卓球とテクノの親和性に少し泣く

ピンポン the animation について書く。

放送時にも見たものの、改めて、この作品を見たばかりの友人と話したら作品への熱が再燃したので書いてます。劇場版ピンポン見ました、コミックスもちろん、青い春、鉄コン、バンドスーパーカーなどを経由しています。松本大洋作品を全部通ったわけではありません、しかしピンポン熱が冷めません。音楽知識がありませんが、このアニメにおける音楽についての所感を書こうとおもいます。キャラの関係性や物語そのものはすでに多くの方が書かれているのでそれは他の方のを読んでみてください!!↓

まず、

この作品は、劇伴とタイトルのカット、キャラクターのセリフ全てが交わった瞬間が素晴らしいです。

アニメにおいて第一話や最終回、特殊OPなどが重要視される傾向がありますが、このピンポンではタイトルバックが話によってバラついていて、1話1話の温度によって違うので緩急が次のシーンや話へと急がせてくれます。最終話は特に素晴らしいです。さあ決勝戦、そのままOP回収になっています。オープニング回収すれば偉いわけではありませんが、そこまで計算済みというのは見てる側として嬉しいです。

またタイトルバック、セリフなどで扱われる文字が松本大洋作画と合います。古臭くも新しくもないこの風合いが良いです。雑誌PATIPATIのような90年代らしさも感じます。

なんと電気グルーヴが表紙になっています。

この文字たちがドラゴン、チャイナのようなキャラからペコ、スマイル誰にでも合うのがヒジョーに素晴らしいです。(キャラによって変えてない)

徐々に音楽の話をしようと思います、実写の劇場版から受ける電子音楽のイメージが強い本作に反するドパンクの爆弾ジョニーの起用がはからずもマッチするのはとても憎いです。青春とはやはりこういう音楽に彩られるべきだなと思います。

EDのメレンゲはスーパーカーYUMEGIWA LAST BOYへの愛も感じますね。どのあたりがとかは明言できません。あしからず、

https://www.youtube.com/embed/RO8fG3wIk2U?re

そして何よりこの世界を彩ったのは牛尾憲輔さんです。

https://twitter.com/agraph

聲の形、DEVILMAN cry babyでも演出をしていますが、すべて素晴らしい。寒暖差というか、鉄と凪というか、両極があってこそ作品に寄り添っているある印象です。

テクノを基調としたサウンドに合わせて展開する漫画のコマと卓球ラリーがBPMと同調する様子が描かれます。省エネに感じられながらもその妙です。アニメであるとともに「漫画」が動いています。途端にぬるぬると動き出すのも卓球のスピード感そのものかのようです。テクノの定義は私もあまりわかっていませんが、電気グルーヴにも関わる牛尾氏が劇伴ということで楽曲はテクノとさせてください。牛尾氏は現在、劇場版ピンポンを彩ったスーパーカーのメンバーでもあるナカコー率いるLAMAのメンバーですね、、この結びつきもまた楽しいですね。

劇伴に関して。作画と劇伴とセリフの三位一体が作品の随所にある。特にHero Appears と Hero Themeの高揚感は良いですね。音楽を作らない身分なので、だいぶ言葉にしづらいです。またスポーツをやっていた身としても試合のたかぶりがありますね。



スマイルが作ったオリジナルの口笛の曲(ヒーローの歌)=Pecoという曲があります。ペコ自身のテーマ曲として対ドラゴン戦で流れる。海王学園のトップにして全国最強の男の実力に圧倒されていたが、『おいドラゴン!お前に教えてやんよ!…卓球っつうのはな、めたくそ楽しいんだぜ!!』主人公らしく覚醒したところ、Pecoが流れます。(Pecoのテーマはオオルタイチ提供になります)この曲、原タイトルはTrick Star トリックスターというらしいです。常識を覆すという意味合いが含まれる感じでヒーローすぎないのがまた良いですね。

ペコは作品内でヒーローとして扱われます。卓球によって苦悩しているキャラクターたちを卓球で対峙することで彼らを苦悩から解放していきます。苦悩とは王者、凡才、天才、期待そういった勝負に結びついた彼らが抱える苦悩です。


ドラゴン戦にて、シルエットのペコの影はヒーローになります。

Peco

https://www.youtube.com/watch?v=yybGF4PmaRo

しかし肝心の決勝、ヒーローのテーマとして、ペコ対スマイル戦では、Hero Themeが流れます。

これはドラゴン戦を経たペコが本当のヒーロー(誰しもにとって、もちろんスマイルにとって)になったことで完成したと捉えたい。視聴者の我々が見ているともちろん、BGMが入ってくる。これはスマイルの頭で流れたのか、ペコの中で流れたのかなど、と考えてみる。もしスマイルの中で流れたのだとしたら、対スマイル戦で流れる曲はPecoでないか?とも考えた。ペコの自身のヒーローとしての自覚。スマイルがペコをヒーローとして再び認めた。(幼少期以来)二人の関係によって完成されたテーマとして二人の中で流れたのがHero Themeと考えたい。(その様子を視聴者が観測したと考えます)

これらは曲単体で聞いて、もちろん楽しいのだが、たちまちペコの声が、<ヒーロー見参!>と聞こえてきますね。昨今のMAD動画の影響か、セリフが音の隙間にハマるかのように、これらが脳内で補完されていくのがまた良いです。

<気合い入れろ!スマイル!男はど根性だかんよ!>スマイルが自身が閉じこもっていた殻=ロボットの装甲を吹き飛ばします、一度、試合中の柵の外に出てしまい、ペコの元に戻る様子で、これまたHero Themeが流れます。正直ここからのラリーでそのまま結果を見せないというのがこの作品の良いところですね。ペコの夢は世界チャンプでありますが、2人にとってこの戦いは結果は一旦おいておいて、またあの頃のようにやろうや!って感じですよね。


Ping Pong Phase で描かれるピンポン球の音のサンプリングは卓球とテクノ=電子音楽の親和性は劇伴でも随一です。

https://www.youtube.com/watch?v=KmBaVYfXDns&t=40s

幼少期を思い出しながら、ペコの心情とスマイルの心情が呼応するかのように後半に向かって混ざり合う曲展開、卓球は一人ではできないスポーツであるとともに相手との呼吸が表現されているようです。お互いを認め合い戦い、最後は勝敗ではない領域に向かう...といった、スポーツにおけるゾーンの領域も彷彿とさせます。対戦中に白黒になり、時間が止まったような演出があり、ペコとドラゴンが対峙したとき彼らはゾーンに達しています。

ペコ対スマイル戦でも白黒(ゾーン現象)になり、スマイルの語りで、ヒーローについての定義についても述べます。そしてオババはこの試合を勝ち負けでなく、「遊び」と称しています。

アニメ終盤には<手のひらを太陽に>が流れます。勝者として、敗者としてではなく、卓球を愛する人間たち各々が主人公として集約されていくのは、原作にはないアニメ版の特筆すべきシーンです。結局キャラクターについても書いてしまいました。みんな本当にいいキャラです。最後のFarawell songも最高です。

ここまで散々偉そうに書いておいて、何が言いたいかというと、この素晴らしい楽曲群をもってピンポンを彩った牛尾憲輔氏の業を観る(聴く)たびに私は、少し泣く。




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