見出し画像

【重要】Single session debriefing after psycological trauma: a meta-analysis

概要

 トラウマ的な出来事に対する臨床的介入としてシングルセッションのデブリーフィングが用いられている。本研究は、シングルセッションのデブリーフィングがPTSDの慢性的な症状及びトラウマによる他の疾患を予防するか検討するものであった。
 トラウマ後1か月以内にシングルセッションのデブリーフィングが行われ、介入前後に妥当性のある臨床指標により評価された効果量を算出している研究を対象とした。
 その結果、CISD以外の介入及び非介入群ではPTSDの症状が減少したが (weighted mean effect size = 0.65 [95%CI = 0.14-1.16], 0.47 [0.28-0.66]) 、CISDは改善しなかった (0.13 [-0.29-0.55])。また、CISDはほかのトラウマ関連障害を改善しなかった (0.12[-0.22-0.47])。
 95%CIから、シングルセッションのCISD及びCISD以外の介入では、トラウマに関連する症状の自然経過を超える治癒効果を示せなかった

詳細

問題と目的

  • 心理学的なデブリーフィングはPTSDケアの基本とされてきた

  • 手法は、クライシスインタベンションまたはグループサイコロジカルデブリーフィングと呼ばれた

  • デブリーフィング (CISD)は大きく、Mitchell model、Raphael model、process debriefingの3種類に分類される

  • CISDは基本的にトラウマイベントの1週間以内に、対象者に対して7ステップ1-3時間のシングルセッションの介入がなされる

  • CISDは包括的なCISMに統合されている

  • 先行研究ではシングルセッション・デブリーフィングの効果の見解が分かれていた

  • メタアナリシスでも集団と個人を分けて集団のみを対象としている、トラウマイベントから6-9か月後の介入も含めており予防効果の検証といえない問題があった

  • そこで本研究では、個人・集団を含め、トラウマイベントから1か月以内になされたシングルセッション・デブリーフィングの効果をメタ分析で検証した

方法

  • キーワードは"posttraumatic", "stress", "debriefing", "prevention", "intervention"

  • Journal of Traumatic Stressを手動で調査

  • 包含基準:トラウマイベントから一か月以内にシングルセッション・デブリーフィングが行われている、ゴールドスタンダードの臨床指標による評価、一項目以上でプレポスト法による評価がなされている

  • 介入の倫理的問題から無作為割り付けではない研究を含めた

  • グループは、CISD, non-CISD, Contnrolの3群に分けた

  • mean weighted effect size

  • 95%CI

  • 各研究の効果量はcohen's dを使用

  • 臨床指標はフォローアップの最後の値を使用

結果

  • 概要に示した通り、CISD以外の介入及び非介入群ではPTSDの症状が減少したが (weighted mean effect size = 0.65 [95%CI = 0.14-1.16], 0.47 [0.28-0.66])CISDは改善しなかった (0.13 [-0.29-0.55])。また、CISDはほかのトラウマ関連障害を改善しなかった (0.12[-0.22-0.47])。 95%CIから、シングルセッションのCISD及びCISD以外の介入では、トラウマに関連する症状の自然経過を超える治癒効果を示せなかった。

考察

  • 効果が出なかった理由は、例えば覚醒させる、自然経過となる親密な他者とのかかわりを阻害するなど挙げられるが

  • そもそもハイリスク者とそれ以外の参加者をまとめてデブリーフィングしている方法そのものに問題がある可能性あり

なお、効果量r≧.20を効果ありの基準とすれば、ライフイベントがある、ソーシャルサポートがない、トラウマ症状が強いものが慢性的なPTSDのハイリスク要因となる

文献

  1. Brewin, C. R., Andrews, B. and Vaentine, J. D. (2000). Meta-analysis of risk factors for posttraumatic stress disorder in trauma-exposed adults. Jounrnal of Consulting and Clinical Psychology, 68, 748-766.

  2. Dyregrov, A. (1989). Caring for helpers in disaster situations: psychological debriefing. Disaster Management, 2, 25-30.

  3. Mitchel, J. T. (1983). When disaster strikes. the critical incident stress debriefing. Journal of Eemergency Medical Service, 8, 39-59.

  4. Raphael, B. (1986). When disaster strikes: a handbook for caring professions. London: Hutchinson.

  5. Van Emmerik, A. A., Kamphuis, J. H., Hulsbosch, A. M., & Emmelkamp, P. M. (2002). Single session debriefing after psychological trauma: A meta-analysis. The Lancet, 360(9335), 766-771.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?