夜露
「この線香花火が終わったら、さよならしよう」
彼女はそう言って、その先端に火をつけた。
初めは穏やかに輝いていたものが、激しさを増し、やがてはちきれそうな程に膨らんだ。
「ねえ、私達さ」
風が花火を揺らす。
僕達の恋は落ちていった。
甘くて儚くて、劇的な刹那だった。
彼女は顔を上げ、微笑む。
僕の大好きだった綺麗な睫毛は濡れていて、月を反射する夜露みたいだった。
時が止まってしまえばいいのに。
そんな月並みな言葉を、
僕は何度も心の中で繰り返した。
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