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社会人野球とは

今日は私が監督を務める、横浜ベイブルースのことについてではなく、社会人野球とは何か、というところを書いていきたい。

毎年東京ドームで行われる全国大会「都市対抗野球」では満員御礼になるほどの人気だが、社会人野球は知る人ぞ知るという分野でもある。

その辺りを上手く表現できることを自分に期待している。

日本野球連盟と社会人野球チーム

一言で「社会人野球」と言うが、私がここで指す社会人野球は「公益財団法人 日本野球連盟(JABA)」に加入する全358チーム(2021年3月現在)のこと。
1949年に日本野球連盟の前身が発足し、現在は、後述する会社登録チームが97チーム、クラブ登録チームが261チームで構成されている。

硬式球、木製バットを使用した、日本ではNPBや独立リーグに匹敵する実力者がそろうという側面を持っている。(軟式球、金属バットの軟式野球とはまた違ったものだ。)

以下に日本野球連盟の基本理念を記しておく。

1.野球競技の普及振興を図り、人材を育成します
2.国民の心身の健全な発達に寄与します
3.国際交流と国際貢献を実践します

登録チーム

日本野球連盟には2つの種別のチームがある。
一つは会社などの法人や公共団体が加盟登録したチーム。
それを「会社登録チーム」と呼ぶ。
チーム名を挙げると、トヨタや日本生命、JR東日本、JFE東日本、神奈川県内だと、ENEOSや東芝、三菱パワーなど、名立たる大企業が名前を連ねる。
それぞれ、企業規模の大小、活動形態の違いはあるが、「野球も仕事の一部」となっている会社がほとんどである。
全国大会に出場するようなチームは、高校や大学で名を挙げた選手がこぞって入社、入部する。
だから、会社登録チームのトップクラスのレベルは、常にプロの選手たちと遜色がないと言っても過言ではないだろう。
私が大学を卒業後に所属したのも会社登録チームであったが、午前中は野球の練習をし、午後から仕事。という一日であった。もちろん、仕事のない土日も練習や試合に明け暮れ、全国大会やプロ野球選手という自分の夢を追ったものだ。

さて、もう一つがクラブ登録チームである。
私たち横浜ベイブルースもクラブ登録チームの一つ。
定義としては、「会社登録チームではないチーム」のことを指す。
つまり会社登録をしていない日本野球連盟の傘下のチームを指すのだが、これがまた多岐に亘る。
上述した会社登録チームと同様に仕事を斡旋したり母体となる会社に所属させながら有力選手を抱え、会社登録チームに匹敵する実力があるチームもあれば、仕事は別に持ち、休日の活動に有志で集まり活動を維持するようなチームもある。(私たちは、後者である。)しかし、クラブ登録チームのほとんどは、野球が仕事ではない。平日は仕事を目いっぱいして、帰ってきてから自主練を慣行。土日は近隣各県まで行動範囲を広げ練習や練習試合の日々。大会も平日開催が行われることもあり、野球をしたいという思いの他に自分の所属する会社や家族の理解や応援があってこその組織である。

社会人野球の大会について

三大大会を紹介すると、
「都市対抗野球大会」「社会人野球日本選手権」「全日本クラブ野球選手権」という三つの大会がある。
都市対抗も日本選手権も、各地方大会から、とてもレベルの高い試合が繰り広げられる。本大会でも所属企業の社員が応援に訪れたり、社会人野球ファンが観戦されたりと、多くの方に観戦していただける。トーナメント制で行われるため、会社を背負って戦う選手の気迫は分かっていても胸に来るものがある。
三大大会のもう一つ。名前の通り、クラブ登録チームのための「全日本クラブ野球選手権」。これはクラブ登録チームが目指す全国大会である。ほとんどのクラブ登録チームは、都市対抗野球とクラブ選手権への出場を目指すことになる。(一方でクラブ選手権で優勝すると日本選手権への出場権を得られる)私たちも「クラブ選手権出場」を最も念頭に置いて活動をしている。
私の主観ではあるが、クラブ選手権は全国大会であっても、残念ながらあまり多くの方に観ていただけない印象。そこが寂しいところ。

今後の課題

私は今後、野球界自体が縮小していくと考えている。
一流企業による社会人野球での活躍による広告効果は薄れてきていると思うし(もうすでに有名企業すぎて、野球の優勝で企業がさらに有名になるというレベルではないという意味)、会社にとっての「企業スポーツ」をどのように価値のあるものにしていくかというのは会社登録チームには必要な視点であると思う。(大きなお世話だろうが…)。各チームの努力だけでは、野球界の裾野を広げていく対応の限界が近づいているのではないだろうか。

一方のクラブチームも、野球をやる意味、野球をやる価値、というものを発信していく必要があると思う。
野球人口の減少、少子化、地球温暖化、感染症、天災や自然災害。。。
野球をするだけでも困難はとにかく多い。
それ以外にも、日本野球連盟の基本理念や活動指針に沿って、普及や振興を図りつつ地域への貢献もしていく必要があると感じている。
いま野球ができていればいいという都合のいい自分事ではなく、野球界全体を見通した危機感の目というのが必要ではないか、と感じている。

しかし、自分事でいっぱいいっぱいになってしまう事情も仕方のない側面がある。人がいない、場所がない、費用が足りない。各チームが抱える課題が深刻な場合も多い。
仕事とは別にチームの運営をしている人たちは、特に大きな負担がかかっている。自チームのことだけで野球界のことまで考えられないのが正直なところであろう。これ自体も課題と言える。

わたしの想い

こうして私が発信するのは、自分がやってきた野球界が廃れていってほしくないという思いからだ。
良くも悪くも野球界はすぐに変わらない。
古くから人気のスポーツであったがために、変化を嫌うし、新しい挑戦をすることに時間がかかる。だからこそ、個人の発信が生きると思っている。

もうプロ選手は個人の発信をどんどんしている。
アマチュアも上から言われたことを鵜呑みにして右向け右の時代は終わりにしていいのではないか。

個人の発信から多くの方にどれだけ興味を持っていただけるのか。
個人の発信からどれだけのことを変えられるのか。そこに尽きる。(もちろん変えなくていいこともある)

野球を「やらせてもらっている」という時代から、自分たちで創り上げて「やる」時代へ。

人の価値や興味は移ろうものだが、私の想いは、このチームの役職にいる限りは燃やし続けていこうと思う。


おわり

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