見出し画像

2024 J1 第17節 湘南ベルマーレ vs ガンバ大阪 観戦記

いきさつ

 昨シーズンの対戦は忘れられないものだった。前半のうちに町野にハットトリックを決められ大敗。神戸戦での大敗以上に衝撃は大きく、あるいは昨シーズンの明暗を分ける一戦だったかもしれない。1年2か月後の同カード、今度こそ負けるわけにはいかないと決意を新たにする。が、それだけではない。

 山口智はどうか。阿部ちゃんは元気か。小野瀬と奥野は仲良くやってるか。福田の弟くんはどんなものか、鈴木雄斗も久しぶりやな、とまるで同窓会のような雰囲気をガンバサポは勝手に感じる。懐かしい顔に会いたくて。ここ数年、平塚に顔を出す動機だ。

レモンガススタジアム

 平塚はいつも天候に恵まれている印象が強い。むしろ暑い。今回も同様で日差しが思ったよりも強く、日焼けしそうな感じである。スタンドでさえこれだけ暑いのだから、プレーする選手たちはもっとキツイだろうと思う。そうなると、運動量を重視するサッカーは90分持たないかもしれない。後半まで縺れたらガンバ有利かも、なんて考える。

 湘南ベルマーレは今シーズンも苦しい戦いを強いられている。攻撃力はあるのだが失点が多い。自慢の攻撃力にしても、リードされてからの反撃で発揮されるので効率が悪い。先制を取れているゲームが5試合しかない上、先制点を取っての勝利は1試合。今シーズンのJ1の中で最も低い数値である。

 その湘南のスタメンには雄斗、章斗、淳之介のトリプル鈴木揃い踏み。負傷離脱の畑に代わって淳之介が左サイドバック?そんなタイプだっけ?とフォーメーション予想できないでいた。

ゲーム

 立ち上がりから湘南のメカニズムが回りだす。

 驚いたことに湘南は雄斗、淳之介、大野で3CBを形成し、岡本と杉岡がウイングバックのポジションを取る。捌ける選手を後ろに用意し、田中聡を含めた3枚で坂本と宇佐美のプレスを無効化して、サイドへ散らす。サイドではウイングバックとインサードハーフでガンバのサイドバックに対して数的優位を作る。そこからFWの一枚がサポートに入った場合は、縦突破からポケットを取ってマイナス方向へのクロスを狙う。

 サイドの攻防にダワンや徳真がサポートへ入ると、逆サイドのインサイドハーフがもう一枚のボランチを釣り出し、ポッカリ空いたバイタルへFWの一枚が下りてきて斜めのパスを受け、起点を作る。

 守備時は5バックを形成し、ガンバのウイングに裏を取らせないポジションを取る。そして2トップはDFラインへのハイプレスを控え、ボランチへのパスを制限する。裏へのロングボールを蹴らせず、中央での捌きも許さない対応を徹底することで、DFラインでのパス回しに終始させる。

 ガンバが無理やり差し込もうとするパスをインターセプトし、湘南エンジンが回る。ガンバのようなボール保持ではなく、ちゃんと崩してCKを取り切る。ガンバは有効な手を打てず対応に苦慮し続ける。用意してきたサッカーで、湘南がいつ得点してもおかしくない展開の中、しかし女神は気まぐれを起こす。

 湘南GKソンの出した相手は誰だったか。抜けてきたパスは鈴木徳真がダイレクトで山下へ繋ぐ。自分の席からは山下いったれと思ったけど、山下は冷静にもっといい位置にいた宇佐美を選んでダイレクトパス。誰もが息を飲むなか、右からのボールを宇佐美は難なく丁寧にゴールへ流し込む。呆気なくガンバが先制する。 

 後半に入っても湘南の攻勢は止まらない。

 ポヤトス監督が早々に動き、坂本を下げて倉田を入れる。真ん中の人数を増やしてボール保持を狙う意図なのだろうが、むしろ怒涛の湘南を防ぐための柵となった感があった。

 押し込まれたときは真ん中を厚くし、外を突破するのが今年のガンバ。
 ロングボール一本でウイングがラインの裏を狙う。ウェルトンへのボールは対処されたが、山下へのそれは湘南DFにとって難しいボールだった。クリアし損ねを宇佐美が拾い、一瞬タメて山下へスルーパス。山下に裏を取られたDFはPA内で突き飛ばしてしまう。主審が迷うことなくPKスポットを指す。宇佐美がきっちり決めて2点差。

 今シーズンのガンバはクリーンシートが7試合。湘南はビハインド状態から追いつくこと7回。最少失点の盾と、反撃能力の高い矛。ここから縺れさせていくのが湘南の真骨頂。

 まずはルキアンと阿部を投入。崩していく攻撃から、ルキアン中心の直線的な狙いに変更。正直なところこっちの方が怖い。この流れから連続してCKを奪い、最後はルキアンが決めて1点差。

 勢いづいて波状攻撃を繰り返す湘南。牧歌的なリズムの勇者湘南応援歌にさえ恐怖を覚える。ガンバも交代策で試合をコントロールしようとするが、波に乗る湘南を止められない。後半には運動量が落ちるとはなんと甘い観測だろうか。ひとたび湘南にボールが渡ると奪い返せずゴール前で凌ぎ続けるだけ。さらに数分あれば湘南は同点ゴールを決めていたかもしれない。もう10分もあれば点は入っていただろう。けれどもそのシーンが訪れる前にタイムアップ。ガンバが凌ぎきった。

チームレビュー

 このゲームは雰囲気もスタッツも湘南のゲームだった。戦術は嵌まっていたし、得点を決めるだけだったが、それが決まらない。対戦相手を分析し、攻守の策を授け、トレーニングできているのはよくわかる。なのに先制できたゲームは17試合中5試合。先制率が上がればもっと勝ち点が伸びるように思う。

 このゲームに関していえば、崩しを狙う前半よりもルキアンが入ってからの方がよほど危険だった。ゴールへ向かう意志を強く感じたのがルキアン後だったと言える。チームとして目的を達成するための手段に意識が傾いているのかもしれない。もうひとりくらいブラジル人がいればいいかも。

 ガンバはまるで思い通りにさせてもらえないゲームだった。PKを含めてシュート3本。ここまで押し込まれるとは思っていなかった。しかし、それでも勝てたのは大きい。こういうゲームをモノにできるのが強いチームだ。

 いっぽうでガンバ相手には本職のCBが一人いれば十分でファーストライン突破のメカニズムを回せたらゲームを支配できる、と示された。これをどう解決するか、それが今後の課題になってくるだろう。

まとめ

 1本のミスが勝敗を分けたゲーム。思えば昨シーズンの湘南戦もそうだった。そうしたミスを発生させないのもチームの力なのだと感じる。その点で言うと、今年のガンバは一森と中谷がしっかりと守備陣を統率し、安い失点がなくなっている。翻って湘南はあれほど支配をしながらもミスに泣く。それをカバーしあうのがチームなのだとしても、ミスが重なるとやはり勝ち点に響く。一森と中谷の加入でガンバが変わったように、かつては山口智がガミガミとガンバの守備陣を統率したように、チーム内には一定以上の厳しさが必要なのだろう。

 湘南の次節は名古屋戦。名古屋も先制率は低いが、先制したときは全勝と無類の強さを誇る。対策を練り、先制されてはならない。

 ガンバは柏との対戦。柏はよくわからないチームだ。連勝もあれば連敗もある。先制するのもされるのも程々。ただ、負けた相手は町田、鹿島、横浜といった上位のチーム。春先は守備の固いチームといった印象だったが、ここ最近は失点も多い。やはり先に失点しないこと。それが今のガンバを支えている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?