とても聴覚劣位のくせに吹奏楽部だったお話

ぼくは広汎性発達障害で自閉症スペクトラムの要素が強いです。
症状のひとつに、聴覚過敏もあります。

聴覚過敏ってなに?


聴覚過敏は大抵の人が十分我慢できる音を、苦痛を伴う異常な音として経験することだと説明されることが多いですね。原因には生理学的な要素と心理学的な要素があります。

以下に紹介する例はあくまでぼくの場合のお話で、聴覚過敏の症状をもつ全ての人に当てはまるわけではありません。

ぼくの場合は電話のコール音や救急車などのサイレン、掃除機の音、弦楽器の高い音、マフラーを壊したバイクや車の音などが特に苦手です。
このような音を聞いた時どうなるかというと、音自体に脳を刺されたり抉られたりするような鋭い痛みを感じます。また、頭痛や吐き気などの身体症状が起こったり、著しく集中力が低下したり、不安な気持ちになったりします。

そして、聴覚過敏の症状はこれだけではありません。
ぼくは音の抽出ができません。
つまり、複数の音が鳴っている中である特定の音を聞き取ることができません。
例えばBGMや店内放送が流れているスーパーやザワザワした居酒屋の中では人の声が音だけでは聞き取れません(読唇も合わせれば読み取れます)。これも聴覚過敏の症状のひとつです。

長時間このような複数の音が鳴っている環境に晒されて特定の音を聞き取ろうと努力していると、普通ではないような激しい疲労を感じたり、頭痛や吐き気などの身体症状が現れたりします。

これらの症状の対策としてぼくは日頃から耳栓とイヤーマフを使用しています。(体調不良になるまでの時間が遅らせられたり体調不良の程度が多少マシになったりするだけで、これらの対策に完璧な効果があるわけではありません。)

ほくが発達障害であり聴覚過敏の症状があると知ったのはここ一年ほどの話なので、それまでは以上のような症状が普通のことだと思っていました。

さて、こんなぼくが吹奏楽部に入ったらどうなるかというお話です。

吹奏楽部に入ってみた


まずなぜ吹奏楽部を選んだのかというと、運動が苦手なのに文化部が吹奏楽部しかなかったからです。
ぼくの中学校では基本的に部活をやることを勧められたので、消去法で吹奏楽部に入りました。
それから中学高校と吹奏楽部だったのですが、その当時は自分なりに楽しい時間を過ごしました。ところが、現在も楽器をやるのですが、気付いたことがあります。

ぼく、音楽やるときほとんど音聞いてないな…?

つまりどういうことかというと、ほとんど全面的に聴覚以外の情報(主に視覚情報)に頼って音楽をしていました。
例えばテンポ感やリズムを合わせる時は視界に入る範囲の人の指の動きを見て覚えてそれに合わせたり、音の強弱をつける時は息を吹き込む量の感覚だけでやっていて実際に強弱がついているかどうかは聞いていなかったりします。
みんなで吹くとたくさんの音が混ざっているので、他の誰がどんなふうに吹いているかなんてまるでわかりません。自分の音すら聞きとれないので、全ては息と指の感覚と視覚に頼りきりです。
今思うと「周りの音をよく聞いて!」という指示の意味が全然わかってなかったんですね。

こんな感じで音楽をやっているのに聴覚をほとんど機能させてないのですが、それでもぼくは音楽が好きです。
聴覚情報をメインに音楽を楽しんでいる人からすれば変な話なのかもしれませんが、視覚的にプレイすることを楽しむ音楽だってあっていいんじゃないかなと思います。
そんなわけで、ぼくがやる音楽はとことん自分に向けて一方通行です。
自分の身体を使ってプレイすること自体に興味があって自分が楽しい。スポーツをプレイして楽しむ感覚に近いんじゃないかなと思います。
人に聴かせるためのものじゃないから傍からみたらクオリティーなんか全然だめなのかもしれないけれど、それでもいいんじゃないかなと思って楽しんでいます。
今は大人数の中で音楽をやる機会がほとんどありませんが、ひとりでやる音楽もみんなとやる音楽も好きです。
どちらにせよ結局自分に向けて一方通行な楽しみ方であることに変わりはないのですが、音楽を社会参加(やコミュニケーション)のためのツールとして使うこともぼくにとっては大切なことです。
(このあたりのお話はスキーマ療法の中核的感情欲求の話が関わってくるのでまた別のnoteで。)

今日はこのあたりで終わりにします。
最後までお付き合いくださりありがとうございました。

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