静寂と


梅雨に入って我が家は除湿機がずっと稼働しています。半地下の小部屋は除湿機や炊事の熱で室温が上がり、あまり好きではないけどエアコンのドライをかけて調節して、なんか寒くなったな…と消して、たまに除湿機を止めてまたベタベタしだしてなんだよよくわかんないなと思いながら一日が終わります。


きっかけはわからないのだけど、ある夜に坂本龍一さんのピアノのプレイリストを部屋で流してからやけにしっくりきて彼の作品を辿っています。今は闘病中にスケッチのように残したという「12」というアルバムを聴きながら「ぼくはあと何回、満月を見るだろう」を読んでいる。音楽はとても静かで、本の中には耳慣れない言葉がたくさん出てくるのでわたしのような人間にはすこし難しい。ただほんの何年か前まで海の向こうにまで赴きピアノを弾いていたこの人はもうこの世にはいなくて、私が今いる喫茶店の中ではマダムが世間話が花を咲かせ、隣の席ではベビーカーの乳幼児が泣いている。


生と死はいつも折り重なって世界を営むということは毎秒のように起きていることにも関わらず、意外と実感することは少ないように思う。
わたしの時はどんなんなんだろうと
ぼんやりと、考える。


ちなみにアルバムの収録曲のタイトルは2021310ではじまり20220304で終わります。
たくさんの人の人生や作品に音楽を添え続けた坂本龍一の最後の一枚が、まるで自分の最期の場面に添えるサウンドトラックのようで、あまりにもドラマティックでかっこよすぎじゃん…と思いながら、そんなところに惚れ惚れとしてしまうのでした。


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