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本と美しさ

 昨日は音楽について書いたので今日は本について。
 私は何かを褒めるときの最大の褒め言葉が「綺麗・美しい」なのだが、それを全身で感じた作品がある。凪良ゆうさんの「流浪の月」だ。当時の帯の言葉を今でも覚えている。

 一緒にいたい。でも、愛ではない。

 読めば、その意味が少しずつ形を持って浮かんでくる。形を成し、崩れ、再び形を持っていく。主人公と、ともにありたいもう1人。2人の間にあるものは2人の間にしかなく、誰も壊せないどころか侵入さえもできはしない。こんなにも綺麗な関係があるのか、と初めて読んだ時は息を呑んだ。確かにこれは愛ではない。愛ではないのだが他になんと言い表せばいいか、私の技量では叶わない。いままで生きていた中で一番好きな文学作品だ。

 ついでにもう一つ。同じく凪良ゆうさんの「汝、星の如く」こちらは主要人物2人の間に流れるものは紛れもなく“愛”だ。ただ、2人の間に流れるものは少しずつずれて、離れて、バランスを失っていく。どこを切り取ってもネタバレになりそうなのでうまく言えないが、とにかく美しい愛がこの中にはある、とだけ言える。
 この作品も帯の言葉を覚えている。この一言に目を奪われた。本文から引用された、主人公の想い。

 わたしは愛する男のために人生を誤りたい。 

 “誤る”の一言に何が詰まっているのか、何を“誤る”のか。罪を犯すのか?倫理に反したことをするのか?さまざまな考えが頭を巡り、1ページ目を開いた。そして、この作品の続編にあたる「星を編む」も素晴らしかった。前作の「汝、星の如く」から派生する短編がいくつか入っているのだが、特にひとつ目の「春に翔ぶ」は本当に凄かった。本来、綺麗や美しいと言った言葉を本に対して多用するのはどこか違う気もするが、それでも言いたい。綺麗だ。そして息を呑む美しさだった。前作では明かされなかった部分に少しずつ日の光がさして明るみへと出る。高まっていく。
 
 これ以上は本当にネタバレになりそうなのでこの辺でおしまいにしておく。ぜひ、読んでみてほしい。特に「汝、星の如く」と「星を編む」は2作まとめて読んでみてほしい。私が本や文章に対して感じる「美しい・綺麗」という感情が少しでもわかってもらえたら嬉しい。

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