Record Store Day 2021
一昨日17日は『Record Store Day』。簡単に言うとレコード盤の日で、配信やダウンロードで現物が売れなくなった時代に、衰退したレコードショップを救済するイベントを立ち上げようと企画された、年に一回のちょっとしたお祭りだ。当然、日本発祥ではなく、アメリカから起こった。現在は20か国以上に広まっているらしい。
今年14回目で、通常は4月の第3土曜に開催されるのだが、今年はコロナ渦ということで時期がずらされた。この日に限定でレコードを発売するアーティストもいる。この日の限定盤は、「RSD盤」という。イベントの参加店で売られ、ネット販売はちょっと日にちを遅らせるなどの制約があるらしい。この企画によって、久々にレコード屋に列ができた。
『Record Store Day』のイベントが始まってから、レコード盤の人気が上がった。いや、需要が上がったというべきか。「レコードがいい」、「レコード盤は文化だ」という人は数多くいるけど、そういう人もレコードは買っていなかった。ぼく自身、そうだ。それが、このイベントが始まってから、実際にレコードを買ったり、レコードを聴ける環境を整えたりした人が増えた。単なる一部のクラシカルなマニアだけのものが、ちょっと一般化された。売り上げ規模が50倍くらいに膨れ上がったらしい。たしかにポールマッカートニーやボブディランの限定盤がレコードでしか発売されないのであれば、機材を整えたくなろうというものだ。商売として成り立つのであれば、メーカーも動くだろうから、今後、安易で廉価なレコードプレイヤーも出回るのではないか。
レコードという形態は、「CDより不便だな」というところも含めて、音楽好きに共感されるところが多いと思う。A面が終わったらひっくり返す手間が生じるが、A面ラストやB面1曲目など、アルバム中に目立つポジションが増える。その場所にぴったりはまる曲というものが、生まれることになる。
また、「A面は勢いがあって、B面はおとなしい」などという、1つのアルバムで2つの顔を出せることにもなる。繋がっていない不便さが、利点にもなるのだ。
このレコード形態とCD形態の違いがとても明確に出るアーティストが、Lou Reedだと思う。ベルベット時代を含め、彼は区切り部分に、ぴったりとはまる曲を入れる。A面ラストに収められている「Jesus」(The Velvet Underground)や「Oh Jim」(Berlin)や「Walk on the Wild Side」(Transformer)は、これぞ前半部の締め!という曲だし、B面あたまにもってきている「Average Guy」(The Blue Mask)や「Busload of Faith」(New York)は、一旦区切った後の、あらためての出だしに適した雰囲気を出している。
そしてまた、彼はほとんどチャートに顔を出さなかったので、名の割には曲が知られていないアーティストだ。CDのようにずらっと曲を並べるとどれも同じに聞こえてしまいやすい。アクセントのポジションの多いレコードという形態の方が、活きると思う。
その17日、母親が2回目の接種だったことで実家に行った。せっかくRecord Store Dayだからということで、しまっておいたレコード盤を引っ張り出してみた。箱は埃まみれだが、中は大丈夫。少々ビニールが汚れている程度。
やっぱりいいなぁと、ジャケットを1枚1枚見つめた。このジャケットも、CDの大きさとは比べ物にならないくらい、映えるのだ。ただ、その分、持ち運びはとっても不便。
部屋に飾ろうと思い、数枚選んで持ち帰った。その中の1枚が、The CarsのRic Ocasekのソロ。この人に憧れて、服やサングラスを真似したり、雑誌を切り抜いて床屋さんに持っていったりしていた。似ていたのは体型だけで、最後までこの人のクールさに近付くことはできなかった。
すべて小文字で書かれているのは、当時このように書くのがニューヨークで流行っていたからみたいだ。この時代のThe Carsのアルバムも小文字だけで書かれている。こういうところもまたクールだ。
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