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江戸時代創業のガラスメーカーが10年かけた挑戦は、始まりに過ぎない

私たちの生活には、多種多様な容器があふれています。朝、紙パックからガラスコップに牛乳を注ぎ、職場にはペットボトルに入った飲料を持っていき、たまのお酒の席では、ガラス瓶に入った焼酎や日本酒、ワインを楽しむ。

ふと一日を思い出してみただけでも、本当にたくさんの容器に私たちの生活は支えられています。この多種多様な容器をつくり、私たちの生活を支えてくれている会社があります。それが石塚硝子株式会社です。

今からおよそ200年前、日本がまだ鎖国をしていた江戸時代に、石塚岩三郎氏がガラス製造を始めたのが石塚硝子株式会社のスタートでした。

そして、この石塚硝子株式会社が、2022年に器の総合メーカーとしては、想像できない新商品を発売・発表しました。なぜ、器の総合メーカーが、全く別のジャンルに挑戦したのか。それも、会社の常識を覆すほどの。

その挑戦について、石塚硝子株式会社のプロジェクトリーダーの鈴木雄三さんと石川綾子さんにお話を伺いました。



2世紀を越える歴史

石塚硝子株式会社は、1819年に創業されたガラス製造の会社です。初代の石塚岩三郎氏が当時はまだ珍しかったガラスの製造について、長崎まで学びにいき、事業をスタートさせました。

そこから、ガラスのさまざまな製品を、技術の成長とともに製造していくようになっていきました。ガラスの製造だけでなく、研究開発にも取り組んでおり、「ガラスを究め、ガラスを超える」というビジョンを掲げていました。

さらに、時代の変化に対応していく中で、容器としての需要はガラスだけでなく、紙パッケージ、ペットボトル、陶磁器など、本当にさまざまな容器を製造する、容器の総合メーカーへと成長をしていきます。

その一方で、たとえば、抗菌効果があり、空気中の水分でも溶解するガラスの抗菌剤IONPURE(イオンピュア)を開発するなど、容器の製造だけでなく、素材の研究・開発にも力を入れています。

この新素材への飽くなき研究心・挑戦への思いが形になったものの1つが、およそ10年前の消臭剤DEOGLAの発見でした。


偶然だったDEOGLAとの出会い

今回お話を聞いた石川さんが、DEOGLAという素材の発見者、開発者でもあるのですが、彼女自身はもともとこの素材を開発しようと思っていたわけではありません。

全く別の研究を進めている中で、偶然、発見したものでした。それは、硫黄系の物質と反応する特殊なガラスがあることを見つけたのでした。

この硫黄系といわれるものは、私たちの生活の中では、悪臭にあたるものです。つまり、硫黄系の物質と反応するということは、悪臭に反応できるガラスになる可能性があり、消臭剤の開発にも結びつく、そう石川さんは考えました。

ただ、反応する素材を見つけたから、すぐに消臭剤の開発に踏み出せるわけではありません。その特徴を持ったガラスの組成開発、安定的に生産できる工程の確立、品質の調査や規格、特許の取得、論文の発表など、本当に多くのことを乗り越える必要がありました。気づけば、素材の商品化へと踏み切ってから6年経って、ようやく、DEOGLAの商品化に漕ぎ着いたのでした。

次の課題は、このDEOGLAをどうやって市場に出すかでした。


素材ではなく、商品として勝負する

このDEOGLAの素材としての商品化の目処が立った頃から、この素材を使ってくれそうな、繊維やフィルム、日用品メーカーへの営業活動を進めていました。

そのような営業活動を進めていくなかで、突然もたらされた1通のラブレターが、このプロジェクトの方向性を大きく変化させることとなります。

そのラブレターの送り主は、オーラルケアに長年取り組み続けてきた2人の専門家からでした。このお二人は、大手の歯磨き粉の開発に長年携わってきており、さらに、会社を離れてからもより良いオーラルケアの開発に腐心されてきた、エキスパートとも呼べる方達でした。

そのお二人が、素材の開発者である石川さん宛に、ラブレターを送ったのです。内容はもちろん、DEOGLAこそが、オーラルケアにおいて「探していたものだ」と。

この出会いをきっかけに、DEOGLAをつかって歯磨き粉を作るというプロジェクトの方向性が定まっていくこととなりました。


もう一つの挑戦、自分たちでつくる

とは言っても、すぐに自分たちで歯磨き粉を商品化しようという考えにすぐになったわけではありませんでした。

素材メーカーとして第一に考えたのは、このDEOGLAという素材を歯磨き粉を作っているメーカーに販売するというものでした。もちろん、その方向性でも、この素材を使った素晴らしい歯磨き粉はできていたのかもしれません。

しかし、DEOGLAの商品化プロジェクトのリーダーである鈴木さんは大きな挑戦に打って出ることを考えます。自社で商品をつくり、自社で販売する。材料を販売するだけでなく、自社でブランドを育てていこうと、考えたわけです。

ちょうど、会社自体は200年の節目を迎える頃でした。社是としても「挑戦」という言葉を強く掲げたいという意識の高まりも相まって、鈴木さんはじめプロジェクト全体が、自社でつくり販売するという挑戦へと歩み出したのです。

そこからは何から何まで手探りで、処方開発と並走しながら、歯磨き粉の市場調査、商品コンセプト、パッケージデザイン、商品名、薬機法の制約の中でどう訴求するのか、どのように売るのか、などなど。自分たちで学びながら、悩みながら、そして、納得しながら、一歩一歩進んで行きました。

そして、素材の発見から10年かけて、ようやくたどり着いたのが「デオグラ オーラテック」です。

歯磨き粉「デオグラ オーラテック」

そこにあるのは、メーカーとしての、「いいものをつくりたい」というプライドでした。それは、DEOGLAという素材、歯磨き粉という商品に余すことなく込められています。

そのプライドの通り、口臭をしっかりと防いでくれる今までになかった歯磨き粉になっているそうです。


挑戦はまだまだ続く

さらに、鈴木さんと石川さんは考えます。このDEOGLAができることはまだまだある、と。

この消臭効果の高い素材を活かして、より多くの人に、より多くの臭いに悩んでいる人たちに、新しい商品を届けていきたい、と。

「デオグラ オーラテック」という歯磨き粉は、まだまだこれから育てていく商品ではあるが、それとともに、「DEOGLA(デオグラ)」というブランドも、もっともっと育てていこう、と。


企業の挑戦が、日本を変える。その思いをもとに、今まさに変わろうとしている、新しい挑戦に取り組んでいる、チャレンジしている企業をご紹介していきます。

石塚硝子株式会社のDEOGLAが、あなたの明日を変えるかもしれません。次回のnoteもお楽しみに。