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ドクターフィッシュのこと

蟹がいなくなってから空いた水槽でドクターフィッシュを飼っていた。

大学の学祭でドクターフィッシュ体験コーナーをやっていたけど、終わってから大量のドクターフィッシュをどうするのかで困っていたので30匹ほど貰ってきた。もともとそういう変わった魚を飼いたいと思っていたからちょうど良かった。ドクターフィッシュがなかったらいずれサカサナマズなんかを買ってきたんじゃないかと思う。

ドクターフィッシュは温泉の中に生息していて人間の角質を食べたりするのでそういう治療もあるらしい。僕は完全に治療目的ではなく興味本位でこの地味な色をした鯉の仲間を飼いはじめた。角質を食べるなら毎日手を突っ込めば餌代はかからないのだろうか。手以外の角質だとどの部位が1番人気なんだろうか。帰りの電車でちょっと調べていた。別に人間の角質が好物というわけではなく、入ってきたから食べているそうだ。餌があるなら餌が欲しいらしい。テトラの浮かぶタイプの餌を買った。

なるほど、手よりはるかに食いつきがいい。彼らはきっとここまでの時間で飽きるほど人間の角質を食べてきただろう。色とりどりの餌を見ていて思った。色あげしてみたらもっと綺麗になるんだろうか。

結論からいえば多分なっていないと思う。

ただ、そのためにADAのいい餌をあげていた僕の目には日に日にオレンジ色が強くなる彼らのヒレがとても美しく、輝いて見えていた。心なしか角質を食べるためにプールの中にいた頃よりも元気に泳いでいた気がした。

美しい魚にふさわしい水槽にするために水草が増えた。小型のプレコもいつのまにか水槽にやってきた。水質もものすごく良かったし、いい水槽が出来上がったと思う。何より彼らのことが愛しくてたまらなかった。

しかし何かをミスってしまった。ある朝全員お腹が破裂して死んでしまった。申し訳ないことをした。

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