『常世の国に矛要らず』23紋4
国常立の 世にはまだ
法を守れば 矛要らず
心意気直く 神の世は
くにとこたちの よにはまだ
のりをまもれば ほこいらず
こころいきすく かみのよは
【大意】
初代国常立の時代、人々の性質素直にして、よく法を守った故、裁きの矛も必要とされなかった。これは、民の心が真っ直ぐで穢れなく透き通っていた神世のことである。
オモタルの 民利き勝れ
もの奪ふ これに斧もて
斬り治む 利き者斬れば
世嗣ぎ無し
おもたるの たみときすぐれ
ものうばふ これにおのもて
きりおさむ ときものきれば
よつぎなし
【大意】
六代オモタル朝では、民の利き勝れが過ぎて、ずる賢い者が増えた。それがために他人のものを奪う行為が横行するようになった。この罪を糺すため、オモタルの君は斧をもって斬り治めねばならなかった。利き勝れハタレとなった者を切り治めたのであったが、人を切ったことが原因して、オモタルの君は世継ぎに恵まれることはなかった。
恐るるは 無罪人斬れば
子種絶つ げに慎めよ
おそるるは なつみときれば
よつぎなし
【大意】
一つはっきり言えることは、罪無き者を斬れば子種が絶たれるということだ。これを恐れてとくに慎むようにせよ。