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日本政策金融公庫 (うつ病・自殺) 事件

概要

 金融公庫職員がうつ病により自殺し、労働基準監督署長より労働災害として配偶者らに遺族補償年金等の支給を決定したが、金融公庫への長時間労働に対する安全配慮義務違反または不法行為に基づく損害賠償請求は棄却された。
 当該職員はA支店で勤務していたが自殺の3か月前よりB支店での勤務となった。当該職員は生活リズムとして早出出勤をしており、勤怠管理の緩やかなA支店における労働時間は、自殺の8か月前より109時間、49時間、37時間、99時間、64時間であり、勤怠管理の厳しいB支店では0時間、31時間、24時間であった。当該職員はB支店に配属されたのを機に、週末婚をしていた配偶者と同居を始めていた。
 以上の経過から、早出勤務を含めた100時間超の時間外労働時間は朝食の摂取や仕事の準備にかかるものと認められ、差し引くと長時間労働があったとは認められない。さらに、B支店に配属されて2か月目も業務への前向きな意思を示していたことから、長時間労働によるうつ病の発症は否定された。
 一方で、当該時期に配偶者との同居等の生活変化が一定程度の心理的負荷をもたらしており、業務とうつ病発祥の因果関係は否定されるとともに、金融公庫が健康がそこなわれることを具体的に予見するのは困難であるとして安全配慮義務違反も否定された。

注意点

 時間外勤務の命令がなくても早出出勤を黙認している職場では、始業時刻前の在社時間を含めて労働時間と評価されて長時間労働を認められる恐れがある。したがって、時間外労働の削減に努め、時間外命令がない場合の在社を禁ずるなどの労務時間管理の厳格化を図る必要があるものと考えられる。

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