【水星の魔女】スレッタとミオリネは似ている?前編/スレッタの人物像<超個人的雑記>

1期では、気が強く行動力のあるミオリネにいつも引っ張られるスレッタ、みたいな感じで進んでいきましたね。
しかし2期に入り、いろいろと不穏な展開になるにつれ、二人の関係性におや?と思うことが増えてきました。
今回は、二人がどういう人物なのか、少しじっくりと考えてみたいと思っています。
長くなってしまったので、スレッタとミオリネで前後編に分けます!

なお、ミオリネの人物像について、後編はこちら。


スレッタの人物像

原点となる、水星でのスレッタ

1期オープニングテーマの元になった小説「ゆりかごの星」
この小説には、スレッタの人物像を考えるときに、とても重要な情報が含まれています。

「ゆりかごの星」は、エアリアル視点の物語です。
そこには、太陽に近く過酷な環境の水星で暮らすスレッタの様子が、6歳、9歳、11歳、15歳、そして16歳の時点を切り取るように描かれています。
概要は別な記事にしたので、ご存じない方は参考までに。

①自尊心の低さ、あるいは欠如

私がスレッタについて考えるときに、最も気になっているのがその自尊心です。

スレッタは幼い頃からずっと、人と触れ合えずに成長しました。母ともあまり共に過ごす時間がなく、誕生日でさえ一緒に祝ったのは11歳が最後です。
水星には年の近い友人などおらず、住人である老人達にはガンダムを持ち込んだ母子として冷遇されたり、いじめられたり。
しかもそれを、心配させるからと母にも相談できません。

この状況で、11歳時点までに、スレッタが生きるために身につけたのは、「見返りなく自分を差し出し続ける」という方法でした。

「ゆりかごの星」を読む限り、自身が謝る描写はありますが、謝られる描写はありません。
危険な救助活動を終えて戻っても、住人は誰もスレッタに「おかえり」とも「ありがとう」とも言ってくれません。
何のお礼も感謝もなくても、理不尽に責められても、ただひたすら水星の住人のために、危険が伴う救助活動に尽力するのです。
そうして、「役に立つ」ことで、自分の居場所を得ようとしています。

その甲斐あって、水星の住人からも感謝されるようにもなり、良好な関係を築けるようにはなったのでしょう。本編4話では、水星に学校をつくる夢を語り、住人から寄せ書きやお守りをもらったと話していました。
しかしその状態になるまで、物心ついてから10年くらいでしょうか、スレッタはずっと他人のために自分を捧げ続けています。
そしてその方法で、ある程度成功してしまったわけですね。

そんなスレッタは、自分を価値がある存在だと感じているでしょうか。
答えは、否だと思います。
自分を大切な存在だと思えないからこそ、他人に捧げてしまうのですね。
スレッタの自尊心はどん底ではないかと思います。

例えば1話で、実習の見学をしていたスレッタは、3人の女子生徒に話しかけられました。
このとき、スレッタは囲まれただけで自然としゃがみ、正座してしまいます。
これはおそらく、水星で老人たちに囲まれたとき、自分に敵意がないことを示すため、またいじめや罵倒をやり過ごすためにとってきた行動なのでしょう。

またスレッタは、時々自分について「変だよね」「おかしいですよね」と言います。
自分自身をおかしいと本当に思っている可能性もありますが、相手に変だと指摘される前に、自分からその言葉を出すことで、無意識に自分の受けるダメージを減らそうとしているのではないかと思っています。

10話から11話では、自尊心の低さがはっきりと表れました。
役に立てること、必要とされることが嬉しいのは誰でもそうですが、勘違いだったかもしれないとなった途端に全てが悪い方に思え、空回り、気持ちが急落し、不安に襲われてしまいます。

他にも細かい描写はいくらでもあると思いますが、スレッタの自尊心の低さは、1期の中でかなりはっきりと見えています。
そんなスレッタの心をさりげなく救っていたのは、ミオリネなんですけどね!

②「正しさ」は譲らない

自尊心は低いスレッタですが、「正しさ」については頑固で、譲りません。
1話でグエルをお尻ペンペンしたときや、12話でソフィと対峙したとき、「お母さんから教わらなかったんですか」と言い、「人を傷つけることは悪いこと」として止めようとしています。

3話で決闘の宣誓をしたときの、セセリアがグエルを馬鹿にしたことを諫めたときも同様ですね。

挙げればもっとあると思いますが、まるで小学校低学年くらいの子が、他の子のズルやいじわるを見て「そんなことしちゃダメだよ!」と真っ直ぐに止めようとするときのようです。
人とコミュニケーションをとらずに成長した分、その反応はとても素直で、駆け引きめいたことは一切できません。

(12話でその正しさが歪み、14話で直面させられて大打撃を受けたんですけどね……なので、今後は②についてはグラグラに揺れていくと思います)

③相手の負の感情に敏感、しかし行動は空回る

1話で、温室の前でホルダー制度や結婚について話しているときのミオリネの負の感情を、スレッタは敏感に察知しているようです(公式小説)。
5話、6話でのエランとのやり取りでも、自分が傷ついた以上に、相手が傷ついていることを感じ取っているようにも思えます。

この、相手の負の感情を察する力、私は実は水星での生活が影響しているのではないかと思っています。

水星では老人達のいじめに遭っていたスレッタ。なるべく相手を怒らせないようにするには、相手が今どんな感情でいるのかを早めに察する必要があります。
人の顔色を見て暮らしてきた、ということですね。

一方で、相手の意図をくみ取ったり、行動に反映させることはあまり得意ではないように見えます。
これは他人とのコミュニケーションの経験不足が一番の原因かと思います。素でグエルやシャディクを煽るようなことを言っちゃいますし、どうにかしたいときは鬱陶しく進む以外の方法を知りません。

ちなみに、好意には鈍感なように思います。
ミオリネの行動や態度は、割と早い段階からスレッタを特別な相手と認めているように見える(温室に入れる、部屋に泊める、スレッタのためにいろいろ動いているetc)のに、スレッタには微妙にわかっていません。
じれったいですね!

④面食い

1話の宇宙空間でのミオリネとの出会い。
頭突きをくらったスレッタですが、そのあとミオリネの顔を見て、見惚れてしまっています(公式小説に明記)。

そのあと学園でミオリネと再会したスレッタは、優しく声をかけてくれたニカに懐くのではなく、ミオリネばかり気にしています。
婚約者の話が気になって温室まで追いかけたり、話は終わったはずなのに温室の入り口からミオリネの様子を覗いていたり。
名前だっていつの間にやらしっかり覚えていて、「ミオリネさんに謝ってください!」とか言っちゃいます。
改めて見返すと、仲良くなりたい気持ちがわかりやすくてかわいいですね。もう1話から鬱陶しかった(笑)

たしかに実習の見学で助けてもらってはいますが、まだこの時点ではミオリネがどんな人なのかよく知らないはずです。
むしろ怒られてばかりで、怖い・苦手という印象でもおかしくないと思うのですが……それを上回るミオリネの美しさだったということでしょうか。

というわけで、スレッタは面食いだと個人的には思っています。
ちなみにグエルの求婚は即断り、エランにはときめいちゃったりもしているので、きれい系の顔がお好きなのではないでしょうか。

⑤レスキュー能力が高い

スレッタは、水星で難易度の高い救助活動も行っています。
状況把握や判断も早く的確。そのレスキュー能力は、13話でニカを助けた時にも発揮されています。
スライディングしながらギリギリでニカを拾い、摩擦でけがをさせないように手足でうまくニカを持ち上げて滑っています。
ホントにカッコよかったですよね!

ちなみに2話で、ガンダムの使用嫌疑で拘束されている際にミオリネが部屋に飛び込んできたときも、ミオリネが壁に激突しないよう咄嗟に抱きとめに飛び出し、半回転して自分の背中で壁にぶつかっています。
地味ですがとてもカッコいいです。

ただし、モビルスーツの操縦という部分ではGUNDフォーマットやエアリアルにだいぶ助けてもらっているようで、実習で使用されているデミトレーナーの操縦では平凡な印象を受けます。
特に戦闘では経験不足もあると思いますが、かなりエアリアルに頼っているように見えますね。
(9話以降、段々と妙な一体感が出てきていますけどね……)

描き出される「歪み」

ここからは人物像、というか、スレッタの抱えている「歪み」について触れます。
エンディングの「Red:birthmark」では、「歪み」「distotion」という言葉がキーワードのように出てきますね。
スレッタはとても純粋で素直で、かわいさとかっこよさを持っている子(要するに大好き)ですが、ところどころにかなり歪んだ状態が見え隠れしています。

既に話題になっていることなので、みなさん今更かもしれませんが、1期の描写を含めて振り返ります。

スプーンの持ち方

2話で拘束されているスレッタに、エランが食事を持ってきた場面。
スレッタはお腹が空いていて、一時我を忘れて食事していますが、そのときのスプーンの持ち方が「上手持ち」です。

これ、1~2歳児の持ち方です(汗)

「お母さんに教わらなかったんですか?!」ってなりますよね……。

バースデーソング

スレッタが6話でエランに向けて歌っているバースデーソング。
私たちが知っているものと、ちょっと違いますね。

そう「ディア ○○」がありません。
大切な○○、がないんです……。

ホント、「お母さんは歌わなかったんですか?!」ですよ……。

プロスペラマジック

12話で、怯えるスレッタに戦闘を決意させたシーンは決定的でしたが、プロスペラは他にも要所要所でたくみにスレッタを誘導していますよね(なんならミオリネも誘導している)。

スレッタの母への信頼は、何やら洗脳めいた恐ろしさを感じさせるほどです。
前述の、育児放棄を思わせるような様子と相まって、深い闇を感じてしまいます……。

「逃げたら一つ、進めば二つ」は本当?

この物語のキーワードである「逃げたら一つ、進めば二つ」という言葉。
スレッタはこの言葉を、自分の背中を押してくれる大切な魔法の言葉のように思っているようです。
ですが、本当に進んだ方がいいのでしょうか?

実のところ人間は、ある程度はどんな選択肢を選んでも、納得も後悔もします。
要するに、その選択をした結果「得るもの」と「失うもの」があり、そのどちらに注目するか、なのですよね。
それに逃げる行為が結果的に進むことになることも、進んだつもりが後退してしまうこともあります。
どの選択がよいか(後悔しないか)は、結局、自分自身で決めたかどうかにかかっているのかもしれません。

14話、最後にスレッタは、人の命を奪ってまで自分の欲しいものを得ようとするソフィや、ガンダムを暴力マシーンだという考えを、正しくないはずなのに否定しきれなくなって戸惑います。
そこにエアリアルが何やら言ったようで(おそらく、「でもみんなを守れたよ」的な)、「そうだよね」と気を取り直したように笑顔を見せ、最後に「お母さんの言う通り」と呟きますが、そこでぶわっと涙があふれます。

「逃げたら一つ、進めば二つ」
この言葉は、逃げる選択肢を用意しているように見えて、「進んだ方がいい」という強烈なプレッシャーを与える言葉です。
しかも、足し算しか考えていなくて、引き算をしません。
得るものだけを見ていて、失うものを数えないのです。
比較検討せず、どんな犠牲を払ってでも進め。そういう言葉でもあると思います。

14話でスレッタは、自身が信じてきた正しさ、エアリアルの存在、母やその愛、そういったものへの疑念を抱えることになりました。
薄々感じてはいながら、無意識に見ないようにしてきたのかもしれません。スレッタにとって、母の愛やエアリアルを信じられなくなることは、自身の存在を支えるものを失うことでしょうから。
でもついに、避けてきたものを直視させられたのですね。

今後、スレッタが自身の心の歪みとどう向き合い、乗り越えていくのか。
早く報われてほしい気持ちでいっぱいです……。

ざっくりなのに長くなってしまった、スレッタの人物像についての考察はここまで。
次回はミオリネの人物像に触れ、二人の関係性についても考えてみたいと思います。


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