ジョージ・オーウェル『1984年』の山形浩生翻訳のKindle版をつくりました
ジョージ・オーウェル『1984年』の山形浩生翻訳のKindle版をつくりました。
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2023年11月25日、山形浩生氏のブログで完訳公開を知り、これは紙の本で読んでみたいとおもい、自費出版しようと思い立ちました。『1984年』はすでに読んだことがありますが、新訳がでたら、それも読みたくなるものです。つまり当初は紙の本をつくるつもりだったのですが、後述する事情があってKindle版に落ち着きました。
「天真楼文庫」というのは、今回でっちあげた文庫の名前です。杉田玄白の医学塾の名前にちなんでいます。いま気がつきましたが、プロジェクト杉田玄白と名づけられたのは、著作権保護期間が「過ぎた」と「杉田」をかけているのかしら。
この翻訳は、著作権の切れたいろいろな文章の翻訳文を公開する「プロジェクト杉田玄白」で公開されています。HTML版、LaTeX版、PDF版、Word版、縦書きのEPUB版がそれぞれ公開されていますので、無料で読みたい方はこちらからどうぞ。
翻訳文はクリエイティブコモンズ(CC BY-SA 4.0)で公開されているので、もちろんKindle版もおなじライセンスです。価格は無料でもよかったのですが、有料(490円)としました。ワンクリックでKindleに届く手軽さへの対価ということでご容赦ください。
Kindle版の不具合があれば、私までお知らせください。翻訳に関することについては、翻訳者にご連絡いただくのがよいとおもいます。
翻訳よみくらべ
翻訳者がちがうとはどういうことなのか。原文とほかの翻訳を比較してみましょう。冒頭のパラグラフを抜粋します。
原文
高橋和久訳(ハヤカワepi文庫・2009)
田内志文訳(角川文庫・2021)
山形浩生訳(2023)
いかがですか。あまり変わらないと感じる人もいるかもしれません。ここでおおきな違いは、センテンスの数ですね。原文とセンテンス数が一致しているのは、山形浩生訳だけですね。山形訳がもっとも原文に忠実な翻訳だとおもいました。冒頭部分は違いがすくないですが、読み進めていくと違いが際立ってきます。
許可とってやってるの?
「おいおい、人の褌で相撲を取ってるんじゃないよ」「許可とって商売してんのか」とお怒りの方もいらっしゃるとおもいます。
でもこれは、オープンに公開されているテキストなので、許可をとる必要ないのです。プロジェクト杉田玄白は、トップページに「リンクやコピーは黙ってどうぞ」と掲げているように、ライセンスにしたがう限り自由にしろと強く推しています。
なので許可どりは不要なのですが、できればスムーズにことをすすめたかったわたしは事前に訳者に連絡をとりました。連絡を嫌がられるか無視されるかのどちらかだろうと予想していたら、思いのほかすばやくご快諾いただけました。その後すぐに商業出版の話がでてきたので、紙の本として出そうとする計画はストップし、Kindle版としてリリースすることにしました。
Kindle版に切り替えるのは、ほとんど組版が終えていたInDesignの書類から、EPUBを書き出すだけです。楽勝だとおもっていましたが、数多くのトラブルに見舞われ、とても苦労しました。本文中の「補遺」のみ横組みにしていたのですが、Kindleでは縦組み、横組み混合だと読みにくく、すべて縦組みに統一しています。
商業出版されるそうです
上で書いた通り、今後商業出版されるそうです。刊行時には、より充実した訳者解説などがつくでしょう。同時にKindle版も出るとおもいます。
ブログにも追記されています。
この注意書きをみる限り、商業出版されるときには、サイトでの公開が停止ないし一時停止されるのかもしれません。
山形浩生さんには、なんと事前にデータを確認していただきました。また、Kindle版リリース時には、杉田玄白ページやブログにリンクを貼ってくれたり、Xポストでも宣伝いただいて、ありがたい限りです。
紙の本をつくる希望はまだもっています。商業出版とはちがった編集にチャレンジしようかと。たとえば、英語の勉強に役立てられる対訳版をつくってみようとおもっています。