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美しきホツマの世界 

ついに シワカミ ホツマ なる

群れ来たり  湖堀土を
峰に上げ   八英ばかりと
天に応え   中の地もがな
ウツロヰが  淡海攫え
三尾の土と  ひと荷ない来て
朝の間に   中峰なせば
神の名も   稜威浅間峰

むれきたり うみほりつちを
みねにあげ やふさばかりと
あにこたえ なかのわもがな
うつろヰが あわうみさらえ
みおのわと ひとにないきて
あさのまに なかみねなせば
かみのなも いずあさまみね

  皇孫ニニキネを慕う新治の民は、湖を広げるために掘った土を次々と運びハラミ山の峰に積んでいきました。その姿はあたかも、蟻の大行列の如くでありました。皇孫のために勤め励む新治の民の懸命な働きによって、ついにハラミ山に八つの湖と八英の峰が出来上がりました。
 皇孫はこれを見て嬉しく誇らしく思うのでありましたが『うかつにも中峰に土を盛るのを忘れていた。八英の峰(八皇子神)と八英の湖(天並神)だけでは、ハラミ山に神の御座が完成しないではないか。』と悔やまれるのでした。
 その天皇孫の思いに応えて顕れたのはウツロヰの神でした。是が非にも中峰をと願う君の思いを叶えんとしてウツロヰは、淡海(琵琶湖)の底を攫って三尾の土と合わせ、それらをひとまとめに荷いハラミ山にやって来ました。そして、ほんの朝の間に中峰を造り上げてしまいました。皇孫はいたくお喜びになられて、中峰に造られた神座をしてその名も稜威浅間峰といたしました。

二重カルデラ 中峰イメージ


山高く   湖深く
並びなし  峰に降る雪
池水の   末九千里の
田と成りて 及ぶ三万民
二十年に  攫えなせとて
酒折の   宮に入ります

やまたかく みづうみふかく
ならびなし みねにふるゆき
いけみつの すえこちさとの
はたとせに さらえなせとて
さかおりの みやにいります

 このようにしてハラミ山の頂きには、君ご念願の九つの神座が完成いたしました。山の裾野にはすでに八英の湖が田を潤しています。そこに民が住まえば、太占図にみる神の御坐は、ハラミ山頂を中心にしてそのまま地に反映されます。九のハラミ山、ますます高く尊くそびえ、八つ湖も深く水をたたえれば、天皇孫創りし御国に他、並ぶものなしの様相にございます。

太古八つあった湖は、現在富士五湖となりました


 稜威浅間峰、九つの頂きに降る雪は山の裾野の池水となり、その末は九千の里の田を満たします。今や浅間峰孕む水の恵みは、三万に及ぶ民の暮らしの支えとなりました。皇孫は「二十年に一度は、池、溝を攫うようにしなさい。この恵みを末々のために大切に守ってくれよ。」と言い残され、その名も高きハラミ酒折宮にお入りになられます。

預かりの   大山祇が
御饗なす  御膳捧く
葦津姫   一夜召されて
契り籠む

あづかりの おおやますみが
みあえなす みかしわささく
あしつひめ ひとよめされて
ちぎりこむ
 
 酒折宮では、宮預かりの大山祇が一行を出迎え御饗をいたしますがこの時、御膳を捧げる一人の美しい姫が皇孫の目に留まりました。かの麗しき姫君は、大山祇の次女であり葦津姫と申します。姫の息を呑むあまりの美しさに、皇孫の君は一夜召されて夢中になり、姫との後日のご結婚を固く誓われたのでした。わが国随一の器量とささやかれる木ノ花咲耶姫とは、この葦津姫のことでございます。

木華開耶媛 堂本印象 作 どうもと いんしょう 京都 昭和4年/1929年制作

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