分の体力と相談にはなりますが、目指すクオリティに向けてみんながぎりぎりまで切磋琢磨しています。それから、通常のエンターテイメントと大きく違うのが宿泊をともなうところで、実際のホテルスタッフにも参加いただくというのが一番違うポイントかなと思います。特に、ホテルメンバーも作品の登場人物の一人になっていてゲストとの接点も多いので、チェックインの仕方やお見送りの仕方に至るまできちんと世界観を表現していただくということを意識しています。でも、ホテルにも世界観はあるので、ホテルスタッフからすれば普段とやっていることは変わらないのでしょうか？

伊豆田
そうですね、演じるというと役者的というか演劇的ですが、お客様にあわせて接客をするという点では、普段からやってることが同じかもしれないですね。

岸
ただ、アドリブ力が試される気がします。チェックイン前のルール説明をする際にも、物語のストーリーラインに沿っている必要があって、お客様から突飛的な質問がきた時には、世界観の中でアドリブで対応しないといけない。そのためにはもちろんストーリーを全て把握している必要があるので、普段の接客とは違う部分もあるなと感じます。

ゲスト視点をもって、ホテルスタッフにも世界観の中で役を演じ切ってもらう

ーホテルスタッフを巻き込む際に工夫していることはありますか？

飯嶋
僕から特別なレッスンをしたり、必ずこうしてくださいというような指導はしていません。それぞれが世界観を解釈してくれて、そこにマッチする接客をしてくださっています。大切にしているのは、世界観を体験してもらうことですね。必ずホテルメンバー全員にテストプレイや関係者公演などを体験していただき、ゲストの視点を把握してもらうようにしています。

ーホテル側の目線で見て、泊まれる演劇をやることで普段の接客や運営に生かされている部分はあると思いますか？

飯嶋
僕としてはむしろ通常営業のホスピタリティを、泊まれる演劇で生かしてもらっている感じがします。

岸
私としては飯嶋さんとみっちりリハーサルをやることで、ホテルスタッフ全員のホスピタリティを上げる参考になっている気がします。元役者さんがホテルのフロントに立つことは普通ないと思うのですが、元役者さんだからこその気遣いや喋り方を見ていてすごく気持ちいいなと感じます。

伊豆田
たしかに、話し方がすごくハキハキしていて、明るいところは役者さんから刺激をもらっているかもしれません。役者さんだからこそ話し方や所作までこだわりきるというところがホテルスタッフとは違うなと感じます。

ー第1弾の記事では（プロデューサーである）花岡さんが「演劇ではあるが、あくまで宿泊体験である」とおっしゃっていたのですが、飯嶋さんとしてホテルにおける演劇だからこそのこだわりや信念はありますか？

飯嶋
チェックアウトした後も、ゲストの方々にはその世界観が続いているように感じていただきたいですし、前日の夜の体験がまるで夢だったんじゃないかという感覚に陥ってほしいとも思っていて。チェックアウト直前の朝にはキャストさんの出番がないので、ホテルスタッフがメインでゲストの対応をするんです。その時間を通じて、ホテルを出た後もその世界から抜けきれないような感覚を味わっていただきたいなと思っています。

ー2日目の朝がポイントだと。たしかに、普通の演劇ではないですもんね。支配人としてのこだわりなどはありますか？

岸
話は変わってしまいますが、公演ごとにホテルの名前も変わるので、自分たちが働いているホテル自体が変わっているような気がして、不思議な感覚になることがあります。今私がいるのはHOTEL SHE, KYOTOですが、公演中には全く異なる世界観のホテルの従業員になるので、おとぎ話の登場人物の一人になっているような感覚になるんです。

伊豆田
前作では登場人物全員が特殊能力を持っているという設定だったのですが、それぞれのスタッフの特殊能力を監督と相談しながら決めていて、要は全員がキャスト扱いなんですよね。それも面白いし、自分たちもそれによって演劇の世界に没入できた気がします。ちなみに僕は「糸杉」という名前で、特殊能力は「見た人が誰のことが好きかがわかる」でした（笑）。

飯嶋
出演する演劇キャストとホテルメンバーの境目をなくしていきたいんですよね。HOTEL SHE,で演劇を上演しているのではなくて、期間中は本当にQUEEN’S MOTELになるんです。

ゲスト至上主義を徹底し、期間中もより良い公演をつくっていく

ー上演中も来られたゲストの意見を聞きながら、体験向上のためにPDCAを回していると聞いたのですがいかがですか？

飯嶋
おっしゃる通りです。ゲスト至上主義で、アンケートが一番の指標になっていると思います。毎週（プロデューサーの）花岡さんがアンケートをまとめて改善すべき点や課題を見つけて、すぐさま対応するようにしています。加えて、モチベーションの観点でいうと、毎日必ずキャストやホテルメンバー全員で集まってそれぞれの調子を確認するブリーフィングを実施しています。そこでその日来場するゲストの情報を共有したり、前日のトラブルなどがあれば話し合うようにしているんです。

ーでは最後に、今後に向けた抱負など、それぞれ考えていることがあれば伺いたいと思います。

飯嶋
HOTEL SHE, のメンバーには泊まれる演劇の世界観を理解してくれる素晴らしいメンバーが集まってくれています。だからこそ、それがもっといろんなところに広げていけたらいいなと思っています。例えば、よりたくさんの人たちが他のホテルともコラボして公演をやるとか、もっと幅広い取り組みができたらいいなと思います。

岸
泊まれる演劇の準備期間中はホテルの中を大改造して、オペレーションも全く違うものになって、まるで数日間で新しいホテルを一からつくっているような感覚になるんです。それを指揮するのはある意味で新しいホテルをつくるみたいなものなので、本当のホテルの開業準備の練習ではないですが、ホテルの経営視点でも泊まれる演劇はすごく勉強になるなあと思っていて。今は私たちがその立場をになっているわけですが、徐々に自分たちの手から離れていっても大丈夫になって、いろんな人がその指揮をできるようになれば、水星としてもすごく貴重な人材の育成になるのではないかなと思っています。そういう観点でもぜひ泊まれる演劇を活用していきたいなと。

伊豆田
僕も岸さんと同じように、泊まれる演劇は現場のメンバーが新しいオペレーションを構築して練習する思考実験の場になると感じています。すべてをゼロからつくるということはホテルに関わる全員がやっておくべき経験だと思うし、水星がこれから新しいホテルをつくる際にも必ず役に立つはず。それに、純粋に現場に立っていると気付けない視点を学ぶことができるので、社外のプロたちによってホテルが変わっていく過程に携われることはとても価値のあることだと感じます。

泊まれる演劇

QUEEN'S MOTEL　※チケットは全日程完売となっております

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