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賢いのに学習意欲が低い日本の大人

前回の記事で、日本の成人の「読解力」と「数的思考力」は全ての学歴において加盟国トップであることを紹介しましたが、今回は成人の学びへのモチベーションや大学や職業訓練のコストパフォーマンスについての調査を紹介します。

結論

加盟国平均と比較すると、日本の成人は読解力や計算力が全ての学歴でトップクラスだが、学びに対するモチベーションは著しく低く、成人教育のコストパフォーマンスも低い

・新しい知識やスキルの取得に対する意欲が韓国と並んで加盟国諸国平均より著しく低い
・高等教育や職業教育の経済的リターンが加盟国諸国平均より著しく低い
・特に女性の高等教育や職業教育の経済的リターンは加盟国諸国平均より著しく低い
・高学歴女性の労働市場参加率が低いことが一要因

グラフ1: 学びに対する意欲

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グラフ2: 高等教育の学位取得の経済的リターン

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分析手法:観察

2016年にOECDが実施した16才~65才までの男女個人へのアンケート結果を使用し国際比較

編集後記

なんという悲しい結果でしょうか。全ての学歴において加盟国トップの読解力と計算力を持ちながら、それを職業に生かせておらず、新しい学びへのモチベーションも他の国に大きく差をつけて低い。特にせっかく得た学歴を生かせていない女性が多いことは労働市場において大きな損失だと思います。しかしながら、逆に捉えると活用できていない潤沢な人的資本を多く持っているとも言えます。習得に何十年もかかる読解力や計算力はすでに高いわけですから、学びへの姿勢や、学びを職業に生かす仕組みが整えば、日本の労働市場はそのポテンシャルを大いに発揮することができるのかもしれません。

文責 識名由佳

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OECD. (2019). PISA 2018 Results (Volume II): Where All Students Can Succeed. OECD. https://doi.org/10.1787/b5fd1b8f-en

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