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[Lisztomania!] Case3:イギリスとB級音楽の話

各地に生息する音楽好きの方々にそれぞれの音楽遍歴や音楽にまつわるあれこれについて
お話を伺う連載企画です。

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 はじめにこの企画を思いついたときから、最初の3回まではインタビューしたい人をあらかじめ決めておいた。3人目はいつも熱心にレコードを探し、DJではツボを押さえた幅広い選曲で楽しませてくれるyokoさん。音楽の聴きかたに興味を持っていたのと、信頼を寄せている女性にぜひ出てほしいと強く思っていた。今回はyokoさんが若い頃に住んでいた地元・埼玉に昨年オープンしたという素敵なお店を紹介してもらい、そこで話を伺った。

 川越市の霞ヶ関駅から少し離れた風情のある商店街を奥まで進むと、雑貨と音楽を扱うお店「amist」が現れる。小さな店内の手前にうつわなどの陶器や雑貨や、コーヒーなどが飲めるカウンター、奥にレコードやCDを扱うスペースがあるのが面白い。音楽はギターポップやソフトロックなど洋楽が中心で、自由に試聴が可能。よく見ると新旧問わず雑多なセレクトなのに、居心地のよい空間のなかに綺麗に収まっているところにこだわりとセンスを感じる。楽しい談話のおかげで、またひとつ嬉しい出会いがあった。


雑貨と音楽 amist

〒350‐1109 埼玉県川越市霞ヶ関北4-22-14
東武東上線『霞ヶ関』駅下車 徒歩13分  

〜Case:3 yokoさんの話 

──まずはyokoさんが音楽を聴きはじめた時期やきっかけを教えていただきたいです。

yoko きっかけねー。うちは親が全然音楽を聴かなかったから、レコードはあったんだけど演歌とか、歌謡曲とか、映画音楽とか、当時の私が興味を持つようなのはなくて、記憶に残ってるのだと私に買ってきてくれたのはピンクレディーかな。幼稚園の頃に。

──yokoさん自身が音楽に目覚めたというか、レコードに興味を持ちはじめたのは?

yoko 自分から聴きはじめたのは歌謡曲だね。覚えてる限りだと、自分でレコードとカセットテープを買ったのは小学校4年生ぐらいで、聖子ちゃんの次の代くらいからの82年組。

──誰がいちばん好きでした?

yoko 私は小泉今日子とか、女の子のアイドルばっかり。

──キョンキョンは意外だね。もうちょっとアンニュイなのだと思ってた。

yoko それはもう少しあとになってからだね。

──きっかけはベストテンとかのテレビを観て?

yoko そうそう。ただひたすらテレビで観たり、録るだけ。小学校5年か6年あたりでチェッカーズで、テレビの中で見たミュージシャンっていうのだと、音楽番組でYMOが出てきたのは覚えてる。でも私、チェッカーズとかサリィは全然通ってないんだよね。まったく聴いてなかった。

──じゃあほんとに女の子のアイドルばっかりで。

yoko いま思うとそうだね。でもそんなにすごく興味を持って聴いてなかった。中学はね、周りはみんな尾崎豊だったけど私はそれは聴かず、中2ぐらいで私はBOØWYとかストリート・スライダーズを聴いてた。ちょうどEPICソニーがバンドに力を入れはじめた時期で、友達はバービーボーイズとかその辺を聴いてたね。あと埼玉だからハウンド・ドッグがね……。人気ありましたよね?

amist安井 うちの姉が大好きでした(笑)。

──ハウンド・ドッグって埼玉なの?

yoko 大友康平の地元なの。中学の先生が、自分は大友康平の同級生なんだよ、とか自慢するわけ。だからみんな聴いてた(笑)。あとはレベッカとか。でもいま思うと、あの人たちってみんな洋楽の影響をもろに受けてるんだよね。

──そのときはわかってなかったけど、だよね。

yoko そうそう。C-C-Bとかね。あの人たちって元々はビーチ・ボーイズとかの影響を受けてて、そこから歌謡曲路線にシフトチェンジして売れたんだよね。中学生の頃はテレビっ子だったから「夜のヒットスタジオ」とかそういうのばっかり観てて、そこからデッド・オア・アライブみたいな洋楽を知ったけど、でも私、ニューウェイヴは全然聴いてなくて、洋楽をちゃんと聴きはじめたのは遅かった。

──その当時はニューウェイヴは通ってなかったんだ?

yoko 通ってないの。クラスの子は多分カルチャー・クラブとかアーハを聴いてたから、もしかしたらカセットテープはダビングしてもらったのかもしれないけど、積極的には聴いてなかった。

──へえー。私よりちょっと年上の人って、ニューウェイヴから洋楽に入る人が多いでしょう?違うんだ。バンドブームが高校生くらい?

yoko そうだね。イカ天よりちょっと前にブルーハーツを知った。本屋さんに行って『宝島』を見つけたら表紙がブルーハーツで、テレビに出てたあのバンドだ!と思って買ったのが確か中学3年生くらいだった気がする。それからかな、今まで知ってた音楽と全然違うのが載ってるなーって思って、貸レコード屋に行って借りたのは。

──どういうのを借りてた?

yoko 川越に貸レコード屋があって、そこが結構インディーズを置いてたから、『宝島』とか音楽の雑誌に載ってるものはとりあえず聴いてみようと思って借りてた。ブルーハーツもそうだし、当時バンドブームって呼ばれてた人たちもだね。あとやっぱり学校に音楽に詳しい友達がそんなにいなかったから、あの子と話が合いそうだから友達になってみなよって、音楽好きな子を紹介してもらえるのね。その子にテープを貸してもらったりとか。

──川越の貸レコード屋は何ていうお店?

yoko G7っていうお店。もうなくなっちゃったけどね。川越の人の中では有名だと思う。そこか、ここ(amist)の最寄り駅の霞が関にYOU&Iがあって、そこは自転車に乗って借りに行けた。G7は電車に乗らないと行けないから、中学3年か高校生になってから借りに行ってた。

──じゃあずっと買わずに借りてる感じ?あんまり買わなかったんだ?

yoko うん。お金がないから買えなかった。アルバムは3000円するでしょ?高くてなかなか買えないからずっと借りてたね。

──テープの貸し借りで友達もできた感じ?

yoko 高校生のときにライブハウスに行きはじめて、そこで知り合った人たちにも借りてたね。高校生のときに洋楽はスペシャルズ、XTC、ネオスカ、2トーン……。だからUKだよね。カルチャー・クラブの頃はまったく聴かなかったからそこを飛ばして、UKパンク、ピストルズでしょ、クラッシュとかバズコックス、それからラモーンズとかのニューヨークパンクにいった。

──日本で似たようなことをやってるようなバンドは全然聴いてない?

yoko あんまり聴いてないの。そこは結構わけて聴いちゃってたっていうか。

──日本のバンドが取っ掛かりになってそこから洋楽へ、でもないんだね。

yoko その辺が曖昧なんだよね。でもそれで言ったらレピッシュかもしれない。レピッシュが好きで仲良くなった子がXTCとかスペシャルズを貸してくれたんだ。それかもしれないね。イギリスの音楽にいちばん最初に触れたのは。

──なるほど。それはすごくわかりやすい。ライブハウスはどこに行ってたの?

yoko いろんなライブハウス。埼玉だから大宮フリークスとか。誰が目当てってわけじゃなく、誘われればどこでも行ってた。有名な人が出ると観に行こうよって誘われるから、チケット持ってなくても行って、ただ周りでうろうろしてたりとか(笑)。

──何かやってるからとりあえず行くみたみたいな(笑)。

yoko ほんとにミーハーで(笑)。あ、でもね、高校生のときにはもう新宿ロフトと渋谷ラママに行ってた。友達に会いに行くって言ったら変だけど、そんな感じだった。

──じゃあ結構そういう場所で人と交流を深めていったの?

yoko そうだね。顔見知りになったりしてた。そのあとスペシャルズからスカに入ってスカタライツ。私の年代の人って全部が同時進行なの。1つのジャンルをずっと聴いてるわけじゃないから。あとは60sに入るきっかけだと、やっぱり渋谷系の前って言われてるネオGSかな。

──yokoさんはそのネオGSと渋谷系の狭間くらいの世代?

yoko うん。知ったのはその終わり頃だね。高校生だからわかんないし、そういうシーンがあったんだって感じ。ストライクスとか、もろマージ―・ビート。その辺を聴きながらさっきのスカ、パンク。高校生のときにフリッパーズでしょ、コレクターズ、スカパラ。で、高校生くらいだとみんな大体ね、レピッシュ聴いてた人たちがそっちに流れて、そのままスカにいく人と、違う方面にいく人がいて、まずファッションが変わるの。レピッシュのライブに行ってたときに中学の頃の友達に再会したら、その子が私立のお嬢様学校で、高校生なのに全身アニエスベーとかで(笑)。ヴィヴィアンもいたかな。結構みんなお洒落で、すごいなーと思ってた。ビートパンクに興味が薄れてそっちに流れていって、私もなんとなくライブハウスで観てたようなバンドは聴かなくなって、別にやめたってわけじゃないけどまあ自然とそうなるよね。で、レピッシュで知り合った友達がだんだんライブハウスに飽きちゃって、クラブに行きたいって言いはじめて、じゃあロンドンナイトに行ってみようよって話になって。それで調べて行ってみたのが新宿のミロスガレージ。のちのワイヤーね。

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──なるほど。それが90年頃だよね。レコードを買いはじめた時期は?

yoko それがその時期かな。18歳か19歳。だから遅いでしょ?意外だってよく言われる。

──じゃあお金が入るようになってからだよね。急に火がついた感じ?

yoko 火がついたのかな?わかんないけど、あるお店で働きはじめて、そこで働いてる人たちが音楽が好きな人たちばっかりで、それぞれ好きなものを持ってきてたから、そこに何でも置いてあったの。例えばニック・ケイヴとか、ニュー・オーダーとかもあったかな?カセットをダビングしたのも、レコードも、CDも、結構なんでも片っ端から貸したり借りてて、一気に20枚ぐらい借りれた。

──レンタル屋さんの代わりだ。

yoko そうそう。ほかの人から借りてテープで聴いてばっかりだとあとでまた欲しくなるから、結局買いなおしてたけど。テープを編集して作ってきてくれる人がいたんだよね。

──昔はコンピ盤みたいなのがいっぱい出てたから、それの真似していろんな曲をいっぱいカセットに詰めて渡したりしてたよね。

yoko してた。職場に置いてあったテープには、ほとんどのジャンルがあったの。大貫憲章さんのテープなのかはわからないけど「ロンドンナイト」っていうタイトルのテープが置いてあって、それにパンクでしょ、ハノイ・ロックスとかも入ってるし、GS、ネオロカ……。ギター・ポップはさすがに入ってなかったかな。やっぱりちょっと違うんだろうね。ロンドンナイトではかかってたけど。その職場のちょっと歳上のお姉さんで、元々はロカビリーとかスカが好きで、UKロックにハマってイギリスのフェスに行きはじめちゃう人がいて、フェスに行くためにお金を稼いでからしばらく向こうに行って、お金がなくなったらまた帰ってくる感じで。その人が置いてたテープの中に、ワンダー・スタッフとか90〜91年のUKものが入ってた気がする。

──いい職場だね。それはすごく恵まれてる。

yoko そうなんだろうね。私はまだあんまり持ってないからとりあえず借りるだけ。いきなりさ、ニック・ケイヴなんてわかるわけないじゃん?(笑)。ノイバウテンもあったよ。ニック・ケイヴ好きのお姉さんがモリッシーが大好きで、そこでスミスも知った。あとは友達の家に遊びに行ったら彼氏がパンクからスカに入った人で、レコードがたくさんあったのね。その彼氏から私がレコードを借りてた(笑)。

──直々に(笑)。

yoko ダビングするの面倒だから持ってっていいよって。ミルク・シェイクスとかのガレージはそこで貸してもらったと思う。ネオロカもだったかな?記憶が曖昧だけど。ネオロカはポール・キャッツとか、やっぱりイギリスが好きだったね。ローマン・ホリデイとかちょっとニューウェイヴが入ってるような、洗練されたロカビリーが好き。ストレイ・キャッツとかはあんまり聴いてなかった。あとは60sものだと、ネオGSの人たちが多分こういうの参考にしてるんだろうなと思って、スモール・フェイセス、キンクス。ビートルズは大人になってから全部聴いたけど、もうちょっとB級っぽいほうが好きっていうか、王道が苦手で、ビートルズだったら私はキンクスかなと思って。

──それはもう最初から?

yoko うん。なんだろう?めちゃかっこいい!ってそれだけなんだけど。スモール・フェイセスはルックスもかわいいし(笑)、聴きやすいしっていう。

──見た目も大事?ファッションも?

yoko そこまでではない。最初にやっぱり音。まあお洒落ならいいかなっていうのもあるけど、音ありき。話が戻るけど、その職場にはクラバーもいたし、ランキン・タクシーとか有名なレゲエのイベントに行く人もいたんだけど、でもそういう人たちも絶対ロンドンナイトには行ってたんだよね。

──その世代の特徴なんだ。

yoko そう。でね、川越に、私が昔、友達に誘われて行ってたライブハウスのようなクラブのような小さいハコがあって、ロカビリー、GS、歌謡曲もかかるようなイベントがあったの。で、あとから知ったんだけど、私が高校生の頃に、原宿のロカビリー界隈で有名な人たちが川越でもロッカーズナイトっていうのをやってたっぽいんだよね。だからいま思うとそれがロッカーズナイトっていうイベントだったのか、そこから枝分かれ的にはじまったものなのか、とにかくその辺の人たちがやってたみたいで。床がチェッカー柄で50sっぽくて、ほんとに狭いバーみたいなところ。高校生だから終電までには帰ってたけど。

──へえー。埼玉にもあったんだね。

yoko それからレピッシュで知り合った友達がだんだんライブハウスに飽きちゃって、クラブに行きたいって言いはじめて、じゃあロンドンナイトに行ってみようよって。で、調べたら新宿のミロスガレージってところでやってるらしいからって行ったのが、のちのワイヤーね。ツバキハウスは全然知らないけど。でも当時ってみんな何でも行ってた。あとはギターポップのイベントに行きながらクラブスカとか、そういうのが可能だったっていうか、ひとつのジャンルに固執してなかった。

──そうだね。興味があったら何でも行くっていうか。

yoko オールジャンルのイベントも多かったしね。ヒップホップやテクノは私は行ってないけど。

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──じゃあyokoさんの好きなジャンルは?って聞かれたらなんて答える?

yoko えー難しい。でもイギリス全般。もちろんほかの国の音楽も好きなのたくさんあるけど。

──イギリスのどこが好きですか?

yoko どこだろう?ちょっとひねくれてるところ?あとB級感っていうか。暗いところとメロディーが泣き入ってるのが多いところ。

──メジャーな感じの人はあんまり好きじゃない?例えばプライマル・スクリームとか。あんまり名前が出てこないよね。

yoko 好き。大好きなんだけど、でも正直いうと『Screamadelica』以降はそこまで……(笑)。

──私は『Screamadelica』から入ったからドンピシャなんだけど、私より歳上の人って『Screamadelica』以降は聴かなくなったってみんな言うよね(笑)。

yoko 言うねー(笑)。でも私もいちばん最初に聴いたのは『Screamadelica』だったよ。なんでかっていうとマンチェスターにどハマりしたから。さっき言ったフェス好きのお姉さんもプライマルも好きだったし、あとはやっぱりフリッパーズ・ギターの3rdがもろにそうじゃない?でもそれも別に元ネタだから聴こうって感じでもなく。

──そこは同時進行だったもんね。

yoko 当時の『宝島』を持ってきたから、これを見ながら喋ってもいい?このページがね、面白かった。私がリアルタイムでぎりぎり間に合ったあたり。ここに載ってるのは大体聴いてたよ。

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──「92年新世代バンド白書」。ストーン・ローゼズ、ハッピー・マンデイズ、フィッシュボーン、シャーラタンズ。マイブラは"ソニック・ユースのメンバーから「マネるだけでオリジナリティなし」とあっさり切られはしたものの……"って書いてある(笑)。あとライド、ブラー。ここに載ってる人たちは今でも残ってるバンドが多いね。

yoko この頃がいちばんリアルタイムでイギリスの音楽を意識して聴いてたね。チャプター・ハウス、カーターUSM、メガ・シティ・フォー、ワンダー・スタッフとか、プライマルもそうだし……。この特集に当時の聴いてたものすべてが入ってる!ってさっき読み返して思ってた。『宝島』は音楽のページが面白かったから好きだった。捨てられなくてたくさん取っておいてあるよ。ボロボロだけど(笑)。

──『宝島』は今となっては貴重だよね。

yoko で、ここから私は自分が中高生の頃に聴いてなかった80年代のネオアコとか、C86って言われているインディーポップにさかのぼっていくのね。93年ぐらいからはリアルタイムの音を聴きながら、同時に。

──そこでさかのぼるんだ?それは何かの影響?

yoko うーん。一応その頃は友達とイベントをやらせてもらったり、ネオアコとかインディ―ポップのイベントに遊びに行ったりしたのもあったかも。

──イベントをやるようになって、音楽の幅を広げていった感じ?

yoko そうなるのかなあ。あとはひたすら気になるのを買ったり。名前を知ってて雰囲気がよさそうだったら何でも買ってたよね。お金はないけどCDもレコードも安かったから、中古屋さんに1回行ったら20枚くらいは買って、ひたすら家で聴くみたいな(笑)。

──新宿とか渋谷まで行って買ってた?

yoko うん。行ってたし、まあ埼玉だから新譜はこの近辺とか。でもあんまりお店がなかったからなあ。

──イベントはどんな感じでやってたの?

yoko 私はべつにDJやりたいとかそういうのはなかったんだけど、中古屋で買いはじめた頃にレコードプレーヤーが壊れちゃって、CDしか買わなくなった時期があったの。それでしばらくCDで買ってたんだけど、19歳くらいのときに急にやっぱりレコードに戻そう、って思ったのね。何となくこの音楽を聴くならレコードのほうがいいなと思って。そのときに買ったのがパステルズの『Sittin' Pretty』なの。で、その日のうちにビックカメラかどこかでレコードプレーヤーを買って、持って帰った(笑)。

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──その日のうちに?すごいね。

yoko それは覚えてる。パステルズがアノラックとかそっちに入るきっかけになったバンドだね。で、その頃に友達の紹介で知り合った人が、確か大宮か浦和あたりでやってたイベントでパンクのDJをやってて、レコード持ってるならDJやる?って誘われて、そのときに私はジーザス・ジョーンズをかけた(笑)。

──へえー。何の曲?

yoko 『Liquidizer』って1stだっけ?その頃の。曲名は忘れたけど。あとはダイナソーJr.のまだルー・バーロウがいた時代の『Green Mind』より前のやつ。何でもいいよっていわれたから、ビースティ・ボーイズもかけてたかも。めちゃくちゃでしょ?(笑)。オールジャンルだし、そういうのかける人がいなくてちょうどいいからって感じだった。

──じゃあUKっていうよりほんとに何でもありだね。

yoko その頃はミクスチャーとかグランジも流行ってたしね。そう、だからマンチェ、アシッドジャズ、その辺りはオンタイムで全部通ってる。間に合ってないのはネオアコ、アノラックとか、ネオモッズとか、80年代のあの辺りの音だね。フレンチはフランス・ギャルのコンピからかな。

──昔の音楽をさかのぼったのはイベントをやってたのもあるってさっき言ったでしょ?

yoko うん。でもDJで使うために買うわけではなかった。レコードが安かったの。今なんて7インチが1600円もするでしょ?当時は590円とかだったから。その頃は急に大型レコード店が9割くらいCDに変わって、アナログを全然売らなくなったことがあって、どんどん隅に追いやられちゃって、池袋のWAVEにも全部なくなっちゃったから店員さんに聞いてみたら、もう取り扱ってないですよって言われて。じゃあどこで買ったらいいんだろうって思って、そこから新宿のラフ・トレードとか、ヴィニール・ジャパンとか、渋谷のゼストに行くようになった。あとは新宿アルタのシスコとフリスコにも行ってた。

──じゃあそれからはずっとレコードなんだね。

yoko ただ好きだから買いたいっていう気持ちしかなかったかな。DJのためではなかった。今はそんな感じになっちゃってるけど(笑)。だって今はサブスクで聴けるじゃん。当時はYouTubeもないし、音楽番組もBEAT UKくらいしか観てなかったし。BEAT UKはさっき言った職場のお姉さんが観てて知ったのかな?とにかくみんなUKにシフトしてたよね。

──まあその頃はUKの時代だったよね。

yoko あとストーン・ローゼズも好きだった。

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──みんな好きだよね。でもストーン・ローゼズはその頃は活動してなかったんだよね。レコード会社と揉めてる話と、新譜はいつ出るんだって話だけが雑誌にいつも載ってて。

yoko そうそう。私もちょうど1stと2ndのあいだで聴いてたから、次はいつ出るんだろうと思ってた。でも『Second Coming』の頃のライブはチッタで観た。ドラムがアジズの頃ね。2ndの前に出たシングルも西新宿に買いに行った気がする。でもその情報もどうやって得たんだろう?だってネットなんてないし、雑誌の情報なんて1か月後とかだよね。口コミ……?

──レコード屋に行けば何かしら情報があったよね。でも今になってみて、なんで当時あんなに知ってたんだろう?って思うことはあるね。多分『宝島』とか雑誌の小さな記事もそうだし、レコード屋に置いてあるチラシみたいなちょっとしたものでも何かしら情報を得らたんじゃないかな。

yoko フリーペーパーと雑誌のあいだみたいなものもいっぱいあったしね。多分その人たちが現地からの最新の情報をもらって書いてくれてたから知れたんじゃない?

──伝え聞きみたいな感じでね。だからニセ情報も入るよね(笑)。

yoko そうそう。誤情報だらけかも。あとはベックとかのローファイ系、ブリットポップ、ビックビート、スウェデッシュポップ、デジタルハードコア辺りはリアルタイムで無事に通れた。でもヒップホップ系はあんまり通ってないんだよね。スチャダラパーとかビースティは聴いてたけど。東京No.1ソウルセットは初期を聴いてた。

──yokoさんにとっての重要な3枚を選ぶなら何になる?

yoko うーん。選べなくて。とりあえず持ってきたのは……。

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・Bandwagonesque/Teenage Fanclub
・Trees and Flowers/
Strawberry Switchblade
・In the City/The Jam

──そうだ。yokoさんはティーンエイジ・ファンクラブだったね。

yoko うん。やっぱりティーンエイジがいちばん好きかもー(笑)。

──ずっと好き?

yoko 好き。でも今はジェリーがいなくなったからちょっと……。いまだに信じられなくて(ベースのジェラード・ラヴは2018年に脱退)。「Star Sign」がいちばん好きだったんだけど、これがジェリーの曲だから。でももうノーマンかレイモンドの曲しかやらないのかなあと思って。代わりに誰かが歌えばいいけど……やらないか。曲のテイストが違うし。

──そこがはっきり分かれてたから、今さらもうやらないかもね。来日したときにサインをもらったんだっけ?

yoko そう。これが『Grand Prix』の来日でジェリーにサインをもらったやつ。私は『Bandwagonesque』の頃の初来日は行ってなくて、2回目の『Thirteen』の頃と、3回目の『Grand Prix』の頃の来日。確かドラムがブレンダンじゃなくて、元スープ・ドラゴンズのポールだったんだよね。でも熱心に聴けたのは『Grand Prix』までかな。

──でもサイン貰うくらい好きだったんだね。yokoさんってあんまり人に対してのめり込んだりしないのかなって思ってた。女の人ってわりと音楽を好きになると、人に対しても「かっこいいー!」って強くのめり込んだり、目を輝かせるような傾向があるけど、yokoさんってそういうのがあんまりなくて、どっちかっていうとレコードを買ってるほうが好きなんだろうなって思ってたの。

yoko でも確かに異性として見たりとか、王子様みたいな対象として見ることはないかもね。好きだし、ミーハーだからサイン貰ったり、写真撮ったりはするよ(笑)。するけど、ほかの人より薄いのかも。あとはこのストロベリー・スウィッチブレイドがさ、いわく付きのレコードで。スコットランドで買ったんだけど、本当は「Trees and Flowers」のシングルなのに、中身のレコードはアルバムが入ってたの。

──えー!

yoko イギリスの中古屋さんって貴重盤じゃなくても中身が全部抜いてあるんだよ。だから中身はレジで入れてくれるんだけど、アルバムと「Trees and Flowers」の7インチがおまけで付いてるやつだから、店員さんが間違えたんだよね。日本に帰ってきてから気付いて。

──そんなことあるんだ。じゃあアルバムのほうにきっと「Trees and Flowers」の12インチが入ってるんだ(笑)。それはいつ頃の話?

yoko いつだろう?2回目にイギリスに行ったときで、レコード屋さんにベルセバのポスターが貼ってあったから、99年くらいかな。「Trees and Flowers」はフリッパーズの元ネタだよね。

──有名だね。そしてジャム。ジャケットがかっこいいね。スタイル・カウンシルよりジャム?

yoko スタカンも好きだけど、先に聴いたのはジャムだね。日本のバンドがジャムに影響を受けてるバンドが多かったから。

──この3枚を選んだ理由は?

yoko うーん。やっぱりこの3つがいちばん自分の柱かな、と思って。ほんとはもっと入れたいものもあったけど、絞ったらこれになったって感じ。あとほかにも持ってきたのは、90年代半ばの再発ブームのときに買ったロジャー・ニコルス。〈レキシントン〉が日本で再発をしてくれてたんだよね。それでこの辺りのソフトロックは恩恵にあずかって買えた。その頃は来月のイベントでも一緒にやらせてもらう橋本徹さんの『Suburbia Suite』を読んだりとか、あとは〈トラットリア〉がフリー・デザインをCDで再発してくれてたよね。60年代のものはまだそんなに聴けなかったし、ありがたかった。

──それまでは本当に限られたものしかCD化されてなかったもんね。

yoko あとこれはコンピね。92年の『Independent Top20』。多分インディーチャートの上位の曲がそのまま入ってる。これは確か新宿のシスコで買ったかな。

──カーヴ、デイジー・チェインソー、あ、少年ナイフも入ってるんだ。最後はパステルズか。こっちは『Fab Gear』だね。これはモノクローム・セットもモーマスも入ってるもんね。

yoko やっぱり『Fab Gear』が当時の人が洋楽に入るきっかけなんじゃないかな。〈エル〉を意識してたんだろうね、いま思うと。〈エル〉のレコードも持ってきたよ。安かったんだよね、この辺のコンピは。これは売っちゃったんだけど、あとから譲ってもらえて。『Attack Of…Mushroom People』はレッド・カーテンもファントム・ギフトもだし、当時のネオGSがほぼ入ってる。これは〈チェリーレッド〉の『Pillows&Prayers』。ギターポップやネオアコのコンピの元祖だね。その頃はコンピで曲を知ってから買ってた。どんな人なのかわかんないもんね。コンピ盤はサンプラーとして買う感じ。

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──レーベルが出してるコンピが貴重だったよね。この辺りは当時買ったものをいったん手放したけどまた買ったり……?

yoko っていうのもあるし、残してたものもあるね。

──じゃあ好きなアーティストを3人挙げるとしたら、誰ですか?この人たちがやってることは信頼できるっていう人たち。

yoko それも選びにくいけど、ティーンエイジは好きなアーティストだね。ティーンエイジ・ファンクラブはスコットランドのインディーポップを聴くきっかけだったし。あとは持ってきたのだと……。

──わ、たくさん持ってきてくれたんだ。ありがとう。

yoko 私はすごい熱心なファンじゃないからさー、選べなくて。でもアズテック・カメラはネオアコを聴くきっかけになったバンドかな。

──『High Land,Hard Rain』はすごくいいアルバムだよねえ。

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yoko あとはスペシャルズ。1stのほうが勢いがあるんだけど、だんだん歳を取ってくると2ndの『More Specials』のほうがよさがわかるんだよね。これはいつか『80s Swingin' London』でもかけたいな。

──そっか。UKのイベントだもんね。

yoko そう。『80s Swingin' London』だとスペシャルズ、ファン・ボーイ・スリー、カラーフィールドはだいたい誰かがかけてる。テリー・ホールはそれ以降のソロだと90年代になっちゃうから、スペシャルズも1stだと70年代だし『More Specials』がギリギリ。このレコードも買い戻したの。ちょいちょい売っちゃってたから。もったいないよねー。

──売ったものを数年後に買いもどす感じ?

yoko 数年後でもない。ここ2~3年とか。

──どこかの時期で手放したわけでもなく?

yoko 買っては売って、の時期もあったし、あとは引っ越しとか出産前に売ったかなあ。お金も必要だし、やっぱり部屋が狭くなるのが嫌だったから。音楽も聴かなかったしね。残ってたのは引っ越しのときに段ボールに入れたままで数年が過ぎたり。聴く気がおきないっていうか、そのときはそう思ってた。

──子供が産まれるとそうなるよね。

yoko 今もあんまり、無理して聴くぞ!っていうのはないね。

──昔はあったってこと?

yoko そりゃ10代の頃はあったんじゃないかな?じゃなかったらそんなに20枚もレコード買わないよね(笑)。聴くぞっていうより、新しいのが知りたいとか、聴いたことのないものが聴きたいっていう、それだけ。今はまた昔のを聴きなおしてるところもあるから。新譜は全然買ってないよ。だから最近のおすすめとかまったくなくて申し訳ない(笑)。

──え、別に申し訳なくないよ!(笑)それがyokoさんの聴きかただから、みんな違うし。じゃあいま買ってるのは中古で昔のものばっかり?

yoko うん。気になってたやつとか。持ってたレコードは買いやすい値段だったら買いもどしたり。今はどっちかっていうとDJで使うためになっちゃってるかな。それも寂しいけどね。

──でも今は昭和のアイドルものをよく買ってるよね。昔は知らなかったものをどんどん掘り下げていってるの?

yoko それもある。知ってるのも安ければ買うけど、全然知らないB級、C級ぐらいのものを買うのが好き(笑)。

──多分それは新譜を聴くような感覚なんだろうね。

yoko あ、そうかもしれないね。あとはこの曲ってあれが元ネタなんだ!とかね。今日は持ってこなかったけど、おニャン子クラブの曲でもろマット・ビアンコなのがあって、それがすごくかっこいいんだよね。マット・ビアンコ歌謡とかいわれてるやつ。

──わかる!あれでしょ?「ウ・イ・ン・ク・で・こ・ろ・し・てー♪」

yoko 多分それ。カヒミ・カリィもカバーしてた「Get Out of Your Lazy Bed」が元ネタで、スウィング・ジャズっぽいの。あれ大好き。そんな感じで、あ、これが元ネタだったんだ、っていうのが80年代のアイドルに多くて、さっき話した、はじめて買ったっていうキョンキョンの「真っ赤な女の子」は失くしちゃったから50円で買いもどした。A面はテクノ歌謡だけど、B面がもろアンニュイ・ニューウェイヴで超いいの。あ、でもこれ作詞が秋元康なんだね(笑)。

──作曲は筒美京平だ。

yoko 筒美さんはすごいよね。もろ洋楽を意識してるんだろうなっていう。あとはポピンズ。これは作曲が井上大輔なの。ストロベリー・スウィッチブレイドって、後期に井上さんの曲があるでしょ?井上さん作曲の「Ecstasy」が85年で、ポピンズが86年、スウィッチブレイドのピコピコ系の曲が「I Can Feel」(作曲 ローズ・マクドール)で86年かな?だから時代がほぼ被ってる。まんまそれだよね。

── そっか!なるほど。そうういうことか。 B面が「ストロベリー・プリンス」って書いてある……(笑)。じゃあいまアイドルを聴いてるのは、元ネタ的なのと紐付けながら楽しんでるんだね。

yoko ほとんどそんな感じ。

──いろんな発見があって面白そうだね。でもやっぱりレコードを買うのは好きでしょ?

yoko うん。なんかね、物体が好きなんだと思う(笑)。あとこの紙のジャケット。

──私の周りにも女の子で音楽が好きな子はいたけど、そこまでレコード自体をたくさん買う人がいなかったの。誰かと一緒にレコード屋に行っても私ばっかりいつまでも見てて、待たせちゃうのね。だからyokoさんに会って、こんなに一生懸命レコードを探す女の人っているんだ、って驚いて。

yoko ああー、そうかも。だって普通はひとりでイギリスに行ってレコード掘ったりしないよね(笑)。

──それはレコードを買うために行ってたの?

yoko ううん。違う。ただイギリスに行きたくて。向こうに友達もいたから。でもその子も時間あるときだけ付きあってもらって、行ったことのある人に事前にレコード屋はどこがいいかを聞いてた。ラフトレードとか、有名なところばっかりだよ。オアシスの『Morning Glory?』のジャケットで有名なバーウィック・ストリートを行ったり来たりもした。あとはエクスチェンジっていう中古のチェーン店みたいなのがあって、ショップの袋にイギリスと、スコットランドもだったか、店の住所が全部載ってて、それを頼りに3~4軒は行った。いま思うとスマホもないのによく頑張ったよね(笑)。大体カムデンに行って、ポートベローに行って、あと何ヵ所か行って歩いてたら絶対レコード屋があるから。

──ライブも観たりした?

yoko 観なかったの。休みが取れて、空港チケットが安い時期だったのと、友達に会いに行くっていうのだけで、何かを目当てに行ったわけじゃなかったから。行けばよかったんだけど。

──でもそれだとゆっくり見れるだろうね。別の目的があって行くとレコード屋って後回しになるし、時間が合わなくて諦めたりするからさ。

yoko 大体みんな観光で行ったりとか、フェス目当てで行くもんね。

──好きな雑誌や本は?

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yoko この辺りを持ってきたんだけど、やっぱりイギリスが好きなんだろうなって自分で思った(笑)。こういうのを隅から隅まで見てた。あとはよく後ろに現地のチャートが載ってたでしょ?それが見たくて買ってたような気がする。

──チャートは面白いよね。そういえばyokoさんって2000年代の思い出は?

yoko それがあまりないの。今までみたいにたくさんの音楽を聴いてなかったから。

──何で聴いてなかったの?

yoko まあそれは精神状態とか。音楽を聴くような環境じゃなくなっちゃって。少しは聴いてたんだけど。

──熱心に聴かなくなって、遊びにも行かなくなった?

yoko 全然。ちょっと音楽やイベントとかから離れたくなったんだと思う。

──そうか。でもよく戻ったね。

yoko 戻っちゃったっていうか。出産後はDJなんてやるつもりまったくなかったから。

──音楽に戻るきっかけは何だったの?

yoko やっぱり子育てが少し落ち着いてからネットで情報を得るようになって、いろんな人が音楽の話をしてるのを見て、また聴いてみようと思ったのかなあ。聴けたら聴きたいな、みたいな。あとはラジオだよね。Inter FMは今も聴いてる。前ほどは聴かなくなっちゃったけどね。もうさ、ずーっと家の中で育児をしてるから、ラジオをつけっぱなしにして、そこで、あ、この曲いいな、って思ったり。

──ラジオは重要だよね。私も育児をしてるときはInter FMにお世話になってたな。

yoko 5~6年前のInter FMはめっちゃ面白かったよね。ジョージ(・ウィリアムズ)がいた頃まではよく聴いてたけど、最近はそんなに。

──DJを久しぶりにやるようになったのは誘われて?

yoko そう。DJが足りないからって友達が誘ってくれて。それが3年前くらいかな?で、久々に再会した人もいて、遊びにも行ったり。それから自分で歌謡曲中心のイベントもやったし。

──DJでやるときの曲はそのイベントに合わせて選曲してる?

yoko いま誘ってもらってる『80s Swingin' London』は、80年代のイギリスのバンドで、ラテン、ジャズ、ブルーアイドソウル、とかそういうテイストで、ちゃんとテーマがあるんだよね。私はネオアコ、ネオモッズをかけてる。

──私は最初にクラブに行きはじめたときに、ロックとかギターポップがかかるイベントに行ったんだけど、あんまり馴染めなかったの。で、テクノとかハウスのノンストップで音楽が続いてるDJのほうがしっくりきて、そっちばっかり行ってたのね。知ってる曲を聴きに行く感じではなくて、延々とその空間にいられるから。ずっとそうだったんだけど、yokoさんのDJを聴きに遊びに行くようになってから、知ってる曲と知らない曲が交互にかかったりするパーティーも楽しいなっていうのがやっと理解できるようになったのね。

yoko そうなんだ。私は10代の頃にロンドンナイトに行ってたからそういうのに抵抗がないのかもしれないね。当時は途中でMCとかも入ってたしね。大貫さんが曲を止めて「これは誰々の曲です~」って喋るみたいな。ほんとにラジオDJのっていうか、昔のディスコのスタイルなんだろうね。

──だから別の楽しさを教えてもらって、開けた感じがする。昔みたいにそんなに踊っていられなくなってるし、いろんな聴きかたがあると楽しいなと思った。

yoko そうだね。ラジオを聴いてる感じともまた違うけど。でもネオアコとか昔のインディーポップのイベントは、曲が終わったらただずーっとかかるだけの繰り返しだったよ。別にMIXって感じもないし(笑)。

──曲のチョイスがその人のカラーが出るから面白いんだよね。最近聴いてるのはほとんど昔の曲?

yoko うーん。でもそんなにたくさんは聴いてない。ただ流してるだけとか、寝ながら聴いてるだけ。そんなに熱心ではない。

──聴きかたは変わっていくよね。若い頃みたいに何でも吸収できるわけじゃないから、覚えられないしね。

yoko 今でもちゃんと熱心に聴ける人がうらやましい。やっぱり体力も集中力もないのかな。

──私は新しい曲って絶対に聴いたことがないものだから、そのほうが新鮮に聴ける。でももう今は古いのも新しいのも、何でも聴けるしね。

yoko うん。だから今は名前の聴いたことのある人たちをサブスクでちょっと聴こうかなっていうだけ。あとはテムズビートっていう、ロンドンのテムズ川沿いで発生した、ロカビリーとかカントリー、ジャズとかいろんな要素が入ってるバンドが2000年代に出てくるんだけど、それは全然通ってないから、しいていうなら今はそれを聴きたくて、サブスクで調べて聴いてる。有名なのだどジャック・ペニャーテとか。もう終わっちゃったけど「オーディナリーミュージック」っていうラジオ番組の最終回でカジさんがかけてたラリキン・ラブも、もろテムズでよかった。ネオアコもそうだけど、カントリーっぽいちょっと田舎くさいのが好きみたい(笑)。お洒落なのも好きだけどね。

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──音楽を再生するのはプレーヤーで?

yoko うん、そう。CDでも聴く。

──PCでは聴かない?

yoko 聴かない。あとはスマホで直で聴いちゃう。スピーカーにも接続しないし、イヤホンもしてない。昔は電車通勤で結構聴いてたけど、それがなくなっちゃったから。

──音楽に関わることでだと、何をしているときがいちばん楽しいですか?

yoko やっぱり聴いてるときだよね。今は家でぼけーっと聴いてるだけだけど。イベントの前はDJで使うレコードを選んでるとき。

──この先もずっと聴いていられそう?

yoko ……わかんない。生活が変わったらないかもね。例えば介護とか、仕事が増えたりとか、環境が変わったら無理だと思う。今でもギリギリだから。もうさ、仕事から帰ってきたら疲れてそのまま寝ちゃったりとかだもん。貪欲な人が羨ましい。

──貪欲な人はね、やっぱりどっかおかしいんだと思うよ(笑)。

yoko なるほど(笑)。だから今までめちゃくちゃ聴いてた人が全然聴かなくなる時期があったって話を聞くと、ちょっとホッとする。よかった、私だけじゃないんだって。

──ああ、私もそれは思う。

yoko あんなに好きだったのに好きじゃなくなる、そういう自分にショックを受けるっていうか。でも子育てしてたら無理だよね。10年ぐらいは全然聴いてなかったもん。

──無理だね。私も10年聴いてなかった。

yoko でしょー?時間があったら音楽聴くよりもアイスを食べたり、お酒を飲んだりで、肉体の疲労を回復したかった(笑)。だから少し余裕ができたんだろうね。

──そうね。あとは精神的に限界だったんじゃないかな(笑)。何かほかのもので補充していかないと自分自身がもろくなるっていうか。その限界が10年だったのかなと思う。

yoko そうか。私もそれだったんだろうね。でも今はイベントに誘ってもらえてるから選曲しなきゃって思うし、そういうのが張りになってるから感謝してる。いつまでに選曲しようっていうのがあるから、嫌なことも考えなくて済むし(笑)。

──本当にそうだよね。何かお題があったら、それに向けてくらいなら頑張れるから。私もさ、多分それを自分で作ってるんだと思う。このインタビューもだけど、自分がやりたいことを自分で決めて、じゃあこの日までにやるって目標を立てて。

yoko ライフワークって言っていいのかわからないけど、モチベーションかなあ。私の場合はオーガナイザーさんが決めてくれるから、本当にありがたい。友達が誘ってくれなかったらやってないと思うよ。この先もできるかわからないけどね。

──そういうのも子育てが落ち着いて、外に出られたからだもんね。年齢的なのもあるけど、私は去年からのこの、楽しいことがまったく何にもない状態がつらい。つらいねー(笑)。だからもう、こういう記事を細々と自分で続けていれば形になるんじゃないかと思ってやってる。誰かに誘われるのを待ってたって何も起こらないしね。

yoko そっかー。それに私を選んでいただいて光栄です(笑)。

──だから協力してくれてるみなさんのおかげなんです。ありがとうございます(笑)。


2021年 春
撮影協力 雑貨と音楽 amist

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【イベント情報】

『80s Swingin' London』

日時 2021年6月12日(土)
↑※緊急事態宣言延長の為、延期
開催予定日 7月10日(土)
場所 渋谷カフェアプレミディ
時間 15:00~20:00(仮)
料金 チャージフリー


#音楽 #インタビュー






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