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【オススメ本】受田浩之編著『新時代LXー持続可能な地域の未来を切り拓くー』南の風社、2021

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「DX」という言葉を見ない日がなくなった昨今ですが、「LX」というのは聞き慣れません。それもそのはずLXというのはこの本の著者である高知大学の受田先生の造語だからです。

LXには「ローカル・トランスフォーメーション=持続可能な地域へと進化させいく取り組み」という意味が込められています。そして、この本では受田先生が委員長として関わられた(ている)高知県の産業振興計画がなぜできたのか、それはどんな計画なのか、そして、それがどういう成果を生み出したのか、といったことが、当時の部長さん(元副知事)の岩城さんとの対談という形で綴られています。言わば「対談形式のセルフオーラルヒストリー」ですね。

知る人ぞ知る事実ですが、高知県ではこの計画をもとに様々なアクションが進み、平成20年と平成30年の県民所得を比較すると、その上昇率は全国12%を大きく上回る20%くらいを叩き出しています。

私も数年前に2〜3度ほど高知大学や高知県の取り組みを調査に行ったことがあり、受田先生から直接色々とお聞きしていたので、地域協働学部の創設や土佐FBC(フード・ビジネス・クリエイター)、土佐MBA(まるごとビジネスアカデミー)、ココプラなど要所要所の取り組みはある程度は知っていたつもりでしたが、この本で初めて知ったストーリーやヒストリーも多くあり、大変勉強になりました。

ここでは以下、私が印象に残った言及を抜粋してみます。

・私の興味は計画にあるのではなくて、可能性の探求にある(p.17)※池田勇人首相のブレーン下村治氏の言葉

・産官学の究極の目標というのは、やっぱり地域を発展させる、持続可能なものにするという思いを一つにして、自らが当事者として身を粉なしにして協働していくという姿ではないでしょうか(p.25)。

・(委員会の)最後の回の時に、部会のトップの肩に一言ずつもらったんです。その時に、それぞれの人が「もう議論は尽くした」と言うんです。「後はやるのみ」って。ほとんど異口同音に皆さんが言われました(p.53)。

・(ユニークな活動ですが)具体的には、3つのレベルで活動を進めていきました。その3つというのは「義務教育スタイル」「予備校スタイル」「家庭教師スタイル」です(p.66)。

・(尾崎知事発の)「課題先進県」から「課題解決先進県」へと変わって行こうとする変革の意識、これも強烈強かった(p.71)。

・県の部長に大学の教員選考に入っていただく、これは多分画期的なことだったんじゃないかと思うんです(p.96)

・県がココプラをつくる時、知の拠点であり、人材育成の拠点であり、交流の拠点であると位置付けましたね。これはものすごい日々びてまして、なぜってこれ、大学の役割そのものでもあるんですね。大学でいうと、交流の拠点機能が実に弱いんです(p.122)。

夢がある人には希望がある。希望がある人には目標がある。目標がある人には計画がある。計画がある人には実行がある。実行がある人には結果がある。結果がある人には反省がある。反省がある人には進歩がある。進歩がある人には夢がある(p.143)。 ※一橋大学名誉教授の関満博氏の言葉。

・アメリカのシリコンバレーはIT企業の集積地ですが、高知県が課題解決の先進地tして、「ソリューション・バレー」なんて呼ばれて、世界の中心になることもあり得る(p.149)。

・「企業誘致」から「人材誘致」へ、そして、「人材育成」へ。

・LXの肝は、現状を変革するリーダーの存在です。リーダーなくしてLXは進みません(p.176)。

以上です。

欲を言えば、本書で再三出てくる尾崎前知事との対談やインタビュー、メッセージが欲しかった(読みたかった)所ですが、それは続編に期待ですかね。

ともあれ、地域創生、都道府県行政、行政計画、産業振興、大学連携、地産地消外商、人材育成、農林水産業、六事業産業などのキーワードに関心がある方にはぜひご一読をオススメしたい一冊です。

最後に、この本読んで真っ先に思った心の叫びを記して筆をおきたいと思います。

「久々にひろめ市場に行って、日本酒片手にカツオが食べたいぜよ!」

(参考)https://booksminami.thebase.in/items/53284363


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