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心の在り所

最近知り合った人との会話の中でエッセイの話になった。
話をしている際中ある記憶が蘇り、今回はその事で書いてみることにする。

社会に出るということ

学生時代の後輩から相談を受けた。
相談というより愚痴みたいなもので、
大学を卒業をし、晴れて社会人となった彼はいわゆる五月病というものにかかっているらしい。
早くも会社に対して不満や嫌気が差して相当愚痴が溜まっていたそうで、彼は話す口を止めなかった。
内容は私が予想していた通りのもので少し拍子抜けしたが、その反面安心したりもした。
そんな彼の愚痴を聞きながら、私は終始ニヤついている。
アドバイスを出来る程ではないが、こんな私でも社会に出て早三年が経つ。
彼の話を聞きながら、私自身もどこか懐かしい気持ちになり三年前の事が頭をよぎる。
三年前の私も同じような感情を抱き、誰かにこんな風に愚痴ったっけそう懐かしんでいると、彼からちゃんと聞いているのかと怪訝そうな顔で顔を覗かれる。
誰しも通る道であり、それでも大抵のことは時間が解決してくれるもの。
そう慣れってやつだ。
学生気分が抜けるまである程度時間がかかる。
毎朝同じ時間に起きて、同じ時間に家を出て、同じ時間の電車に乗る。
そこにあるのは見慣れた顔ぶれで、皆疲れ切った顔をしスマートフォンをいじるなり、寝て時間を潰す。
人によっては自分の車で行くだろうが、それもまた同じようなもの。
会社に行けば自分の仕事以外にも色々やる事がある。
時に上司に褒められたり、理不尽なことで叱られたり、対応に迫られたりと、社会人は何かと大変だ。
これが結婚して、家庭を持っていたらと考えるとゾッとする。
慣れるまでは日々の業務をこなす事だけで手一杯だが、慣れてくると自分なりに仕事のこなし方が少しずつ見えてくる。
ある程度仕事に慣れ、自分の意見も言えるようになり、この仕事に対してやり甲斐なんてものが少しでも感じれるようになってきたら、晴れて五月病から脱する事が出来たことになる。
彼はまだその前段階であり、愚痴をこぼす彼を見てなんだか可愛く思えてきたりもした。
なんやかんだ言っても彼はちゃんと社会人をやっている。
頑張れよ新社会人、そう心の中で呟いた。


一冊の本

私にはお守りのような本が一冊ある。
読書が好きな私にとって、本屋とは楽園そのものだ。
本はいつだって私を違う世界に連れて行ってくれる。
社会人になってから毎日があっという間に過ぎるようになった。
月曜の朝は皆、かったるそうな顔をして出勤してくるが、金曜の朝は皆やる気に満ち溢れている。
そう華金ってやつで、社会で奮闘する私達戦士はようやく休日を迎える事が出来るのだ。
私も例外ではなく、金曜の朝の足取りは軽く、そして仕事終わりにはこの五日間を乗り切った自分を労うのだ。
私にとって本とはそんな忙しなく過ぎていく日々を忘れさせ、心の平穏を保つことが出来る一つのツールなのだ。
だからこそ私は定期的に本屋に足を運び、新しい出会いを見つけに行くのだ。
その日も胸を躍らせながらいつも通り本屋に行った。
ふと目に入った一冊の本を手に取り、何となく中を見てみる。
この本はいわゆるエッセイってやつで、基本物語は右から始まるが、この本は左から始まるらしい。
何となくペラペラとページを捲っていると、気になる話があり思わずページを捲る指が止まる。
一文字一文字丁寧に読み進めていく。
儚げで、淡く脆く今にも消えてしまいそうな言葉が綴られていた。だが確かに存在していて、私を優しく包み込み、そっと背中を押される様な感覚。
そんな言葉達が私の心を強く打った。
そして何故だか分からないが、この本は私にとって必要不可欠なモノで、絶対に買わなくてはいけない、そう思い私はレジの方に足を向けた。
自宅に帰り、早々に夕飯と風呂を済ませた後、さっそく購入した本を読んでみる。
今度は最初からじっくり時間をかけて読み進めていくことにした。
一つ一つの言葉が体に染み込んでいく、そうあの時と同じで私を優しく包み込み背中を押してくれる言葉達。
フッと心が軽くなるのを感じた。
その時の心の状態によってまた感じ方は変わるだろうが、この本はいつだって私を救ってくれる救世主なのだ。
この本との出会いは必然で、あの時感じた感覚はきっとそれを示唆するものだったのだろう、そう思うようにもなった。
この本は私の救世主であり、また心との向き合い方を教えてくれる先生でもあるのだ。
これから先もこの本にはきっとお世話になることだろう。
長い付き合いになりそうだ。



ロマンチスト

彼は一通り愚痴をこぼした後、一息つく為にタバコに火を付けた。
一口吸った後、「先輩どう思います?何かアドバイス下さい!」と彼は私に問いを投げかけてきた。
スッキリしたのだろうか、大分表情が明るくなっていた。
ありきたりな言葉なら直ぐ出せるが、他に何かないかと必死に頭を巡らせる。
暫く巡らせていると、ある言葉が浮かんできた。その言葉を私なりに変えて彼に伝えた。


辛い事があると悲しくなったり、孤独に襲われる日もあるだろう

でもそんな時には夜空を見上げてみるといい

俺達は星と一緒

星は一見全て同じに見えるかもしれないけど、実は一つたりとも同じ形なんてものは存在しないし、距離だって何千キロと離れている

距離を取ったり、時にぶつかって形を変えたり

それでもひたすらに自分の姿で輝いている

星はバラバラに砕けて死んでしまっても、他の残骸と集まってまた星になって輝く

失敗して挫折したとしても俺達は何度だって輝くことが出来る

夜空に輝く星達が小さいけどわたしも輝いているよって力をくれるはず

多くの小さな星達が天の川を作って、精一杯俺達の為に道を照らしてくれる

皆それぞれの場所で、それぞれの形で輝いているんだよ

ここまで言うと彼は私に、「先輩は見かけによらずロマンチストなんですね」と笑みをこぼしながら言った。
一言余計な気がしたが、最後にそのままの言葉を伝えた。

愛をいっぱい抱きしめたあなたのように
凛々しく耐えてきたあなたのように
小さな星だけど輝いている

彼は急にどうしたんですか?と聞いてきた。
俺にいつも勇気をくれる言葉だよ、と彼に言った。
そう、この言葉達はあの本屋で、あの瞬間手に取り私の背中を押してくれた言葉達である。
彼の言う通り私はロマンチストなのかもしれない。
だが、この言葉に私は何度だって救われてきたし、この先もきっと救われる。
私達は唯一無二の存在であり、皆んな違った形で輝いている。
ロマンチストでいいじゃないか。
そう思いながら夜空を見上げると、小さな星達が輝いていた。




最後に

今回私が購入した本は「小さな星だけど輝いている」というタイトルの本です。
この本は私にとって心の在り所となっています。
辛く心が窮屈になりどうしようもなく不安に駆られる時にこの本にはいつも救われてきました。
皆さんにもそんな心の在り所となれる本との出会いがあることを願っております。
最後まで読んで頂きありがとうございました。






































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