粋声ステージ曲紹介

Trois Chansons de Charles d ’Orléans
 1862年生まれのクロード・ドビュッシーは、伝統的な和声理論にとらわれない手法で、音の色彩を追い求め、20世期の先端を行く作曲家となった。そして、バルトークやコダーイなど多くの作曲家に影響を与え、「印象派」を音楽史に刻んだ。

Ⅰ.Dieu! qu’il la fait bon regarder
 第1曲「神よ!眺めるのはよいものだ」は流れるような美しいメロディが特徴的である。作詩のドルレアンが美に憧れていたというのがにじみ出る曲だ。
Ⅱ.Quant j’ai ouy le tabourin
 第2曲「太鼓の音を聞くとき」はアルトのソロパートを他の3パートがヴォカリーズで支えるという構成となっている。
Ⅲ.Yver, vous n’estes qu’un villain;
 第3曲「冬はただの厄介者」は冒頭にアルトが冬の煩わしさを歌い、対照的にソロパートでは夏の心地よさ、穏和さを歌っている。

Quatre Motets Sur des thèmes grégoriens
 「グレゴリオ聖歌の主題による4つのモテット」の作曲者である、モーリス・デュリュフレ(Maurice Duruflé 1902-1986)は、ベルギーの都市、ルーヴィエール出身。長寿ではあったが1975年に交通事故にあい、この後遺症により作曲活動が制約され、出版作品は全部で14曲しかないという。
 「4つのモテット」は1960年に出版された。デュリュフレは、教会のオルガニストやパリ音楽院の教授を務めたが、作曲家としても宗教音楽やオルガン曲に優れた作品を残している。特に「レクイエム」は近年よく知られるところとなった。この4曲では、伝統的なグレゴリオ聖歌と、近代フランス和声の調和を感じることができる。

Ⅰ.Ubi caritas
 第1曲「神の慈しみを」は、アンダンテの無伴奏混声合唱。曲中盤から現れるソプラノが華を添えるが、一貫しているのは、グレゴリオ聖歌をモチーフとした骨太なサウンドである。高低の少ないシンプルな旋律に、どこか懐かしさを感じる。
Ⅱ.Tota pulchra es
 第2曲「愛する者よ、あなたはすべてに美しい」は、聖母マリアについて歌われる。「4つのモテット」のうちこの曲だけが女声合唱である。“Tota pulchra es ”は4世紀から伝わる作者不詳の祈りで、ヨハネス・ドゥンス・スコトゥスにより、14世紀に現在の形になった。「無原罪の聖マリアの祝日」(12月8日)の晩課において、交唱(アンティフォナ)として唱えられる。デュリュフレ以前にも、パレストリーナ、モンテヴェルディ、ラッソなどが作曲を行った。
Ⅲ.Tu es Petrus
 第3曲「あなたはペテロである」の詩は、マタイによる福音書16章18節の抜粋である。ペテロとは「岩」という意味があり、ペテロの上に教会を建てることによって、所有者であるイエスに敬意を払い、愛を持って大切にして欲しい、という意味が込められている。混声合唱で力強く歌われる。
Ⅳ.Tantum ergo
 第4曲「これほど寛大な」は、混声合唱。1236年、トマス・アクィナスによって作られた賛歌『パンジェ・リングァ』の第5節以下が独立してできた賛美歌である。14世紀以来、聖体降福式のときに礼拝賛歌として歌われていた。歌詞に寄り添うような静かな曲調が、秘跡の厳かな印象を伝えている。

Cantique de Jean Racine
 誰の心にも自然と入り込み、ふと涙がこぼれるような名曲。ガブリエル・フォーレの初期の合唱作品であり、ほかに「ラシーヌの雅歌」や「ラシーヌの頌歌」と呼ばれ、広く知られている。フランスの劇作家ジャン・ラシーヌの宗教的な詩をテキストとしており、イエス・キリストへの賛美が美しい旋律と和声によって見事に表現されている。音楽学校の卒業作品として作曲されているが、学生時代の作品とは思えないほど緻密で、短くシンプルな作品ながらも完成度はとても高い。美しく穏やかな三連符アルペジオの伴奏の中で繰り広げられる音楽の起承転結には、敬虔な信仰と、時にその切なさや思いの強さが込められているように感じられる。

2/24(月祝)、渋谷区文化総合センター大和田さくらホールでお待ちしています♪

▶︎チケットはお近くの団員またはこちらから t.livepocket.jp/e/h5nda

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