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Self-compassion, stress, and coping in the context of chronic illness


Abstract

近年のレビューではセルフコンパッションが不適応なコーピングより適応的なコーピングを促進すると示唆されている。慢性的なストレス状況でセルフコンパッションがストレス及びコーピングに及ぼす影響を明らかにするため、主として女性からなる2つの慢性疾患群 (炎症性腸疾患, N = 155; 関節炎, N = 164) を対象に、コーピングとその効力感を媒介してセルフコンパッションがストレス低下に影響を及ぼすモデルの妥当性を検討した。
パス解析の結果、両群で適応的なコーピングスタイル (積極的、肯定的な認知再構成、受容) には有意な間接効果が認められ、不適応なコーピングスタイル (行動的離脱、自己避難) には負の影響が明らかになった。セルフコンパッションの高い人たちは、適応的及び不適応なコーピング方略の相対的なバランスにより慢性的なストレス状況下におけるコーピングの結果を予測することが示された

Introduction

  • セルフコンパッションは、失敗や困難に直面した場面で、親切に受け入れる姿勢で自分自身と関わる肯定的な自己感として定義される (Neff, 2003b)

  • セルフコンパッションはストレス知覚の低下 (Neely et al., 2009; Sirois, 2014)、慢性疾患を含むストレスフルな状況におけるレジリエンスの向上 (Brion et al., 2014; Neff et al., 2007) に寄与している

  • 本研究では慢性的なストレスにおけるセルフコンパッションの役割を検討する

セルフコンパッション、コーピング、ストレス

  • ストレスが炎症に影響する可能性から、セルフコンパッションに関連するコーピングは炎症性腸疾患や関節炎の患者が感じるストレスに異なる影響を及ぼしうる

  • 炎症性腸疾患では、計画や道具的支援の探求など問題に焦点を当てた積極的なコーピングはよい心理学的な結果と関連するが (Graff et al., 2009)、受動的なコーピングはより悪い結果となる (Jones et al., 2006)

  • 関節炎患者では、コーピングにより生活満足度や心理学的苦痛及び抑うつの軽減と関連する (Treharne et al., 2007; Vriezekolk et al., 2011)

  • 逃避は、炎症性腸疾患患者の精神的苦痛 (Jones et al., 2006)、無力感及び受容の低下 (Voth & Sirosis, 2009)、関節炎患者における心理学的苦痛 (Ramjeet et al., 2008; Vriezekolk et al., 2011) などネガティブな結果と関連する

  • 肯定的な再評価の根拠は限定的

  • 楽観的な信念は関節炎患者のよい適応と関連 (Fournier et al., 2002)

  • 受容は炎症性腸疾患 (Voth & Sirosis, 2009)、関節炎 (Pinto-Gouveia et al., 2013) の双方のよい適応を予測する

  • 自己批判は、慢性疾患及び慢性的なストレス下にあるもののコーピングに重要な影響を及ぼしている可能性あり

  • 慢性的な耳鳴りへの適応不良と自己批判が関連しており (Sirosis et al., 2006)、炎症性腸疾患患者の心理学的な健康状態の悪さとも関係している (Voth & Sirossis, 2009)

  • 一方、コーピング効力感とは、ストレス要因にどれだけ上手に対応しているかの評価 (Gignac et al., 2000)

  • 炎症性腸疾患患者では、否認及び行動的離脱のコーピングによりコーピング効力感が低下 (Voth & Sirosis, 2009)

  • セルフコンパッションとコーピングの関連は、慢性疾患を持つセルフコンパッションの高い人が様々なコーピングを使用すると予想される

The Present Study

  • 本研究の目的は、炎症性腸疾患及び関節炎患者におけるセルフコンパッション、コーピング、ストレスの関連を調査し、理論と研究を拡張すること

  • 仮説は、健常群と同様、セルフコンパッションが効果的なコーピングの使用とストレス低下に関係するとした

  • また、Allen & Leary (2010) に従い、セルフコンパッションは適応的なコーピングと正の関連、不適応なコーピングと負の関連があると仮説を立てた

  • 両群に対して、セルフコンパッション、コーピング及びストレス軽減のモデルを適用し、適応的なコーピングと不適応なコーピングのバランスがストレス低下に影響を及ぼすものと仮定した


Method

Participants and Procedure

Demographic characteristics of each illness sample
  • 関節炎患者と炎症性腸疾患患者の6か月間の追跡調査

  • *炎症性腸疾患は、自己免疫疾患で慢性的な下痢や血便、腹痛などの症状を伴うものである。主に潰瘍性大腸炎とクローン病の2種類があり、比較的若年者に発症しやすい特徴がある

  • 関節炎患者170名、炎症性腸疾患患者155名の合計325名が追跡調査を完了

  • 第一回参加者のうち、関節炎患者の39.8%、炎症性腸疾患患者の36.2%が第2回も回答

  • 主に白人女性が対象となっている

  • 関節炎の内訳は、関節リウマチ (42.9%)、変形性関節症 (27.6%)、線維筋痛症 (7.1%)、強直性脊椎炎 (5.9%)、乾癬性関節炎 (4.1%)

  • 炎症性大腸炎の内訳は、クローン病 (50.6%)、潰瘍性大腸炎 (42.9%)、原因不明の大腸炎 (6.5%)

Measures

属性、罹病機関、コーピング効力感、コーピング、一般的なストレス知覚、セルフコンパッションに回答

①Self-Compassion (Neff, 2003a)

②Disease-Related variables
診断を受けてからの期間、病気が日常生活に及ぼす影響の強さを「ご病気は日常生活にどれぐらい影響していますか」という質問に対する1 (全くない) から4 (非常に) までの4件法で評価

③コーピング方略 (The Brief COPE: Carver, 1997)
Appendix-A参照
30項目
機能的・非機能的コーピングが使用される頻度
1(普段は全く使わない) - 4(いつもよく使う) で評価
下位尺度の中から、セルフコンパッションと関係がある項目を、適応的コーピング (道具的サポートの探求、積極的なコーピング、計画、肯定的再解釈、受容)、非適応的なコーピング (否認、行動的非関与、自己批判) を使用

③コーピング効力感 (Gignac et al., 2000)
Appendix-B参照

④ストレス知覚 (Cohen & Williamson, 1988)
Appendix-C参照
10-item

Statistical Analysis

  • 群間差はt検定を使用した

  • 相関分析では、各変数の相関を検定した

  • 多変量解析では、上記モデルの妥当性を検証した

  • モデル推定は完全情報最大尤度手続きを採用、標準化した推定値を記載

  • 適合性はCFI, RMSEA, SRMRを使用

  • 関節効果は1000の際サンプルと95%バイアス補正信頼区間によるブートストラップ法でテスト

  • モデルの複数サンプルにわたる一貫性は、対応する予測パスがサンプル間で均等に設定される制約付きモデルと、制約なしのモデル間で適合度指標の変化を検討し、適合度指標に有意差がなければすべてのパスが群間で等しい仮説を裏付けるものを判断する (Kline, 2023)


Results

Descriptive Information

各変数の平均値に群間差なし
年齢だけ群間さがあり、関節炎の患者が炎症性大腸炎患者よりも高齢だったため、以降の解析では年齢を共変量とした

Path Analysis

  • 図1のモデルは支持されなかった (x2(10) = 68.35, p<.001; CFI = .95; RMSEA = .14, p<.001; SRMR  .03)

  • 修正指標はセルフコンパッションからストレス知覚への直接のパスを追加するとモデルの適合性が大幅に向上することを示唆したため再解析すると適合した (x2 (9) =12.30, p = .20; CFI = 1.00; RMSEA = .03, p = .68; SRMR = .01)。

  • 図2のモデルはストレスの分散の43%を説明した

  • セルフコンパッションは、道具的対処、能動的対処、計画、肯定的な再解釈、受容と正の相関

  • セルフコンパッションは、否認、行動的離脱、自己批判と負の相関

  • 病気のサブタイプ比較では、線維筋痛症はコーピング効力感が低いが、潰瘍性大腸炎とクローン病はコーピング効力感が高い

  • 強直性脊椎園の患者は他の患者よりも計画をあまり使用しない

  • 線維筋痛症の患者は肯定的な再解釈をする頻度が高く、潰瘍性大腸炎の患者は他のサンプルと比較して行動的離脱を用いる傾向が低い

  • セルフコンパッションはダイレクトにストレス知覚を抑制

  • 能動的コーピングとコーピング効力感 (b=-.030, 95%CI = -.06,-.005)、肯定的な再解釈とコーピング効力感 (b=-.03, 95%CI=-.06,-.01)、受容とコーピング効力感 (b=-.02, 95%CI = -.04,-.006)、行動的離脱とコーピング効力感 (b=-.038, 95%CI=-.07,-.018)、自己批判とコーピング効力感 (b=-.048, 95%CI=-.084,-.025) を介してストレスを抑制していた

  • *これは、適応的コーピングを促し、不適応コーピングを抑制することでストレス知覚を抑制することを示している

  • サンプル間でこのモデルは一致していた


Discussion

OK

Reference

  1. Brion, J. M., Leary, M. R., & Drabkin, A. S. (2014). Self-compassion and reactions to serious illness: The case of HIV. Journal of health psychology, 19(2), 218-229.

  2. Carver, C. S. (1997). You want to measure coping but your protocol’too long: Consider the brief cope. International journal of behavioral medicine, 4(1), 92-100.

  3. Cohen, S., Kamarck, T., Mermelstein, R. (1983). A global measure of perceived stress. Journal of Health and Social Behavior, 24, 385-396

  4. Cohen, S., & Williamson, G. (1988). Perceived stress in a probability sample of the United States. In S. Spacapan & S. Oskamp (Eds.), The social psychology of health: Claremont Symposium on applied social psychology. Newbury Park, CA: Sage.

  5. Gignac, M. A. M., Cott, C., & Badley, E. M. (2000). Adaptation to chronic illness and disability and its relationship to perceptions of independence and dependence. Journals of Gerontology Series B: Psychological Sciences and Social Sciences, 55(6), 362-372.

  6. Graff, L. A., Walker, J. R., Clara, I., Lix, L., Miller, N., Rogala, L., ... & Bernstein, C. N. (2009). Stress coping, distress, and health perceptions in inflammatory bowel disease and community controls. Official journal of the American College of Gastroenterology| ACG, 104(12), 2959-2969.

  7. Jones, M. P., Wessinger, S., & Crowell, M. D. (2006). Coping strategies and interpersonal support in patients with irritable bowel syndrome and inflammatory bowel disease. Clinical Gastroenterology and Hepatology, 4(4), 474-481

  8. Kline, R. B. (2023). Principles and practice of structural equation modeling. Guilford publications..

  9. Neff, K. (2003). Self-compassion: An alternative conceptualization of a healthy attitude toward oneself. Self and identity, 2(2), 85-101.

  10. Neff, K. D. (2003a). Development and validation of a scale to measure self-compassion. Self and Identity, 2, 223-250.

  11. Neff, K. D., Kirkpatrick, K. L., & Rude, S. S. (2007). Self-compassion and adaptive psychological functioning. Journal of research in personality, 41(1), 139-154.

  12. Sirois, F. M. (2014). Procrastination and stress: Exploring the role of self-compassion. Self and Identity, 13(2), 128-145.

  13. Sirois, F.M., Molnar, D.S. and Hirsch, J.K. (2015) Self-compassion, stress, and coping in the context of chronic Illness. Self and Identity, 14 (3). 334 - 347.

  14. Treharne, G. J., Lyons, A. C., Booth, D. A., & Kitas, G. D. (2007). Psychological well‐being across 1 year with rheumatoid arthritis: Coping resources as buffers of perceived stress. British journal of health psychology, 12(3), 323-345.

  15. Vriezekolk, J. E., van Lankveld, W. G., Geenen, R., & van den Ende, C. H. (2011). Longitudinal association between coping and psychological distress in rheumatoid arthritis: A systematic review. Annals of the Rheumatic Diseases, 70(7), 1243-1250.

Appendix-A

Brief COPE (Carver, 1997)


Appendix-B

Coping Efficacy (Gignac et al., 2000)

5-point Likert scale
(1) strongly agree to (5) strongly disagree

I am successfully coping with the symptoms of my arthritis/IBD
I am successfully coping with the pain of my condition
I am successfully coping with the day-to-day problems that living with my condition creates
I am successfully coping with the emotional aspects of my condition


Appendix-C

Cohen et al. (1983)

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