翆-sui-

お話だったり、 心に感じたことだったりをつらつらと

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最近の記事

お金と感謝の気持ち

もともと人助けをするのは好きな方で、子供の頃に皆1度は言われる「困っている人がいたら助けてあげましょう」という言葉を素直に受け入れて実行してきた。 でも人に感謝されるのは何だか気恥ずかしいし、私の手助けを日常的に期待されるのは嫌だったので、見ず知らずの人に対してだけ、積極的に行っていた。 例えば電車で席を譲ってあげるとか 募金活動をしていたら寄付するとか 歩きにくそうにしている人と一緒に階段を下りるor上るとか 横断歩道を一緒に渡るとか 義務感というよりは、心配だからつい

    • あいのカタチ【創作小説】

      引っ越しの手伝いをして欲しいと頼まれたのは先月のことだった。 優(ゆう)は年下の幼馴染で、就職を機に県外に出たのだが、転職をしてこっちに戻ってくることになったらしい。 力仕事はあまり得意ではないが、頼ってくれたのが嬉しかったので直ぐOKの返事をした。ここしばらく会ってなかったから、近況を聞きたかったってのも理由の1つだった。 「久しぶり!」 事前に教えられていたマンションへ行くと、入り口の前で優が待っていた。 「おー、久しぶり」 ひらっと手を上げながら、懐かしい顔に安

      • 雪の日

        雪が傘に当たる時、雨みたいにパラパラと音がするのだと、20を過ぎて初めて知った。 就職して地元を離れ、県外へ出た2年目の冬、私は長靴を買った。 降水量の多い場所だったからではない。冬がとても、寒い土地だったからだ。 路面は当たり前の様に凍り、日当りの悪い場所は、いつもスケートリンクと化していた。 結露が凍り、窓が開かなくなるということも、当たり前だった。 ただ、雪はたまにしか降らなかった。 理由は分からないが、ここは昔からそういう土地らしい。 しかし降る時は異常なくらい

        • 冬の日

          からからと、音を立てて開く窓。 はあ、と、吐いた息は白く色付きやがて消えた。 つんと鼻につく空気の冷たさに、ウッと小さなうめき声を上げて 天音(あまね)は窓を閉め、眉間に皺を寄せて戻ってきた。 「鼻いたーい」 「涙出てんぞ」 いそいそとこたつの中に戻ってきた天音にティッシュを差し出す。 「ありがと。外めっちゃ寒い」 「当たり前だろ、冬なんだから」 「息白くなったよ」 嬉しそうに、天音は言った。 「昔、お菓子のシガレット咥えてタバコ吹かすみたいにして遊んだなぁ」 「

        お金と感謝の気持ち

          ハレルヤ

          本の面白い読み方を知ったのは、偶然入った喫茶店だった。 その日、私は出張で北陸の某県にいた。 特急を降り、その県を名称にした駅に降り立った私は、まず有人改札に驚き(駅員が切符を回収していた)駅前なのに休める店の少なさに驚き、愕然とした。 私は顧客との約束までの2時間を、どこかで潰さなくてはいけなかった。 幸運にも、その日は比較的外で過ごしやすい気候であったため、私は町を散策する気持ちで駅から離れた。 ふらふらと小道を歩いていると、古めかしい喫茶店が目に入った。 私はそこに

          ハレルヤ

          教えるということ

          「私、小さい頃お弁当箱はすぐに水に浸けなさいっていうことの意味が分からなかったの」 「え?」 それまで俺の愚痴を聞いていた初音(はつね)が、突然話し出した。それも、よく分らないことを。 「小さい頃ってとにかく遊びたい盛りじゃない。だから袋からお弁当箱出すだけでもすごく時間がもったいなくて、守れないことが多々あったのね」 「う、うん」 「まぁ面倒くさかったってのもあるんだけど、とにかく出し忘れることが続けて何度かあった日に、母に言われたの」 「何を?」 「今日から

          教えるということ

          心の話

          「心が折れるって、どういう事だと思う?」 「へ?」 あまりに想定外の返事をされ、僕は素っ頓狂な声を上げた。 「どういうことだと思う?」 彼女は柔和な顔で、繰り返した。 「え、えーと、これは真面目な話?」 「もちろん。冗談じゃないわ」 「僕が今貴女に言った事、ちゃんと伝わったかな?」 「伝わりましたとも。その手に持っている指輪の意味も」 サーッと、顔から血の気が引くのが分かった。 「そ、それじゃあ、ととと遠回しにここ断りののの」 「そうじゃない!言葉の通り