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家が安全ではない方々と、ホテルをマッチングさせるプロジェクト 『ホテルシェルター』ができるまで

なけなしの勇気で、新しいプロジェクトを始めます。

何もせずに傍観者でい続けるよりは遥かに多くの方々に意義ある選択肢となるサービスなのだと強く信じ、己を奮い立たせ、決して立ち止まらず、二度と振り返らず、走り抜けることを決めました。

それが、家が安全ではない人とホテルをマッチングさせるプラットフォーム、『ホテルシェルター(HOTEL SHE/LTER)』です。家にいられない、家に帰りたく無い、家以外の拠点が欲しいと望むゲストに対して、感染対策を前提とした運営を行なっている全国のホテルが、客室を1週間単位で低価格で貸し出すことができるサービスです。自宅とは別にシェルターが欲しいと思い立ったとき、このサイトにアクセスすれば自宅・職場近くのシェルターとなるホテルを即座に見つけ、予約することが可能となります。

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(イラスト:トチハラユミ、ロゴデザイン:ki_moi


『STAY HOME』できない人のためのシェルターとしてのホテル

私たちの運営しているホテルは、4/5のチェックアウトを最後に全て休館しました。4月の売上は例年と比べ半減しているとはいえ、まだたくさんの予約もいただいており、楽しみにしてくださっているゲストがいたため営業する選択肢もなかったわけではないのですが、休館に踏み切った主な理由としては、従業員とゲストの健康と安全を守るため、「STAY HOME」を企業として呼びかけないといけないと強く感じたから、というのがもっとも自分の率直な感情に近いと思います。

しかし、実際に休館して気づいたのは、果たして全ての人にとって「STAY HOME」がベストな選択肢なのだろうか?ということです。

つまり、多くの人にとっては自宅にいることがもっとも安全ではありますが、自宅にいることがかえってリスクとなっている人が少なからず世の中に存在していると思うのです。

例えば、家庭内に問題を抱えている方。家庭内暴力や、モラハラ、虐待、そこまでいかなくてもちょっとした家庭内の不和など、外出自粛は家族のトラブルを増幅させてしまいます。そのようなストレスから逃げ出したい、距離を置きたいという方も、少なからずいらっしゃるでしょう。

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あるいは、共働き家庭で留守番をしないといけない子供・学生たち。近くに親戚や頼れる方がいる場合はいいのですが、長期間にわたって夜遅くまで子供を留守番させることをためらう方々がいます。

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また、全ての人が自宅にこもり続けることができるわけではありません。最近では、「コロナに怯えたり、在宅勤務ができるのは特権」という考え方が少しずつ広まっているようですが、生活を維持するため、あるいは社会の要請に応えるために出勤を余儀なくされており、勤務後に自宅に帰ることがリスクになっている方もいると思います。

例えば医療従事者。少し前にTwitterで、看護師をされている方の子供が保育園で隔離保育されていた、という心を痛めるエピソードが話題になっていましたが、自宅に帰ることで家族や大切な人に感染させてしまうのではないかと不安に駆られている方がいます。

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また、高齢の家族と同居している方。不特定多数に接触しないといけないサービス業従事者の方。会社に出勤しないといけないサラリーマン。学校に通わないといけない小中高生。自分は健康でも、無症状の陽性になり大切な家族に感染させてしまう不安を抱いている方々がいます。

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もちろん世の中の多くの方にとって、家族や大切な人と自宅に引きこもって過ごすことがベストでしょう。しかし、家にいること、家に帰ることが、身体的なリスクになっていたり、あるいは心理的なストレスになっている方がもしもいるのだとしたら(そして、きっといると思うのです)、その方々が安心して過ごせるシェルターのような場所が必要だと思うのです。

そうした方々に、『ホテル』という安全な空間を提供する、というのがこのホテルシェルターの大きな目的であり、使命だと考えています。


外出自粛と事業維持の間で葛藤する企業経営者に

世の中の多くの経営者は、従業員やその家族の生活維持と安全確保の間で葛藤している方ばかりだと思います。できることなら、安全を考えて全て在宅に切り替えたい。しかし、事業が止まってしまえば、会社関係者の生活を守ることができない。二者択一なんてできるはずがないのに、健康と生活を天秤にかけて、どちらかを取らないといけないなかで、なんとか二兎を追う方法を模索する。ほとんどの経営者の方の日常がこの課題で占められていると思います。

苦しんでいる患者さんが待っている医療機関、社会の生活を支えるために出社しなくてはならない小売業や交通機関、機械を扱う業務のため出社停止が事業停止を意味する第二次産業など、あまりに苦しく、難しい決断が迫られている企業経営者がほとんどだと思います。

このような状況下で、経営者の方にとってもホテルシェルターは一つのソリューションになり得ます。企業や医療法人が主体となってホテルシェルターの客室を借り、希望する従業員に貸与するなど社員寮的な使い方をしたり、リモートワークをする従業員にオフィスとして貸すなどの使い方が可能になるので、従業員の安全確保に役立てることができるようになると思うのです。


脱観光が求められるホテル業界に

一方で、ホテル業界も大きな転換が必要とされています。今までは東京オリンピックに向けてイケイケどんどんで、新しいホテルを建ててもほっておけばお客様がどんどんやってくる時代でした。私たちのような一部のホテルは、そのような状況に危機感を感じて、指名買いしてもらえるようなホテルプロデュースに力を入れてきていましたが、旅行や出張といった長距離の移動がはばかられる社会情勢になってしまえば、今までの取り組みも水泡に帰すほかありません。

今までのホテル業界は観光業における装置産業として存在していましたが、コロナに適応し生き残るには、個人や法人に長期的に空間を賃貸する「不動産業的」な産業構造へと変化するか、あるいは衣食住を包括するサービスであることを活かした「福祉施設的」なサービスへと変化していく必要があると思います。

私たちは先日すでに、苦境に喘ぐホテル事業者の方々にとっての一選択肢となるべく、ホテルのD2Cプラットフォーム・CHILLNNを通じて『みらいに泊まれる宿泊券』というサービスをリリースさせていただいています。想像していたよりはるかに多くの事業者様に暖かく受け入れていただき、多くの施設様がCHILLNNを通じて宿泊券を販売してくださいました。また、たくさんの心優しいゲストの方々に、将来泊まる日のために宿泊券をご購入いただきました。(本当にありがとうございます・・・!!🌹)

▼みらいに泊まれる宿泊券にご興味をお持ちいただいた方は、よろしければこちらのCHILLNNオフィシャルサイトからご覧ください。

しかし、宿泊券の販売はあくまでボーナス収入を得るための一選択肢でしかありません。根本的な延命を試みるには、この世界的な危機を前に焼け石に水程度の効果しかないことはおそらく誰よりもわかっています。

ホテル業界には、感染拡大以前の売上には遥か及ばないかもしれないけれども、施設や雇用の維持が可能なラインの収益化を図ることができる、新たなビジネスモデルが必要です。そして、それは『観光』という文脈では語ることができない、より『不動産業的』で『福祉施設的』なサービスとなるでしょう。

大規模なホテルでしたら、国や都道府県の要請に応じて軽症・無症状患者の受け入れを進めることができますが、客室数の少ない中小規模のホテルではそのような公的な支援を受けることは容易ではありません。資金力や人的リソース、政治的なコネクションの限られるホテル事業者は、成すすべなく早期に収束することを願い苦境を耐え凌ぐほかありません。また、ユニークなプランやキャンペーンを打ち出しても、ゲストが泊まりたいと願ったとしても、移動が憚れるこの時代においては、奇跡的にホテルの半径数キロ圏内に住んでいたケースを除き多くの方にとって宿泊しに行くことは現実的なことではないでしょう。

だから、ホテルの連帯が必要です。

業界内での既得利益への集約や競合の潰し合いは、ゲームチェンジではなく業界の縮小を招き自らの首を締めることになります。ひとつひとつのホテルの影響範囲は決して大きくないかもしれませんが、業界が団結することで新しい需要を捉え、ホテルという旧態依然のサービスを新しい時代に適応させて行くことができると思うのです。


シェルターであるホテルがクラスターとならないために

私たちのホテルは今休業していますが、まだまだ営業を続けるという選択をしているホテルもたくさんあります。私が心配しているのは、そこで働いている従業員の安全がどのように守られているのか、ということです。

シェルターといっても、通常のホテル営業のオペレーションのままでは、感染対策が不十分で最悪の場合ホテルがクラスター化してしまう可能性があります。お客様に『ホテルシェルター』加盟ホテルをオススメする最大の理由は、感染対策を徹底した専用ガイドラインに基づいてホテル運営を行なっており、感染リスクを最小限に抑えている点です。

今、世の中に感染対策を前提としたホテルの運営ガイドラインはほとんどありません。世の中に出回っているガイドラインの多くは医療機関向けであり、数十ページの資料を読み解き、理解し、実際のホテル運営に落とし込むのは、この状況下では非常に難しいでしょう。また、ホテル向けとされている資料の多くはコロナショック以前に作成されたもので、このように感染拡大が深刻化している現状ではあまり効果的ではありません。

今、ホテル業界に必要なのは、ホテルを安全に営業するための、あるいは安全に営業再開するためのガイドラインです。専門家の監修のもと、実際に運営に落とし込みやすい形で、イラストや図を多用した(ホテル業界には日本語が不慣れな方や高齢者も多くいらっしゃいます)わかりやすいガイドラインが必要です。

ホテルシェルターというプロジェクトを実行する上で、従業員の安全を守り、ホテルのクラスター化を防ぐ、本当の意味で安全なシェルターを目指すために、この感染対策ホテル運営ガイドラインが不可欠だと考えています。

なので、私たちは現在、医療関係者のフィードバックのもと、ゾーニング、非対面チェックイン、事前決済、防護アイテムを着用しての客室清掃などを盛り込んだ、公衆衛生的に望ましく、従業員とゲストの安全を守れる運営ガイドラインを作成しています。

ホテルシェルターに加盟される施設は、この運営ガイドラインをもとに運営を行なっていただくため、通常の運営方式で営業を行なっているホテルに比べてかなりクラスターの発生リスクを抑え、従業員・ゲストの安全を守ることができると考えています。


広告自粛が叫ばれる広告業界の選択肢に

また、いわゆる消費喚起を訴える広告の展開が難しくなったり、予算減により出面が狭められている広告業界にとっても一つの選択肢になりうると思っています。

LAWSONが医療従事者へのデザート無料キャンペーンを行なったり、(企業ではありませんが)リアーナがDV被害者への支援金を寄付したりと、現在の広告業界では感染拡大によって難局に立たされている立場の方々を支援する形でCSR活動を行うのが主流になっていると感じます。

このような寄付や支援を願う企業・組織とホテルシェルターが提携することで、医療従事者・サービス業従事者・DV被害者・ネカフェ難民などのユーザーに対して、例えばホテルの借り上げ及び客室の無償提供を行なっていただいたり、食品の物品協賛を行なっていただいたり、本やDVD、ゲームなどの客室で楽しめるコンテンツを提供していただいたりといったコラボレーションが可能になるのではないかと思っています。


ホテルシェルターは社会の効用を最大化できるか

このホテルシェルターを通じて、社会に対して『五方よし』となるようなサービスを提供できることを心から望んでいます。

①家にいること・帰ることがリスクやストレスとなる方々
②出勤する従業員の安全を確保したい企業経営者
③収益減に苦しむホテル経営者
④安全なホテル運営を行いたいホテル従業員
⑤支援や寄付を通じたCSR活動を望む協賛企業

これらの全ての立場の方々にとって、ホテルシェルターがひとつの意義ある選択肢となるサービスとなることを願っています。


正直、今、過去最大の勇気を持ってこのプロジェクトを報告しています。

どんなに万全を期しても、ウィルスを100%コントロールすることはできません。従業員や、ゲストが感染する可能性がゼロであることを保証することは誰にもできません。

でも、このサービスを提供することで少しでも新たな選択肢を得ることができる方がいるのだとしたら、生活の安全を守れる方が増えて、企業が従業員に会社で寝泊りさせたり満員電車に乗らせずにすんで、ホテル事業者が資金繰りを少しでもよくできて、ホテル従業員が自分の健康を守りながらサービスに従事できるようになって、協賛企業が意義あるCSR活動をできるようになるのだとすれば、このプロジェクトを行い社会の効用を最大化させる意義は大いにあると思うのです。

そう信じて、ホテルシェルターをリリースします。

このサービスが、誰かにとってより良い選択肢となることを心から願います。

安全が何より大切なサービスであるため、慎重に運営開始していきたいと考えています。まず、4月中に専門家監修のもと、ホテル運営ガイドラインを固め(オープンソース化し加筆修正ができるようにします)、運営テストを行うためにまずHOTEL SHE,で試験営業を行います。その後、運営フィジビリと安全性が確認されてから、5月以降に順次他施設への送客を行なっていく予定です。


WANTED

ホテルシェルターのご利用を検討いただいている個人・法人様の先行申し込み、またホテルシェルターを世の中に実装していくために、一緒にプロジェクトを推進していただける企業・団体様を受付しております。興味あります場合は、ぜひお気軽にご連絡いただけますと幸いでございます。

▼まずはこちらの公式webで概要をご一読くださいませ!

①加盟をご検討いただいている施設はこちら
②先行申し込みをご検討いただいている方はこちら
③先行申し込みをご検討いただいている企業・医療機関はこちら
④協賛や物品提供をご検討いただいている企業はこちら
⑤取材をご検討のメディアはこちら→pr@chillnn.com
⑥エンジニアの応募はこちら→customer@chillnn.com
⑦そのほか問い合わせはこちら→customer@chillnn.com

上記のいずれにも当てはまらない方も、もし友人・知人でこの情報を必要とされている方がいらっしゃる場合はぜひお伝えいただけましたら大変ありがたいです。

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