あなたの幸せを祈っています

このノートは、姿煮がうたの日でいただいた25本の薔薇を、自らこき下ろしたり誉めたりするノートです。悪口で気分を害される方はそっ閉じしてください。

25の薔薇の姿煮を集めてこれは好きとか嫌いとか言う

スタート!

タキシード着る機会なき人生の晩御飯には味噌汁がない
2022年02月05日『タキシード』

はじめての薔薇。よく覚えてないけど、いまも味噌汁はあまり作らない。コンロが1口しかないので。タキシードを着そうなタイミングもない。

誰のものでもない場所が足りなくて盗んで生きる花も私も
2022年04月08日『泥棒』

よく覚えている。花盗人で詠みたくて、職場の近くの、あまり人が来ない緑道のベンチで、パンを食べながら推敲した。この半年ちょっと前に部署を異動したこと、同期が心折れて地元に戻ったこと、そういうことを思いながら桜の咲き方をみていたら、自然と出来た。花盗人どこいった。咲兵衛さんの評が美しい

いちめんの小麦畑をうけとめてビールジョッキはひかりの出口
2022年05月02日『ビール』

いま見ると、こういう感じでやっとけば上位取れるだろという雰囲気を感じる。わりと嫌い。

椅子ひとつ片付けられて教室は君の不在を忘れはじめる
2022年05月04日『不』

どこにでもあっただろう教室の風景。ベッドタウンで、近くに大企業の社宅もあったため、転校は出るのも入るのも多かった。けっこう好き。

「無理無理!」の無理の分だけむりむりと土筆がのびて陽を浴びてゐる
2022年05月12日『無理』

ゐる、じゃないのよと思ってしまう。題に振り回されている。薔薇は結果。難しい題だった。こういうふうになってしまうくらいなら真っ向から詠んで玉砕した方がいいと自分に言いたい

武道場前の蛇口に座り込み足を冷やしている剣道部
2022年05月18日『武』

かなり嬉しかった。この剣道部は自分。左足を痛めて、騙し騙しやっていた高校時代。時々、どうしようもなくなって、こうして座り込んで足を冷やしていた。この頃は、心も座り込んでしまったことはなかったと思う。

遺される側の悲しみしか知らず夏至をまたいで続く長雨
2022年06月21日『夏至』

自分の薔薇のなかで、一番手応えがあった。きちんと薔薇がとれて嬉しかった。こういうのを詠んでいきたい。祖父のこと。20首以上似たような歌を作って、ようやく完成したものと記憶している。

朝顔が昼まで寝てる、蝉なのに鳴くのをやめる、くらいの疲れ
2022年07月05日『疲』

好きでも嫌いでもない。なんか頭でっかち。

国境をゆびで削ればあっけなくやさしいだけの人になりたい
2022年07月26日『国』

こういう詠み方をするようになったのだなあと思う。上下に論理的つながりがないのを、許容出来るようになってきた。まあまあ好き

投光器を太陽とした理科室で惑星としてざわめく僕ら
2022年10月04日『投』

うたの日全部屋薔薇を目指していたとき、どうしても11時部屋が取れなくて、ようやく取れたのがこのときだった。この間に次席を7回か8回取ったと思う。学校詠に逃げた感もあるが、けっこう好き。「ざわめく」を選べてよかった。

ただ生きるのみにて生きる曾祖母のときどき笑うことの尊さ
2022年10月14日『尊』

未だにしっくり来ていない。推敲の余地がある。嫌いとかではない

オール・ユー・ニード・イズ・キルだとしても俺はいっしょに月を見るけど
2022年11月09日『映画のタイトルを詠み込んで』

とても好き。題をうまく力に出来たように思う。ちなみに映画は見たことないです。映画の内容に踏み込まない方が詠みやすいだろうなと思って敢えて選びました。

お互いに嘘と分かって酔っていく紅茶の味の夜のはじまり
2022年12月02日『ロングアイランド・アイスティー』

大学の後輩にバーで飲ませてその後なんともならなかったことを思い出しました。つまり虚。嘘の歌です。嫌いと言うか苦手。

幼稚園はデイサービスに建て替わり変わらぬ坂を母と連れ立つ
2022年12月23日『坂』

虚景なうえに、「こんな感じでやっとけばいいんでしょ」的な傲慢さを感じるので嫌い。少子高齢化をうまく映したとか、変わる景色と変わらぬ愛情とか、そういうことを言ってもらおうとしている。だめ。

炭酸を振って噴き出すのが恋でそっと拭くのも恋なのでしょう
2022年12月26日『炭酸』

言いたいことは分かる。でもちょっと頭でっかちだよね。一番かわいい姿煮かも。

ブルー、ブルー、ネイビー、ブルー、このなかに今日と明日のネクタイがある
2023年01月06日『明日』

音は好き。雰囲気も好き。最近は赤とか緑も持ってます。そろそろブルーよりネイビーの方が多いです。

お月様!ウェーイ!見てるー? 終電に駆け込むときもひとりの俺を2023年01月07日『ウェーイ』

サイト上の代表歌がこれなのとても悔しい。お題に沿って詠んだだけで自分のアイディアがない。

服従のフクだ、と笑うじいちゃんの待てを待たずに食べているフク
2023年01月11日『犬』

フクは幼稚園のときに死んでしまったんですが、死んでから何年かして、名前の由来を聞いた時に、祖父が「服従のフクだ」と教えてくれたのは本当です。まてをちゃんと出来るお利口な犬だったと思います。服従のフクだって説明したら、小学校の担任のおばちゃん先生が嫌な顔してたのめっちゃ覚えてます。

どの駅も通過駅だよ乗換のホームで立ち止まって泣くなよ
2023年01月15日『否定命令文』

どうなんでしょうね。好きって言ってくれた人のことが好きだから嫌いではないような気がします。

あいまいに笑って済ますオフィスには偽物だから枯れないパキラ
2023年01月24日『笑』

下の句の音が完璧じゃない?内容的にもまとまってて、「上手い」の部類だと思ってます。でもさ、韻律に心がついてこないなら短歌なんて意味ないんじゃないの?

さよならは意外と近いフォアボールたったみっつで満塁になる
2023年03月14日『ボール』

ここから三日連続薔薇ですが、そのなかではこれが好きかな。特筆するほどではない。

負けた日のもう戻らない球場の白い蛇口で髪を洗った
2023年03月15日『蛇』

二日連続で野球詠。蛇口なら剣道部のうたの方が気に入ってる。野球部は坊主だから洗う髪がない、という偏見を蹴散らしてくれた慶応に捧げたい。ちなみに野球経験無し。

さくら色のスープジャーを買ってからおなかのなかに春があります
2023年03月16日『桜』

薔薇が二日も続いたもんだから、なんとか継続したくてあざとさ全開になっている。桜なんてありふれた題なので、被らなさそうなものを探すのに苦労しました。うちのスープジャーはワインレッド色です。

牛丼に紅しょうがたっぷりのせるまだ貧困を受け入れてない
2023年04月28日『牛』

1000人くらいに詠まれてそうな内容なのでだめ。

はっきりとNOと言えない者どうし映画のあとに海に来ている
2023年06月19日『NO』

何が言いたいのかよく考えると分からなくなるんですが、流れがいいので無駄に説得力がある。及第点。決定的な言葉を言えない人生なので、弱い一首しか作れないのかもなって思った。はっきりとノーと言えないのは私だけで、あなたがイエスもノーも言えないように、他でもない私がしているのかもしれない。

YESともNOとも言わず生きてきて君に心があるのが苦しい

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