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「新治宮建設と皇孫ニニキネのお人柄」

土竜あり    鼹鼠に似て
炎吐き     民ら恐れて
これ告げる   物主問えば
答え言ふ     加具土竜を
埴安に     万子生ませど
竜ならず    穴に憂ふる
願わくは    人なし給え

をごろあり もちうごににて
ほのほはき たみらおそれて
これつげる ものぬしとえば
こたえいふ かぐつちたつを
はにやすに よろこうませと
たつならず あなにうれふる
ねがわくは ひとなしたまえ

【現代語訳】
さて、宮が建てられるより前にこの宮場にはヲゴロという生き物が住んでおりました。姿はモチウゴ(ウゴロモチ、土竜の異称)に似ていましたが、宮場の整地のため民が入ると炎を吐いて威嚇するため、民らは恐れて報告を寄せてきました。


 大物主がヲゴロになぜ炎を吐いて威嚇するのか問うと、ヲゴロは答えて云いました。

「火の精カグツチは土の精ハニヤスに竜を生ませようして、たくさんの子をなしましたが、吾ら兄弟はどういうわけか生まれ損ねて竜になれなかったのです。そういうわけで、吾ら兄弟恥を憂いて穴の中に隠れ暮らしている次第です。願わくは皇孫の慈悲によって吾ら兄弟を人となし給え。」


物主が     申せば皇孫
詔勅      汝受けべし
天の神     八将を生みて
御竈守り    大神津実は
地に敷きて   祀る家造り
醜女為し    兄弟の生島
足島と     神名賜えば
守も為し    吾が新治の
新屋建つ   中ツ柱の
根を抱え   また四所の
守も兼ね   共に守れよ

ものぬしが もふせばみまご
みことのり なんぢうけべし
あめのかみ やまさをうみて
みかまもり おおかんつみを
ちにしきて まつるやつくり
しこめなし ゑとのいくしま
たるしまと かんなたまえば
もりもなし わがにいはりの
あらやたつ なかつはしらの
ねをかかえ またよところの
もりもかね ともにまもれよ

【現代語訳】
大物主がその旨伝え申せば、皇孫より詔勅がありました。
「天の神は八将神をお生みになられ、家々の竈を守らせました。今、落成を目前としたこの宮には、大神津実が地に敷かれ醜女の禍から家造りを守っています。これより、汝ら兄弟には生島、足島と神名を与えましょう。これからは新しい名のもと、吾が新治宮の守りとなってください。吾が新治の里には、これからたくさんの新屋が建設されます。あなたがた兄弟は、新治の里の中心たる中つ柱の根を抱え、また四所の門の守も兼ね、これらをともに守るのです。」

写真は、駒形氏指摘に拠る新治宮跡地「鴨大神皇子神主玉神社」
鴨大神御子神主玉神社(かもおおかみみこかみぬしたまじんじゃ)は、茨城県桜川市加茂部の桜川沿いに鎮座する、主玉神を祭神とする神社。常陸国新治郡の式内小社『鴨大神御子神主神社』に比定される。旧社格は郷社。

祭神
別雷神(わけいかづちのかみ)
大田々根子神(おおたたねこのかみ)
主玉神(ぬしたまのかみ)
鴨大神=ニニキネ、皇子神=サクラギ 主玉神=新治の主
新治の主二代を祀るという意味にとれます。
明治神社誌料では、大田々根子命と別雷神の二柱を祭神としている。
茨城県神社写真帳では、主祭神を鴨大神御子神主玉神、配神を大田々根子命と別雷命としている。

摂社
日枝神社 -(主祭神)大山咋命
鹿島神社 -(主祭神)武甕槌命祭神 鴨大神

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