【「藝人春秋」書評】藝人春秋を読んで BY清水ミチコ
『GOETHE』2013年4月号より
同じ脳みそでも、男性と女性では、大きな個性の違いがあるものらしい。
女性は同時に二つの事ができるのが特徴で、感情と思考が両立できるのですが、男性は一つの事をまっすぐ深く掘り下げて行く傾向が強くあるのだとか。
なるほど、オタクとか収集家なんかに女性が少ないのも、うなずける話です。
私の長年の友達でもある、水道橋博士の著書『藝人春秋』を読んだとき、そんな事を思い出しながら、再確認しました。
そして、本当に男というものは、男が好きなのだ。
たとえどんなにその男が女好きだったとしても、それとは別の回路に、もっと深く男を好きになれる底知れぬ沼があるみたいなのです。
それにしても博士の話の聞き方の上手さ、その興味の深さ、書き方のクレバーさ、シャレの楽しさ、それぞれが手を取り合って、見事に面白い一冊となっています。
と同時に、書いている彼の脳波から出るドーパミンのようなものが、こちらにまで伝わってくるのです。
ここがめずらしかった。
人の事を書いてるんだけど、自分の何かを吐露してるような。
ちっとも知らなかったこともたくさんありました。
甲本ヒロトさんは、談志さんの大ファンであったとか、笑わずにはいられない、三又又三さんのその神経の太さとか。
やっぱり、面白くて濃い人が多いなあ、なんて思って読み進むと、博士に対して、さりげなくなぐさめる、ある日の石倉三郎さんの言葉が待ってたりするのです。
「辛抱ってのは辛さを抱きしめるってことだからな。
今はひとりで抱きしめろよ!」
この男気に、ふとこっちの胸までつかまれてしまいそうに。
そう、これはとてもとても濃厚な一冊。
きっと書き上げたときは嬉しかっただろうなあ。
こういう本の女性版があったら、と想像してみると、なんとなく嘘っぽいというか、安っぽいカンジがするのは何故なんですかね……。
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『藝人春秋①』文庫版
(ボーナストラック)
・『2013年の有吉弘行』
(文庫解説)
・オードリー・若林正恭
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(変装免許証ブロマイドor缶バッチor江口寿史シール)
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