マガジンのカバー画像

哲学散文(哲学者の紹介、哲学的問題についての散文)

17
哲学の入門書的なエッセイ、散文、随筆 哲学初学者にはぜひ、1から読んでいただきたい
運営しているクリエイター

記事一覧

「西周」哲学散文16

名翻訳家 西 周「西 周」と書いて”にし あまね”と読みます。 中国の古代王朝ではありません。 端的に何をした人かと問われれば、彼の生前の肩書はたくさんありましたが、一般的な紹介でいえば啓蒙思想家になるのでしょうか。 私は西周の最大の功績は、"philosophia"を理解し、日本に持ち帰り、広めたことでしょうか。 そこで彼は当時の日本にはなかった概念"philosophia"を「哲学」と翻訳しました。 哲学散文2でも触れましたが、 上記の概念を「哲学」と名付けた

「福沢諭吉」 哲学散文15

明治期の教育革命家 福沢諭吉 福沢諭吉(1835-1901)について、どんなイメージを持っていますか? 私なんかもそうですが、「THE 一万円札の人」といったイメージが強いです。 ほかには、 「慶應義塾大学の創立者」 「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずと言えり」 と言った人 いかがでしょうか。 福沢諭吉については、日本人で知らないものはいないほど超有名人物であり、私が紹介するまでもないと思っています。 しかし、この「哲学散文」において、とりわけ日本の近代

日本思想史 ~神話から江戸時代まで~  哲学散文14

はじめにこれまでの哲学散文では西洋哲学と東洋思想を中心に見てきました。 ここまできてようやく日本に入ります。 私もようやく日本に入れる・・・と どこか感慨深げであります。 私自身の本来の専門というか得意分野はやはり日本思想 とりわけ日本近代哲学(明治期以降)になります。 そこに早くいきたいがために神話から江戸時代までを1記事にまとめることどうかお許しください。 本来であれば古事記から聖徳太子、日本仏教の各宗派の開祖、それから武士道を細かく見ていきたいのですが、いかんせん

「ヘーゲル」哲学散文13

「理性的なものは現実的であり、現実的なものは理性的である」この言葉を残したのは、ドイツ観念論哲学の頂点に立つゲオルク・ヴィルヘルム・フリードリヒ・ヘーゲル(1770-1831)です。彼の思想は、時に難解で近寄りがたいものとされますが、その核心には私たちの日常や社会、そして歴史全体を貫く深遠な洞察が潜んでいます。 ヘーゲルの哲学は単なる抽象的な観念の遊びではありません。 それは激動の時代を生きた一人の思想家が、世界の本質を捉えようとした壮大な試みなのです。 フランス革命の余波

「カント」哲学散文12

理性の光で世界を照らすカント哲学18世紀のプロイセン王国の都市ケーニヒスベルク。 バルト海に近いこの街で一人の哲学者は生涯のほとんどを過ごしました。 日課の散歩は市民が時計を合わせるほど正確だったと言われています。 規則正しい生活の中で、彼の内面では壮大な哲学が繰り広げられていました。 カントの生涯イマヌエル・カント(1724-1804) 1724年ケーニヒスベルクの馬具職人の家に生まれました。 ピエティスト(敬虔主義者)の母のもとで、禁欲的な生活と勤勉な学問的姿勢を身につ

「幸福を哲学する」哲学散文特別編

プロローグ ~幸福の迷宮へようこそ~朝、目覚めたあなたは幸せですか? 希望とともに目覚められていますでしょうか。 あなたはスマホの画面を覗き込み、SNSでインフルエンサーの投稿を眺めて日々何を感じるでしょうか。 「おいしそう」「幸せそう」「私もやりたい」 しかし、スマホを眺めながら、ふと立ち止まってみてください。 「本当に同じことをやりたいのか」、「これが私の幸せなのだろうか」と。 私たちは皆、気づかぬ内に幸福を追い求めています。 しかし、その「幸福」が何なのか、実は

「スピノザ」哲学散文11

はじめに今回の哲学散文では17世紀オランダの哲学者バルーフ・デ・スピノザ(1632-1677)について取り上げていきます。 スピノザは近代哲学者たちの中でも特異な存在です。 彼の思想は伝統的な宗教観を根底から覆し、新しい神の概念を提示しました。同時に人間の本質や自由、そして幸福について深い洞察を与えてくれます。 前回のジョン・ロックとは対照的に、スピノザは徹底した合理主義の立場をとります。 彼の哲学は数学的な厳密さで構築された体系であり、その思想の深さと独創性は現代にも大きな

「ロック」哲学散文10

イギリス経験論の父近代西洋哲学の父デカルトに続き、今回はイギリスの哲学者であるジョン・ロック(1632-1704)を取り上げます。 彼は「イギリス経験論の父」と称されており、デカルトの合理主義とは対照的な立場を示しています。 彼の思想は認識論、政治哲学、宗教的寛容など多岐にわたり、現代社会の基盤形成に顕著な影響を及ぼしているといえるでしょう。 ロックが提唱した経験論は、知識の形成過程についてデカルトとは全く異なる見解を示しています。 デカルトが生得観念や純粋思考による真理の

「デカルト」哲学散文9

近代西洋哲学の父「デカルト」はじめに 哲学散文をシリーズで読んでいただきありがとうございます。 これまでは古代ギリシャ哲学の源流を学び、中世の神学的な考え方を探り、そして東洋思想の釈迦と孔子に触れてきました。 これらの思想は人間とは何か、世界はどのようにできているのかについて、時代は違えどそれぞれユニークな哲学や思想を提供してくれています。 今回はその新たな一歩として、近代西洋哲学、特にその父と呼ばれる ルネ・デカルト(1596-1650)の思想に目を向けてみましょう。 「

「論語」哲学散文8

東洋最強の哲学書「論語」論語は中国の春秋戦国時代に活躍した思想家である孔子と弟子たちとの問答の記録を弟子たちがまとめた書物です。孔子の教えを記録した論語から儒教が生まれ諸子百家といわれる多くの思想家を生み、古くから東アジアの国々で広く読まれ、人々の生き方に大きな影響を与えてきました。 では、なぜ論語が東洋で最強の哲学書と言われるのでしょうか。その理由を探ってみましょう。 時代を超えた普遍的な教え 論語の教えは、2500年以上前のものでありながら、現代社会にも通じる普遍的

「孔子」哲学散文7

東洋思想の二大巨頭の二人目「孔子」東洋思想と言えば、インドの釈迦とならび称されるのが中国の孔子です。孔子は、紀元前6世紀から5世紀にかけて活躍した思想家・教育者であり、儒教の祖として知られています。孔子の教えは「論語」という書物に集約され、日本はもちろん東アジアの国々に広く伝えられ、道徳観、政治思想、教育理念など、様々な側面で大きな影響を与えてきました。 孔子が生きた春秋戦国時代の歴史的背景を踏まえながら、孔子の生涯をたどります。そして、孔子の思想の核心である「仁」の概念を

「釈迦(ブッダ)」哲学散文6

東洋思想の二大巨頭の一人「釈迦」東洋思想を語る上で、仏教の開祖であるお釈迦様(ブッダ)の存在は欠かせません。東洋思想の世界に足を踏み入れると、そこには常に釈迦の存在が感じられます。仏教の開祖である釈迦は、人間の苦しみの本質を見抜き、そこから解放される道を説きました。釈迦の思想は、インドから中国、そして日本へと伝わり、アジアの精神文化に計り知れない影響を与えてきました。今回は、釈迦の生涯と思想、そして釈迦の教えが後世に与えた影響について、詳しく見ていきたいと思います。 釈迦の

「東洋思想・哲学」哲学散文5

西洋哲学から東洋思想へこれまでの哲学散文では、主に西洋哲学の流れを追ってきました。古代ギリシャのソクラテス、プラトン、アリストテレスに始まり、中世哲学、そして近代へと続く西洋の思想史は、私たちに深い洞察と示唆を与えてくれます。しかし、哲学の世界は西洋だけに限定されるものではありません。東洋の豊かな思想の伝統を視野に入れることで、より立体的で包括的な哲学的探求が可能になるのです。 東洋思想の特徴東洋思想は、インド、中国、日本など、地域によって多様な形で発展してきました。しかし

「西洋中世哲学」哲学散文4

信仰と理性の調和を求めて西洋中世哲学は、キリスト教神学と古代ギリシャ哲学が出会い、融合する中で生まれました。中世の哲学者たちは、信仰と理性の調和を目指し、人間や世界、神についての深い洞察を遺しました。その思想は、現代にも通じる普遍的な問いかけに満ちています。 キリスト教の世界観キリスト教の基本的な教義 中世哲学を理解するためには、まずキリスト教の世界観について知ることが重要です。キリスト教は、ユダヤ教から生まれた一神教の宗教であり、イエス・キリストの教えに基づいています。