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絶対確実な運命の一本道 ヘルメスの天秤

まるでブドウ酒がそのブドウの収穫の年の性質を受け継ぐように、あらゆるものは始まりの時間の性質を受け継ぐ

これは心理学者カール・グスタフ・ユングが残した言葉ですが、ユングはもともと占星術の研究に熱心だった人ですから、この言葉自体が「生命誕生の瞬間に人間の性格の大半が決まる」とユングが信じていたことを如実に示しています(ユングの娘の一人は占星術師になりました)。

ただ、ユングが既存の占星術師と違っていた部分は「ホロスコープが暗示するのは本人の先天的性格であり、その性格を後天的な努力で変えることができれば運命そのものを変えられる」と考えていた点にあります。
従来の占星術が「宿命論」であったのに対し、ユングは「運命は生涯不変のものではなく、努力によってある程度変更可能である」と定義したところが決定的に違うんですね。

ユングのこの思想は、アラン・レオの創始した現代占星術と融合し「心理占星学」という新しい占星術学派を生み出すことになりました。

日本で一番活躍している占星学研究家の「鏡リュウジさん」はこの学派に属している方なんですよ。

確かに「運命はすべて決まっていて変更は一切不可能です」と言われるよりも、「努力によっていくらでも改善できますよ」と言われた方が気分はいいですよね? 自分の将来に希望が持てるはずです。そんな希望に満ちた内容の占い雑誌や自己啓発本はバンバン売れるでしょう。

でも、もともとの「運命のシナリオ」を書いたのが「全知全能の神」であったとするならば、そのシナリオを自分の勝手な都合(エゴ)で書き換えようとすることに道義的な問題はないのでしょうか?

「神」と表現すると拒否反応を示す人がいるかもしれませんので、「前世の自分」とか「ハイヤーセルフ」と言い換えても構いませんが、とにかく「運命のシナリオを書いた誰か」は確実に存在しています。

そうでなければ「占星術がなぜこんなにも高確率で当たるのか?」が説明できないからですね。

たとえどんなに辛い人生であっても、そこには「何者か」が意図した「深い意味」があるはずです。その意図を無視して性格改善に取り組んだとしても、満足いくような結果が得られるとは、私には到底思えないのです。

あなたが自分の運命を自由に書き換えてしまえるとするならば、本来出会うべき人とは違う人と結婚し、結果的に「生まれるべきだった子供が生まれない」なんて悲劇も起きてしまいかねません。

それでいいんですかね?

もともとの設計図に逆らって自由意思で生きるわけですから、「最終的なゴール地点がどこなのかすらも分からなくなる」という恐れだってあるはずです。

結局、「努力によって運命は変えられる」という主張は、最終的に「自己責任論という袋小路」に陥る危険性が高いんです。

心理占星学は「あなたが不幸なのは、あなたの自己改善の努力が足りないからだ」という自己否定に結びつきやすいという根本的な矛盾を抱えているんですね。

もちろん、心理占星学に限らず、私が信奉する古典占星術であっても、数千年の歴史を持つインド占星術であっても「誕生の瞬間のデータ」は最も重要視されます。

もしあなたが占星術師のところに相談に行けば、まず最初に「正確な生年月日」と「出生時刻」と「出生場所」の3つを聞かれることになります。だから相談に行く前には必ずこれを調べて行ってくださいね。

日本人の場合「出生時刻が分からない」という人も珍しくないですが(インド人はほぼ全員、自分の出生時刻を知っているそうです)、そういう場合は「将来的に罹患する可能性の高い病気」や「正確な死亡年月日」を読み取ることはかなり難しくなりますし、結婚時期や出産時期の予測にも「大幅なズレ」が生じてしまいます。

一卵性の双子であっても職業や寿命、結婚時期や出産年齢は同じではありませんから、この「生まれ時刻の違い」は非常に重要なファクターになることは充分ご理解いただけると思います。

双子の女優「マナカナ」だって、それぞれが結婚した時期には「7年の時間差」がありました。二人の生まれ時刻は「7分差」だったそうですが、たったそれだけの時間差でも「現実の運命」はこれほど大きな影響を受けるんですね。

「生まれ時間が1分違っただけで婚期が一年ズレる」となれば、適齢期の女性にとっては大問題なはずですね(笑)。時々、「母の記憶によるとだいたい午前3時頃の生まれだったそうです」という曖昧な感じで依頼してくる方がいますが、その情報ではちょっと心もとないんです。

出生時の太陽系内の星の配置、それを平面図に書き取ったものがホロスコープですから、僅か数分の違いであっても「明らかに違う幾何学図形」として取り扱わなくてはなりません。

ホロスコープとは、指紋や遺伝子のように「あなた固有のモノ」でなければならず、自分と全く同じ設計図を持つ人がこの世にいることは許されないわけです。

そしてその「始まりの瞬間に、個人の運命の大半が決定される」というのはすべての占星術の基本的スタンスになるんですね。

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