「番組視聴の感動を生かした授業づくり」6年

『放送教育』(特集:社会科番組をどう生かすか~わたしの指導案~)
1997年12月号(52巻9号)24-25,日本放送教育協会
宮城県仙台市立南小泉小学校 教諭 菅原 弘一

■はじめに


 私が歴史学習を進めていく上で大切にしているのは,歴史を単に過去の出来事としてとらえるのではなく,現在の自分たちの生活とのかかわりで考えようとする態度を身につけさせることである。
 このような考えで授業を進める時,『歴史たんけん』は私にとってのよき「助っ人」となる。この番組が,歴史を学ぶことへの興味をかき立てることを基本的なねらいとし,現在の生活との接点を大切にしながら制作されているからである。

■番組利用の意図


 12月に放送される戦中戦後を扱った番組には深い感動と余韻を残すものが多い。体験者の口から語られる歴史の事実とそこに織りまぜられる記録映像が,当時を生きた人々への共感的理解を容易にし,子どもたちの情緒や感情に強く訴えるからである。私はこのような番組を次のような効果を期待して利用する。

---単元の導入段階で---

(1)自分たちにもかかわりのある問題として真剣に考えていこうとする「学習の構え」ができる。
(2)これから学習する時代の大まかなイメージをつかむことができる。
(3)番組視聴で得られたイメージや感動を課題づくりの原動力となる。

---単元の終末段階で---

(1)情緒に訴える番組で学習を締めくくることで,単元の学習全体を印象深いものとなる。
(2)単元終了後も長く持続する発展的な課題をもつことができる。

■利用方法


 私は,「ヒロシマ」「沖縄の戦後」という二つの番組を「戦争と新しい日本」という単元に図のように位置づけて利用してみたい。
【ヒロシマ】
 単元の導入段階で,平和で豊かな現在の日本のイメージを大きく揺さぶるものとして利用する。視聴後の話し合いでは「どうしてこんな悲惨な戦争が起こったのだろう」「当時の人々はどんな気持ちで暮らしていたのだろう」といった感想を引き出し,戦争や戦争中の国民生活についての課題意識ををふくらませていきたい。
 しかし,番組の視聴だけで,戦後の復興期までを見通した学習活動を組織していくには無理がある。そこで,地元・仙台にも目を向けさせ,戦災復興記念館の見学を実施する。この記念館は,仙台空襲を中心に,戦災と復興の記録を後世に残すために建てられたものである。見学によって学習内容をより身近なところに引き寄せるとともに,戦後の復興期にまで視野を広げさせたい。
 番組の視聴を見学による一次調べと組み合わせることで,追求するに値する学習課題を明確にしていきたいのである。

【沖縄の戦後】

 単元の終末段階に位置づけて,学習内容を振り返るきっかけとして利用する。国内でただ一つの戦場となった沖縄は,今なお重く大きな課題を抱えている。沖縄を扱った番組を視聴させることで,改めて歴史の連続性や現在の自分たちの生活とのかかわりについて考えさせることができる。
視聴後,体験を語ってくれた人に手紙を書かせることで学習内容の自己内面化を図る。
この手紙を,調べて分かったことを並べるだけのものにするのではなく,自分なりの思いや願いが強く表れたものにするためにも,番組視聴の感動や余韻を大切にしたい。

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■おわりに


 放送番組を利用しなくても授業はできる。
しかし,この質の高い感動を授業に利用しない手はないと考えている。
 歴史学習に限ったことではないと思うが,興味・関心や学ぶ意欲を長く持ち続けることができるようにするためには,感動のある授業をつくることが大切だと思う。歴史たんけんはそんな授業づくりのための大切な「助っ人」なのである。

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