【水星の魔女】お礼を言わないスレッタと、お守り・寄せ書きの違和感~スレッタの人物像を再考察する~<超個人的考察>

20話、学園で子どもたちが犠牲になりすぎてもう辛かったですね…。
本編があまりに詰め込んでくるので、noteを書く心の余裕もありませんでしたが、どうしても書いておきたいことがたまってきたので、とりあえず書き出してみます。
ただ、今回の話。私は他の人がこのように言っているのは見たことがありません…。あくまでも!私の個人的な考察なので、ひとつの可能性の話として見ていただけたらと思います。


スレッタ、一体何を考えているの?

失い続けたスレッタ、未だ立ち上がらず

17話でミオリネから突き放され、18話でエアリアルとプロスペラから突き放されたスレッタ。
19話で地球寮のみんなのおかげで、エアリアルの真意に気付き、最後は何かを決意したかのような目と握りこむ手の描写がありました。

全てを失ったスレッタ、ここから再起するに違いない!
さぁオープニングのslashで歌われているような爆イケスレッタを見せて!

…と思ったら、20話でまず登場したのは、落ち込んだ様子でぼんやりと授業を受けるスレッタ。
え?あれ?どうなったの?

スレッタの周囲ではどんどん謎が解き明かされ、点と点が繋がり、物語が進行している感じがするのに、スレッタは落ちたあとはゆっくりとした印象で、なかなか立ち上がりません。
え、あと4話しかないよ?!

何を訴えたいのかわからない、ぼかしすぎ!の声

ここまで、あまりにもスレッタの気持ちや考えがはっきりしないために、公式はぼかしすぎてこの物語で何を伝えたいのかわからない、何がしたいのかわからない、という声が目に付くようになってきました。

いや私も実はちょっと思った。
19話で暴動を起こし、20話で子どもたちを死なせ…。
そこまでして、スレッタはまだはっきりと立ち上がる様子もないし、何か先に進むための目標を明確に見せてくれたわけでもない。
ミオリネの「正しくても笑っちゃいけない」の意味も、いつわかってくれるの?
この物語はどこへ行くの?

それでもここまで見てきたのだし、登場人物たちは大好きなので、最後まで見るけども…なんだかもやもやするな~、と思っていました。
もやもやすると、ついすっきりしたくて延々と考察しちゃうんですよね。
(最近は毎回もり沢山すぎて、まとめるところまでできずにいました)

これは、本当に単なる経験不足なのか?

20話を見直していて、ペトラが自分のノート(タブレット)を見せてくれたシーンを、
「スレッタって、こういうちょっとしたところで結構お礼言わないこと多いよな~」
などと思いながら見ていました。

以前からちょっと気になってはいました。
相手を思いやれる優しい子なのに、相手の厚意に対してぞんざいなときがある。
何でなのかな、と何気なくツイートしていたのです。

地球寮のみんなからティコのお乳のスープをもらったときも、20話の終盤でみんなが駆けつけてくれたときも。
自分を気にかけてくれたことに対して、お礼を言わないんです。

「ゆりかごの星」を読んで、水星には他に子どもがいなかったことを知っている私は、コミュニケーションの経験不足のせいだと思っていました。
以前、スレッタの人物像を考察したときもそう書いていました。

でも、ここまで地球寮のみんなと交流してきて、未だに…?
なんだか、スレッタのこうした厚意に疎い様子は、経験不足だけで説明するには引っかかるものがあるように感じました。

「ゆりかごの星」で描かれた水星とは

お守りと寄せ書きの違和感

以前の記事(前述)で、スレッタは水星で幼い頃からいじめられたりと、辛い幼少期を過ごしていたことに触れました。

私は、スレッタの自尊心の低さを、この水星での経験によるものとして考えていました。
また前述の通り、スレッタが様々な場面で時々ちょっとずれた言動や行動をとってしまうのは、生育環境が原因だと思ってきました。
「ゆりかごの星」を読んで、同じように考えている方も多いように思います。

スレッタがもらったというお守りや寄せ書きが、実際には一度も登場していないのも、水星の住人との関係性の希薄さの表れだと。

でも、ずっと違和感がありました。
お守りとか寄せ書きって、どうでもいい人に贈るかな?

人の厚意に気付かないスレッタ

スレッタは、全くお礼を言わないわけではありません。むしろ仰々しくお礼を言うときもあります。1話でミオリネに助けてもらった後などはそうですね。
けれど、軽く「ありがとう」くらい言いそうな場面では、逆にスレッタは黙って何かをしてもらうだけだったりするのです。

もしかして、と、ある仮説が思い浮かびました。
もしかしてスレッタ、人の厚意に気付かない節がある…?
お礼を言わないのではなく、そもそも厚意を感じ取れていないのでは?

考えてみると、相手の厚意がわからないだけじゃありません。
空気が読めない、言葉の裏側がわからない、一度つまづくとマイナスに捉えがち、不安になりやすい、複雑なことは苦手、変なところは細かい、頑固な面もある、依存、素直で純粋。
ここまで視聴してくると、こういった傾向をスレッタが持っていることがわかります。

2期も後半まできてもこの傾向がなくなる様子はなく、これは生育環境による後天的なものだけでは、どうも説明しきれないように感じてきました。
もしかしてスレッタが生まれ持っている性質もあるのでは…?と思ったのです。
そして、そう仮定して考えると、いろいろと辻褄が合うことに気付きました。

「ゆりかごの星」は、スレッタの影響を受けている

スレッタはハンガーのエアリアルのコクピットを居場所にしていて、水星の老人にいじめられたときもエアリアルにお話ししていました。
当初、エアリアルは動いていないようなので、その情報源はスレッタとプロスペラが話すことか、既に自分が知っていた情報しかありません。

スレッタがもし「人の厚意に気付かない」子なのであれば、スレッタがエアリアルに話す内容も、受けた厚意について抜け落ちたものになるはずです。
「ゆりかごの星」は、水星の事実をそのまま描いたものではなく、スレッタの感性を通して描かれている部分がある、ということです。

お母さんが忙しくて、帰ってこなかったりするような環境で、スレッタはどうやって大きくなったのか。それも謎でした。
本当はスレッタを気にかけて、見守ってくれる大人たちがいたのではないでしょうか。
そういった人たちが、お守りを用意し、寄せ書きを書いてくれたのではないか、と考えました。

けれどスレッタは厚意に疎いので、その人たちがどんな思いでそれをくれるのかがあまりよくわからなかった。
だから、お守りや寄せ書きをもらったことは嬉しいけれど、その重みはあまり感じていなくて、本編に出てくるほど思い入れを抱くものにはならなかったのではないでしょうか。
スレッタが本当に執着を見せているのは、母、エアリアル、そしてミオリネだけなのです。

そもそも、水星で長く暮らしている大人たちが、一度も水星から出たことのない17歳のスレッタに、学校を作ってくれ、期待してるぞ、なんて本気で言うでしょうか?
水星を出て地球圏に行ったら、学校卒業後は地球圏に留まることだって十分に考えられます。
そうでなくても、スレッタが学校へ行くということは、危険が多い水星に優秀なレスキュー要員が不在になるということです。

それでも寄せ書きまでして、快く送り出してくれた大人たちは、きっとスレッタが学校を作れなくてもいいのです。
夢を語ったスレッタを応援する、そのために「頼んだぞ」「待ってる」と言って励ましているのです。そう伝えるのが一番スレッタは頑張れると知っているのです。

本編で一度も出てこない寄せ書きには、きっと純粋にスレッタを応援するための言葉が書かれているのではないでしょうか。
たった一人の水星の子どもを、その未来を大切に思う大人たちが、そこにはきっといたのだと思います。

スレッタの傾向をまとめる

「概念」をとらえることが苦手?

スレッタはよく、具体的なことを列挙します。
4話の「エランさんは、寮に誘ってくれて、優しくて、親切で…」も、11話の「雑草ですし、弾除けですし…」も、17話の「指輪買って、最高のドレス着て…」も。
そもそも、やりたいことリストもそうですよね。

目の前の具体的なことならひとつひとつ挙げられるのですが、それらがどう結びついているか、何が言いたいのかを伝えることは、どうも苦手なようです。
抽象的なものはよくわからないのですね。
それは行動や対人関係にも表れているように思えます。

例えば11話で、ミオリネがスレッタに伝えた、「ずっと側にいて」「決闘にも負けないで」は、つまり婚約者として確定する、結婚するということですよね…!
はたから見ればこれはプロポーズで、愛の告白です。
でもスレッタはそこまで考えが及んでいたかどうか、16話のグエルの告白を見て疑問が生じました。

というのも、11話でミオリネの「私の言うこと、信じられないの?」に対して、スレッタは「信じます。私、花婿ですから」と答えました。
これ、ミオリネの気持ちを知った上でプロポーズを受けた、と思っていたのですが、16話のグエルの告白に対する反応を見るに、
スレッタは「好き」という気持ち、その概念を理解していなかったかもしれないなと…!

7話でミオリネは、「あの子の花嫁だからよ」と言ってスレッタを守りました。
スレッタの中では、花婿・花嫁は互いを信じ、守るものとして認識されているのではないでしょうか。
1期、花婿という言葉が繰り返されたことで、スレッタは役割に依存していると指摘されたりもしていましたが、実はそれこそが自分の気持ちの理由なのだとスレッタが考えていた可能性があるのです。

だから16話でグエルが、好きだと話した後で、「大切なんだ」と告白したときに、あれほど心が揺さぶられ、しっかりと受け止めて考えて「私にも今、大切な人がいる」と答えたのですね。
これは、「好き」という気持ちだったんだ、と。
この時に初めて、自分の気持ちが「花婿だから」ではなく、「好きだから」だったと知ったのです。

「花婿」という、具体的な役割としてとらえることはできても、「好き」という気持ちなんだと、概念を自分のものにするまでには相当時間がかかったと言えます。

そんなスレッタにとっては、16話でミオリネが温室で言った「正しくても、笑っちゃいけないよ」という言葉は、まったく意味がわからなかったことでしょう。
すっかりプロスペラの洗脳かと思っていたのですが、誘導はあったかもしれませんが、実はスレッタが元々持っている性質によるものだった可能性があると、今は考えています。

複雑な思考も苦手?

スレッタの性質をそのように考えると、スレッタはミオリネの温室での質問の意図も、きっとまったくわからなかったと思います。

ガンダムで人を殺すのかと訊ねられたときのスレッタの表情。最初は、スレッタが洗脳されていて、自分の気持ちを無視して母の言うことを聞こうとしているために、あの表情なのかと思っていました。

ですが、生来のものがあるかもしれないと思って改めてみると、あの表情は「本当に困っている」顔ではないかと感じました。

スレッタはおそらく、ミオリネの質問に対して、「正しい答え」を出さなければと思っていたでしょう。
だって何やらミオリネは必死です。どうしてその質問をするのかはわからないけれど、何か大事な質問なんだろうとは思ったでしょう。

だから一生懸命考えました。何が正解なのか。
でもスレッタには、どう答えるのが正解なのか、わからなかったのではないでしょうか。

スレッタは、おそらく複雑な思考をすることが得意ではありません。
前項とも関係してきますが、人の言葉の裏側や、物事の因果関係、そういったものをとらえるのは苦手でしょう。
そのため、そういったことが起きるたびに、母に判断を委ねてきたのではないでしょうか。

そう考えてくると、プロスペラはたしかにスレッタを誘導はしていますが、おそろしい洗脳をかけているというよりは、もっと「ああ、そういうことならあり得るな」という現実的な関係性に見えてきます。

ミオリネが求めている答えがわからないから、自分が正しいと信じている母に従うと答えた。結果、ミオリネは出て行ってしまった。
きっとまた私がおかしなことを言ったんだ。
そう思ったスレッタは、停学明けの朝にミオリネに「この間は、私、変なこと言っちゃって…」と伝えたのですね。
でも何が変なのかは、多分わかっていないのですよね。
同じようなことを、きっとこれまでも何度も経験し、その度に「私のせいだ」と思ってきたのでしょう。

スレッタの再起はとても丁寧に描かれている

物語が終盤に向けて怒涛の展開を見せているのに比べると、スレッタは一度どん底まで落ちた後、なかなか立ち上がり切っていません。
何を考え、どんな気持ちでいるのかも、ほとんど描かれていません。

でも、生来そうした傾向があると仮定すれば、当然のことなのです。
スレッタはまだ、自分がどうすべきか、何をどう感じているのか、言葉にできません。
ひとつひとつ、目の前で起きたこと、体験したことから、少しずつミオリネの真意や、自分がどうありたいのかに、近づいている途中だと思います。

スレッタの物語は、おそらくスレッタのスピードで描かれているのです。

きっかけは、超個人的なことでした…

スレッタが、もしかしたらそういう傾向があるのではないかと思ったきっかけは、私の個人的な体験によります。

私の身内には幼い頃、健診で発達障害グレーと診断された子がいます。
グレーというくらいで、曖昧だったために、当時はその子が困っていることを親も気付けませんでした。

それまではとても元気で楽しそうに保育園に通っていたその子が、4歳になり年少さんとして集団行動が重視されるようになってくると、引っ込み思案になりました。
そんなある日、「私は何もできないから、好きなことをやっちゃいけないの」というようなことを呟いたのです。

普段の生活でそこまで顕著に困る様子はないのです。
けれど年齢が上がって社会的な行動が求められるようになったことで、「抽象的な指示」や「概念」が生活の中に入ってきました。
周りのみんなは、それを理解して行動できる。けれどその子は、何を求められているのか正解がわからなかった。
自分の気持ちを言葉で伝えたくても、どういう言葉にすればいいのかわからない。
だから誰にも、困っていることを気づいてもらえなかった。

できない・やらないと叱られ、でもわからない・できない。繰り返しそういった経験を積んだことで、その子の自尊心はボロボロになっていたのです。

スレッタの、温室での表情を見直したときに、その頃のその子のことを思い出しました。
わからなくて困っている、でもそれを伝えられない、自分が悪いから仕方ないんだと思っていた当時のその子のことを。
スレッタも、もしかしたら、そういった節があるのかもしれない、と。

もちろん、スレッタがそうだと断言するわけではないですし、全く見当違いな話かもしれません。
それでも、もしかしたらスレッタが多数とは少し違った感性を生まれ持っているのではないかという視点で見ると、いろいろと合点がいくことが多いな、と私個人は感じています。

それと同時に、そんなスレッタをありのままに受け止めているミオリネや地球寮の子どもたちは、私たちが目指す未来を示してくれているのだなと…勝手に思ったりしています。

残り4話ですが、スレッタたちがどんな結末を見せてくれるのか、ゆっくりじっくり見ていきたいと思います!




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