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フィジー留学体験記⑮
〜前回のあらすじ〜
フィジーで知り合い、好きになったケイ君とデートをした筆者(お土産買いに行っただけ)
いろんな思いを抱えながら帰国の準備をするのであった。
9/15(金)【最終日】
帰りのパッキングとホストファミリーへの手紙を書いていたら夜中の2時になってしまった。そこから寝たけど4時に目が覚めてしまった。
朝ごはんはピザとヌードル、バナナと紅茶だった。
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なんでやねん、最後はママの料理が食べたかったのにー( ; ; )
ヌードルは素麺だった。美味しかったけど!
不満の中だとしても、食べていたらいろんな気持ちがこみあげてきて泣きそうになってしまった。
食べ終わって荷物をまとめてリビングに出る。
手紙を取り出すと、ママも用意していてくれたようで一緒に交換した。ママは綺麗な字だった。
パパとママが学校の中まで車で送ってくれた。お別れの挨拶をした。ママが少し泣いてくれるから、私も泣いてしまった。
たった2週間しかいなかったのにママは私を本当の娘のように扱ってくれた。この恩は一生忘れない。
学校の中で空港に向かうタクシーを待つ。
1限が終わった生徒が教室から出てきて話しかけてくれた。とても嬉しかった。
普段人と写真を撮る習慣が無いので、その時の写真が無くて後悔した。これからは意識付けようと思う。
タクシーに乗り、空港について中をに入ると、他の友達と移動したケイ君の姿があった。
友達に囲まれているし、何よりなんだか気まずくて話せなかった。
なので気配を消して近づいてみた。
(そういうところがキモいねん)
すると、ケイは帰ったら彼女に会うんでしょ、と聞こえてきてめちゃくちゃショックだった。こんなアホなことするんじゃなかった。
ロビーにいるのもなんだかなと思い、アイちゃん達とチェックインを済ませ空港内のお土産コーナーに入った。
しばらくお土産を見ていると、ケイ君達も入ってきた。
そのとき、その姿の周りがぼんやりと光って見えた。
イラレで言う光彩(外側)みたいな。とにかくそんな感じで、なんか綺麗だった。
ああ、もう日和ってる場合じゃない、もう会えないんだ。こんなに好きなのに、自動エフェクトがかかってるくらいの恋をしてるのに恥だなんだ言ってる場合じゃない!
そう心に決めた私はチョロチョロと様子を見て周るが一向に一人になる気配がない。
そういえばケイ君は人気者なんだ。
常に人の中心にいるタイプじゃなくて、そこから少し離れた場所にいるのに自然と人が集まってくる。
多分一人のほうが好きそうだけれど、本人の纏っている空気が心地良いからかみんな彼を好きになる。
生まれついての日陰者の私とは違う。
最初から上手くいくはずがなかったんだ。だってこんなにも違う。
学生時代いじめられた、いじめた記憶、住み込みのバイト先でハブられた記憶。私は彼と違って、人間関係は頑張らねば円滑に行かないタイプの人間だった。
あーもうええわ。どうせ無理やし、最後にちょっとだけ話したかっただけやもん...
そうやって自暴自棄になっていると、通知音が聞こえスマホの存在を思い出した。
あっそうや、昨日LINE交換してたんだった。
トーク画面を開き、出発前に少しだけ話せないかという文を作る。だけどなかなか送れない。
そもそも何か重大なことを言いたいように誤解されないか?重いって思われへんやろか。
なかなか押せず時間だけが過ぎていく。
まずい。よし、こういうのは勢いや、1,2,3で押そう。あっ2で押しちゃった。ぎゃっ既読すぐついてんけどどうしよ!
しかしなかなか返事が来ない。
あっあかん詰んだ。
絶望に気づかれないように、おやつを食べるオオ君と大げさに会話をした。
すると、反対側のソファに座っていたケイ君はゆっくりとこちらに向かってきた。
えっえっえっなんで。いや違う、私の後ろにあるお土産屋さんに行きたいのかもしれへん。いやきっとそうや。
やばい顔上げられへん、通り過ぎるかもやし気づいてないふりしよう!
しかし、ケイ君は私の目の前で止まった。
私はぎこちなく笑った。半日ぶりに目が合って、心臓の鼓動がうるさい。血が巡り過ぎて死にそうだった。
その後の会話は、なぜか自分で思っていたよりずっとうまくできた。
私こんなに自分の緊張隠すのうまかったんだ。
多分飛行機の座席の話をした。ちゃんとは覚えていない。
話が一段落すると、私は黙って立った。目があって、私は逸らした。
オオ君にちょっとお土産見てくる、と言って後ろに行った。
ケイ君は黙ってついてきてくれた。
あまり多くを言わなくても察してくれるところが好きだと思った。
お土産屋さんの奥に休憩室があって、そこのソファに座った。
座るとすぐ、
え、どうしたの?
とケイ君は言った。
いややっぱそうなるよな。特別なことを言いたいわけじゃなかったんだ。
とりあえず、昨日一緒に帰ってもっと好きになったよ、とだけ言った。
それを聞いて笑っていた。
まあタイミングよな、と言っていた。
その声がすごく好きだった。
突然、何かしたいことある?と聞かれた。
何かって何??
頼んだらちゅーしてくれるんか??いや流石に言わへんけど!!
突然のボーナスに混乱した。
混乱の末、私は咄嗟に、
手、繋ぎたいかも…
と言ってしまった。
やっべ、調子乗りすぎたかな。嫌われたらどうしよう。
そんなことをぐるぐる考えていると、ケイ君は私の左手を握ってくれた。
大きくて柔らかい手だった。
起きていることがちゃんと理解できずにしばらく硬直していた。
手の感覚だけに神経を集中させていると、ケイ君は手汗をかいていることに気がついた。
もしかしてケイ君も緊張してくれているのかな。そう思ったらすごく嬉しかった。
(って思ってたけどよく考えたら自分の手汗オンリーだったのかもしれない)
春休みに四国に行くかもしれない、とケイ君は言った。
旅行が好きだそうだ。いろんなところに行っていた。そういうところも好きだった。
じゃあ連絡してよ、普通に友達としてあそぼうよと言った。
うん、と返してくれた。
時計を見てケイ君を見る。
そろそろ行かなきゃいけないという空気が伝わってくる。でも私は行きたくない。気づかないふりをした。
背が高い人って手も大きいんやね、と言った。
そう?と言い、ケイ君は右手を私の方に翳すから、私は左手を重ねた。ほとんど無意識だった。
思っていた倍くらい指が長くてびっくりした。
さっき手を繋いだ体感よりも大きかった。
思い出して動揺しそうになったので、ピアノ向いてるねと言って誤魔化した。
もう十分、ここまでできると思ってなかったので胸いっぱいだ。
アナウンスが鳴る。もう困らせてはいけない。
そろそろ行こっかと言って立った。
ケイ君はそうだね、と言って立ち上がった。
ケイ君が進もうとした瞬間、無意識にシャツの袖の裾を引っ張っていた。
やばい、しつこすぎた。怒ってたらどうしよう。
恐る恐るケイ君を見ると笑っていた。それに心底ほっとした。
いや、ごめん、行こう行こうと言って手を離す。
別々の方から行こうと言われた。
そっかそりゃそうよね。ちらっと後ろを振り返り、背中を目に焼き付けた。
胸がぎゅーっとなって目がチカチカするこの感じ。
どうしてここなんだろう。
せっかく好きになれたのに、こんなにもすぐお別れしなくちゃいけないなんて。
飛行機に乗ってもケイ君の姿は見えない。遠くに座ってるんだと思う。
降りてから会えるかな、いや無理だろうな。
飛行機は離陸する。
小さな島国は飛び立つとあっという間に見えなくなってしまった。
青い海すら雲に覆われて見えなくなったころ、私は日記を書き終えて眠りについた。
こうして、私の2週間の留学は終わったのだった。
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