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【小説】だるま村へ【完結】

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【あらすじ】 月の光に命を与えられた小さなだるま。 目覚めたのは、町外れのゴミ袋の中だった……。 だるまの村が西にあるらしいと知って、だるまは犬のマルタと一緒に村探しの旅に出る。… もっと読む
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だるま村へ ♯1 『ゴミ袋のあやしげな影』

 ある朝、町外れに一羽の大きなカラスが飛んできて、電信柱のてっぺんに降り立ちました。カラ…

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だるま村へ ♯2 『旅の始まり』

 一人になっただるまは、辺りを見回しました。目の前は細い一本道になっています。遠くから車…

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だるま村へ ♯3  『犬のマルタ』

 耳はピンと立ち、クリーム色の短い毛で覆われていて、しっぽだけにフサフサとした長い毛が生…

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だるま村へ ♯4 『夜の森』

「ところでよ、だるま村の場所は全く分からねぇのか?」 「うんと西の方にあるってことは分か…

だるま村へ ♯5 『森で暮らす』

 木の葉に雨が当たる音で、だるまは目を覚ましました。雨が小さな寝床全体を包んでいるようで…

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だるま村へ ♯6 『暮らしの工夫』

 西への移動を続けるうちに一週間が過ぎ、二人はかなり森の暮らしに慣れていきました。だるま…

だるま村へ ♯7 『人里へ』

 翌朝、マルタは巣穴の近くにいたリスを捕まえようとしましたが、また逃げられてしまいました。マルタは舌をだらんと出して、うなだれました。 「体の動かし方は分かってきたんだ。だが、肉を食べねぇと、瞬発力が出ねぇ。狩りをして肉を得たいのに、まず肉を食べないと狩りをする力も出ないときた」 マルタは狩りを諦めて、だるまを乗せて移動を開始しました。小川からさらに坂を下っていくと、木々はまばらになって開けた場所に出るようでした。 「ぼくちょっと様子を見てくる」  だるまは高い木に登ったと思

だるま村へ ♯8 『ナニワ』

 雨の日が続いています。今日も二人は濡れながら西を目指していました。浅い谷間を通っている…

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だるま村へ ♯9 『マイゴイヌ』

 マルタと別れてから、だるまは実を採ってカバンに蓄えました。坂を降りながら進むうちに、い…

だるま村へ ♯10 『北の森』

 マルタはアスファルトの道を全速力で横切って、木から降りてきただるまと合流しました。北へ…

だるま村へ ♯11 『カラス』

 朝になっても、雲が立ち込め、霧が辺りを包んでいます。食べられるものも、方角の手がかりも…

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だるま村へ ♯12 『だるまとマルタと』

 南に進んでいくと、見晴らしの良い場所に出ました。遠くには平野が見渡す限り広がっています…

だるま村へ ♯13 『イタチのトト』

「ぼく、だるま村知っとうよ」  だるまはマジマジとその動物を眺めました。小さな頭に丸く立…

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だるま村へ #14 『チカテツ』

  路地裏を抜けると、トトは大きなビルのそばに潜みました。 「真夜中になるとビルが閉まるから、その直前にもぐりこむねん。地下までモータープールになってるから、一階から入りこむで」 「モータープール? 泳げる場所なのか?」とマルタが尋ねました。 「それはプールや。モータープールはクルマっていう箱型の乗り物をたくさん置いておく場所やで」 「あぁ、駐車場のことか」 「チュウシャジョウ? そんな言い方はせんわ。これもお国言葉の違いみたいやね。ほんで続きやけど、このビルは、地下道へ入り