ピアスを開ける。

外国で、ピアスを開ける。

なんだか特別な感じがした。

初めてピアスを開けたのは、高校生の時。
片耳だけのピアスに憧れて、病院で一つだけ開けた。
でもおじいさん先生に勧められて開けたピアスの場所は異常に低く、
ちぎれてしまいそうで怖くて半年くらいで塞いでしまった。

その後友達と両耳に一つずつ開けに行ったのが1年後くらい。
二人で体育の時は耳を隠すように二つ結びをして、
ファーストピアスを1ヶ月、外さないように守りぬいた。

その後大学で一つ開けて、卒業直前にもう一つ開けたけどそれはすぐ塞がってしまって、
就職してからはピアスは小さい一粒石で、両耳一つずつ、というルールがあって。
めんどくさくてそれさえもつけず、休みの日ごくたまにつける程度になっていた。

さらに社会人になってすぐできた彼氏は、ピアスが嫌いだった。
「痛そうだから見たくない。」
そしてどんどんピアスをつける機会は無くなっていった。

私にとってピアスは願いで、鎧だったのだと思う。

ピアスなんて、開いてなさそう。
そう言われるからこそ、開けたかった。
いつだって外からの決めつけに逆らっていたかった。
開けたら運命が変わる、という迷信も信じていた。
だから特別な日に開けたり、必要以上に意味を持たせたがった。

でもそういう思いは自分自身にも重くのしかかっていて、
ピアスをつけるときはいつも、人にどう見えるかを気にしていた。

仕事を休んで、海外でひとりになって、
今までの自分を知る人は誰もいない中で、
ただ自分のためだけにピアスをつけて、メイクをする。
それがとても楽しかった。


開いていた三つのピアス穴。
何だかそのバランスが悪いことに今更気づいて、
間を埋めるようにふたつ、穴を増やした。

ホテル近くののピアススタジオを予約して、
ドキドキして向かうと、ピアスだらけでタトゥーのたくさん入ったお姉さんがいた。
お姉さんと言っても、私より年下かもしれない。

お姉さんは優しく私の開けたい場所を聞いてくれて、
拙い英語を聞き取って、ベストな位置を探ってくれた。

「大きく息を吸って。」
私が吸った瞬間に、針で穴を開けた。

「はい、息を吐いて。」
とてもスムーズに、穴にピアスを通して、

「とってもプリティーよ。」
そう言って鏡を見せてくれた。
バランスよく耳についたピアスは、ただただ可愛かった。

何から身を守るためでもなく、
自分のために開けたピアス。

今回開けた分だけじゃなく、全部のピアスが、
私にとってもう意味がないものになった気がした。

深い意味なんて必要ない。

つけたいからつける。それでいい。


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