もう二度と彼にLINEを送ることができないなんて・・・
大切な人が亡くなった後。
故人宛にLINEやメールでメッセージを送り続けている人は多いのではないだろうか。
少なくとも、自分はそうだった。
送信内容は、日々のたわいのない出来事。
月が綺麗なこと。美味しいご飯が作れたこと。面白い小説を読んだこと。
そして、たまに・・・あなたに会えなくて寂しいこと。
それは決して開封されないし、既読マークがつくこともなければ、返信が届くこともない。
一方通行だけど、まだ大切な人と繋がっていることを感じられる唯一の行為。
LINEもGoogleアカウントも、いずれ消えることはわかっていた。
しかし、それはまだ何年も先のことだと思っていた。
先にアカウントが削除されたのは、LINEだった。
友達の欄から、彼の名前が消えた。
検索バーに名前を入力してみると、【メンバーがいません】と表示されたトークが1つ。
トーク画面を開くと、【●●●●が退室しました】の文字。
送信メッセージ入力欄には【トーク相手がいません。】と表示され、メッセージを入力することすら出来なくなった。
過去のメッセージは残っていて、読み返すことはできる。
けれど、もう二度とメッセージを送ることはできない。
覚悟していたことだけど、とてもショックだった。
彼には・・・彼にだけは、本当に何でも話すことができたから。
間も無く、Googleのアカウントも削除されてしまうのだろう。
たまに彼宛にメールを送って、「Googleさん、まだ使われているアドレスですよ!このアカウントは消さない方がいいと思いますよ!」と悪足掻きしてみたりするけど。
彼と共有していた写真フォルダは、いずれ私だけの名前しか表示されなくなり、彼がアップロードしてくれた写真は消える。
メールも宛先エラーで送れなくなってしまう。
彼と私の繋がりが1つずつ。
彼が生きていた痕跡が1つずつ、消えていく。
ささやかな心の拠り所が、消えていく。