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「あなたのために伸ばした髪」をまだ切る決心がつかない

昨日読んだ本に、こんなことが書いてあった。

そういう相手が、いきなり亡くなってしまった。それが今でも受け入れられないし、よくある言い方ですけど、「心の整理がつかない」んです。
ぼくのなかでは亡くなっていない。ものすごく長い出張に出ている、と今でも思っています。

この気持ち、本当によくわかる。

ふと見上げた空に飛行機の姿を見つけると、「彼は海外出張に行っていて、今は会えないだけ」だと思ってしまう。

私の中で彼は死んでいない。

今も生きている。



私は、彼に「髪を伸ばさないの?長い方が好きだって、前から言っているのに。」とよく言われていた。

肩までは頑張って伸ばすものの、髪を切りたい衝動を抑えられなくなり、ショートボブまで切ってしまう。

すると彼は、「どうして切っちゃったの?」「俺が何を言ったって、無駄なんだな」とガッカリする。

ずーっと、その繰り返しだった。


でも、2020年の春に髪を切った後、今度こそバストトップまで髪を伸ばそうと心に誓った。

コロナ禍で彼に会えない時間が、なんとなくそう思わせたのかもしれない。


彼と最期に会った、2021年2月。

私は肩まで伸びた髪を1つに結んでいた。

彼のために髪を伸ばしていることを、彼に伝えようとした。

けれど、直前で思い直した。

また、私の悪い癖で髪を切ってしまうかもしれない。

そしたら、また彼をガッカリさせてしまう…

次に会った時に、伝えよう。


あの日、彼に伝えておけば良かった。

彼は、とても喜んでくれたはず。


私は、彼がこの世にいないことを忘れがちだけど、やっぱり彼はもういないんだよな…

もう、伝えることはできないんだよな…


今、私の髪の長さはバストトップを超えた。

髪を切りたくなる日もあるけれど、切る決心がつかずにいる。


彼の死を認めた時、私は髪を切ることができるのだろうか。

それとも、髪を切ることで、ようやく私は彼の死を認めることができるのだろうか。

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