見出し画像

【学びの盾#3】 犯罪から子どもを守れるか:人ではなく場所を見よう

こんにちは.双子を含む子供3人を育てながら研究者をしている穂(すい)(@suirigaku)です.

学びの盾シリーズ3回目は犯罪被害についてです.

子どもの犯罪被害についてのニュースには憤りと強い不安をおぼえます.子どもが自分の身を守るために親としてできることはあるのか.犯罪学を学んだ防犯のスペシャリストである小宮信夫さんの本「子どもは「この場所」で襲われる」を元に書きます.

(この記事では犯罪事例は載せていませんが,紹介している本は犯罪事例を取り上げていて,本当に苦しい気持ちになります.読む場合はご自身の気持ちが安定しているときをおすすめします.)


私たちの防犯知識はまちがっている

みなさんは,子どもたちに次のようなことを伝えていませんか?

「暗い道に気をつけなさい」
「人通りの少ない道に気をつけなさい」
「死角のある場所に気をつけなさい」
「知らない人とは話してはいけません」
「不審者に気をつけなさい」

子どもは「この場所」で襲われる,小宮信夫,p.14

このような伝え方では子どもを守れないというのです.実際,みなさんは最後の「不審者」を説明できるでしょうか.不審者は不審者らしい?外見をしているとは限りません.

これら私たちが知っている防犯知識は「人」に注目した「犯罪原因論」をベースにしています.しかし,犯罪の動機の解明は難しいため非効率なだけでなく,外見に頼って人を判断するしかなく,マイノリティの人たちを不審者扱いしかねないという弊害もあります.

人ではなく場所に注目する

それでは何に気をつけるかというと「場所」です.犯罪者は犯罪を行っても逃げられると思ったときに犯罪を実行します.つまり,気をつけるべきはそこが犯罪者が選ぶ場所なのかということです.

それを見分けるキーワードは

入りやすく,見えにくい

です.例えば,

車道と歩道の間にガードレールがない道

です.なぜなら,ガードレールがないので「入りやすく」,歩道にいる子どもを車内に連れ込むことができるからです.また,

木々に囲われている公園

も入りやすく見えにくいため危険になります.このような場所を見分ける力を景色読解力と呼び,この力を育てることが大切になります.より詳しい説明は小宮信夫さんの動画がわかりやすいと思います.

日本の防犯教育は「防犯ブザーを鳴らしましょう」など犯罪者を目の前にしたときの対応を教える「クライシス管理」が主流です.しかし,これでは犯罪予防とは言えないのではないでしょうか.犯罪に巻き込まれないための「リスク管理」である,危ない場所を見分ける力(=景色読解力)を育てることが大切だと思います.

日常会話に防犯も

みなさんは子どもと歩く際に,「ここは車が飛び出してくるから気をつけて」など交通安全については自然に声かけをしているのではないでしょうか.同じように,入りやすく見えにくい場所では「ここで話しかける大人にはきをつけて」という会話をすることで防犯についても日常会話で教えることができます.

知らない大人とも話せる力

場所に注目することに加えて,もう一つのキーワードは「自分が主導権を握る」です.相手の問いかけに対してYes, Noでしか答えられないと犯人の言う通りに誘導される可能性が高くなります.そこで,自分が主導権を握るためのコミュニケーションをとれるかが鍵になります.

例えば親子で地域の取り組みに参加して,「知らない大人」と話す機会をつくることは有効だと思います.「知らない人と話してはいけない」というメッセージは逆に(少しでも)知っている人を信頼しすぎてしまうことがあります.そのため,知らない大人ともコミュニケーションをとって騙されない力をつけることが大切です.

地域でできること

犯罪に対して人に原因を求めず,犯罪が起こる「環境」に目を向ける「犯罪機会論」をベースにした防犯は世界では主流になっているそうです.「地域安全マップ」の作成や「ホットスポットパトロール」など地域の取り組み案も本には紹介されています.子どもを守るために犯罪を起こしにくい環境にするには,地域のつながりに働きかける必要もあります.こうした方向では何ができるのかは自分のこれからの課題です.

役に立ったと感じた方はいいねいただけると励みになります.
ご感想やうちはこんなのやってるよというコメントも大歓迎です. また, そこ間違ってるよなども優しくご指摘いただけると嬉しいです.
コメント欄やこちらのフォームでも受け付けております.
最後までお読みくださりありがとうございました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?