Coworker exchange, leader-menber exchange, and work attitudes
概要
問題と目的
LMX理論では、リーダーとのよい交換がなされているとメンバーからの相互性の感覚が強まり、恩義を感じたメンバーによりチームに望ましい結果がもたらされると考える
Average Leadership と比較してLMXは個別に異なる関係性が形成されるため、チーム内での関係性が重要になる
LMXは従業員同士のexchangeにも影響すると考えられるが実証研究はなされてこなかった
チーム内の関係性について言えば、従業員同士のexchangeは仕事への態度やメンバーのパフォーマンスに影響を及ぼす可能性があり、具体的には相互的で親密な関係性はお互いを励まし支えあうことでグループの凝集性・満足度が高まる可能性がある
そこで本研究では、LMXがCWXに及ぼす影響およびLMXとCWXが従業員の仕事態度に及ぼす影響を明らかにする
理論と仮説
①LMXとCMX
ある観察研究では、あるグループは相互の信頼に基づく深いexchangeがなされたが、あるグループはリーダーが管理者としてふるまうためexchangeは相互性ではなくトップダウンで行われ課題ベースの関係性であった
そしてLMXの質は部下の関係性形成に影響を及ぼし、メンバー間での関係性の質に反映されるとする
(LMX理論に基づく研究は、タスクに焦点づける関係性を職場における好ましくない関係として言及することが多い)
②交換プロセスexchange process
理論的に正しいかはわからないが、LMXのタイプとそれに付随するメンバー間のexchangeが3タイプに区分されている
(要するにLMXの質がメンバー間の関係に影響を与えることを示してたたき台的な分類を示した論文があるということ)
③ネットワーク構造Network structure
Structural holeは競争的な雰囲気となる構造だが、直接関係を持たないBとCはAを媒介して関係を持つ
Simmelian tieは友好的・協力的な関係を形成する構造である
個別の強い関係性と比較して集団的規範に基づく関係性にはなるが協調的で信頼のある関係となる
LMXとネットワークの構造はダイナミックで相互的な関係にあると考えられる
④三角関係Triad Relationship
Heider (1958) のバランス理論で説明される
リーダーと部下の関係でHeider (1958) のバランス理論がみられることが示されている (Sherony & Green, 2002)
⑤LMXと仕事態度Working Attitude
スーパーバイザーのLMXが部下の仕事への意欲や満足度に影響を及ぼすことは知られており、リーダーは部下の能力やパフォーマンスに基づいて異なる関係性を形成している
しかしリーダーの高いLMXは部下のパフォーマンスと関連が認められない (Duarte et al 1994)
上司による高いLMXは部下への過度な判断に基づいており (Cecchio & Gbodel, 1984) 客観的なパフォーマンスとは関係がない (Wayne & Ferris, 1990)
したがって従業員がLMXの差をどのように感じているかが重要になる
⑥CWXと仕事態度Working Attitude
組織の多様性に関する研究は、多様性があるほど問題解決の機会が増える半面、統一性がなくなり構成員の不満が強まることを示している
観察可能な多様性 (人種、民族、年齢、性別) の多様性は仕事満足度や組織コミットメントに負の影響を及ぼし、類似した属性を持つグループでは構成員の関係性への関心が増加することも知られている
本研究ではネットワークの多様性を検討する
ネットワークの多様性とはグループ構成員がお互いに親和性を認める程度として定義される (Higgins & Kram, 2001)
先行研究によればチームメンバーの関係の良さはチームへの関与や仕事に正の影響を及ぼすことが示されている
⑦多様性の交互作用とCWXの質Diversity Interaction and CWX Quality
方法
対象者
Semarangの看護師
146dyadsを分析対象とした
メジャー
LMX7
CWX7:LMXに準ずる。ただし一つのアイテムはLMXに関連するため削除した6項目
Job Satisfaction
Organizational Commitment
CWX Diversity:
CWX Quality:
Attribution: 年齢、性別、就業年数、スーパーバイザーとの関係歴
分析方法
仮説1:Rwg(within-group interrater reliability)of LMXとCWXスコアの相関
仮説2:LMXと組織コミットメント及び仕事満足度の関連を回帰分析で検討
仮説3:CWXバリアンスと組織コミットメント及び仕事満足度の関連を回帰分析で検討
仮説4:CWXバリアンスとCWXスコアの交互作用を含む回帰分析により組織コミットメントと仕事満足度に及ぼす影響を検討
結果
LMX及びCWXの級内相関中央値
(尚、Rwgは以下の式により求められる (James, Demaree & Wolf, 1984) )
(LMX-7/CWX-7 (本研究の場合はCWX-6になる) についてペア間で級内相関を求めてその中央値を評価する手続きをとっている)
.07以上は強い相関と判断されるところ、LMXの級内相関中央値は0.980、CWXの級内相関中央値は0.989
zero-order correlation
組織コミットメントと仕事の満足度は上司とのエクスチェンジによる正の影響を受け、従業員間のエクスチェンジの影響を受けない
また、組織コミットメントは従業員間のエクスチェンジの多様性 (分散)) により抑制される
回帰分析
最初にLMXのRwgを算出
LMXのRwgのCWXに及ぼす影響を回帰分析で検討
統制変数の投入後にLMXのRwgを投入して傾き及び分散増分を検討
その結果、LMXのRwgは19.8%から33.7%に増加した
したがって、LMXのRwgが高いほどCWXが高い
LMXの質は組織コミットメントに影響しなかった
しかしLMXの質は仕事満足度を高めた (R2=0.297)
CWX Diversityは組織コミットメントを抑制したが、仕事満足度を抑制しなかった (R2=0.191/0.329)
CWX Diversityは組織コミットメントを抑制するが、CWX Quality とDiversityの交互作用はない
CWX Diversityは職場満足度を抑制する傾向があるが、CWXDiversityと質は相互作用しない
文献
Heider, F. (1958). The psychology of interpersonal relations. New York: John Wiley & Sons Inc
Higgins, M. C., & Kram, K. E. (2001). Reconceptualizing Mentoring at Work: A Developmental Network Perspective. The Academy of Management Review, 26(2), 264–288. https://doi.org/10.2307/259122
James, L. R., Demaree, R. G., & Wolf, G. (1984). Estimating within-group interrater reliability with and without response bias. Journal of applied psychology, 69(1), 85.
Sherony, K. M., & Green, S. G. (2002). Coworker exchange: relationships between coworkers, leader-member exchange, and work attitudes. Journal of applied psychology, 87(3), 542.
Wilkaningrum, T. (2007). Coworker exchange, leader-member exchange, and work atitudes: a study of coworker dyads. International Journal of Business, 9, 187-215.
所感
もちろん、リーダーとの関係が似た従業員がよい従業員間のexchangeをおこなうのも面白いし
LMXが従業員の満足度と組織コミットメントを高める結果も面白いのだが
従業員同士の関係性の質は組織コミットメントと満足度に関係せず
それよりも従業員間での関係性の差が満足度や組織コミットメントに影響することのほうが面白い
本来なら、LMX Diversity がCWX diversityを通じて満足度や組織コミットメントに及ぼす影響を明らかにできれば、LMXを統制することで従業員満足度を高められるか明らかにできたのだが、、
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?