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2021年同人誌装丁まとめ

はしがき

3年目の装丁まとめです。
時折、以前のものもご覧頂いているようで嬉しいです。個人的な備忘録ではありますが、顔も知らぬどなた様かにお役に立つ記事でしたら幸いです。
今年は3冊頒布しました。節目となる同人誌がぽつりぽつりと出た年でしたが今年は去年とは違い、久しぶりにリアルイベントに参加できたので楽しかったです。


①2021.4月頒布|B6横本

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印刷所|レトロ印刷 
サイズ|B6横(ミシン綴じ/M)
ページ|28ページ(表紙込)
 表紙|ねずみ
 本文|スクレ
綴じ糸|ばら(外)、さくら(中)
刷り色|表紙3色、本文2色


▶印刷所について

常時ミシン綴じ印刷ができる印刷所といえば、レトロ印刷さまです。

レトロ印刷様の魅力は、名前の通りレトロな風合いを楽しむことができるリソグラフ印刷です。すべてが同じようにはならないリソグラフ印刷は、様々なインクとの合わせがたまらないです。

インクは期間限定で出てくるインクの色もあるので季節ごとに楽しむこともできるのが素敵です。(様々な印刷判例などをアップされてますので、レトロ印刷様のTwitter、インスタやサイトをチェックしてみてください)

同じような孔版印刷ができる印刷所様は他にもありますが、レトロ印刷様の特徴は元々のサイズ規定があまりないところでしょうか。
基本的なサイズはS、M、Lとあり、作成する仕上がりサイズにより選べるものは変わりますが、今回私は仕上がりがB6サイズ(大判コミックスと呼ばれる青年系コミックスで多いサイズ)でしたので、Mで発注をかけています。


▶本のサイズについて

今回思い切ってあまり見掛けないであろう、B6横長というサイズで作成しております。

元々は正方形サイズを考えていたのですが、本の中身が「文通」にまつわるお話でしたので、横長のほうが雰囲気に合うなと思いB6横長右綴じの本にしました。
変形サイズは可愛くて私は好きなのですが、保管される側としては変形サイズは本棚に入れにくいという声を聞いたことがあり、尻込みしてました。
ですが、そこは同人誌なので、私が作りたいものを作り通しました。


▶印刷カラー

今回は事前にテスト印刷(有料)を行いました。
表紙に黄色のインクを使用しているのですが、テスト印刷の際に事前に紙との視認性についてアドバイスくださりました。

おかげで、素敵な本にすることができましたので、お問い合わせが苦手な方もいるとは思いますが、不安な点などはお伺いするのがベストかと思います。

表紙は3色刷り、本文は2色刷りにしました。
中身が小説なのであくまで本文の文字は可読性重視しましたので、2色刷りというよりは、2色しか使ってないのほうが正しいです。
ですが、色を変えてページごとに楽しめるような組み合わせにしましたので、お手元にお持ちの方は楽しんでいただけたのではないでしょうか。


▶印刷データ作り

中綴じ面付のデータを今まで作ったことがなく、これが1番大変でした。
本文はWordで組版→PDF化してから、Illustratorに移行し入稿用のデータを作成しています。
Illustratorで本文を組版するのが耐えられなかったので、慣れているWordで作成してから整えて作る作業のほうが向いてました。
クリスタがあると恐らく楽なようですが、物書きたちがどのようにデータ作成したのかは出てこず、半分力技で作成しました。


▶紙について

いつもは大好きでいの一番に語る紙ですが、今回はレトロ印刷のみで利用できる紙が特徴的でしたので、色々見てから決めました。
表紙をねずみにしており分厚い紙なので、本文はいつも選ぶようなペラペラな紙ではなく、少し厚めのスクレ(薄いクリーム色~白っぽい紙)にしました。
手に持った時の読みやすさも気にしているのですが、両立できる紙選びができたのではないかなと思います。


②2021.4月頒布|文庫本

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<カバー>
印刷所|プリントオン
カバー用紙|コート紙135kg(マットpp)
特殊加工|ホログラム箔押し
箔種類|リフレックス透明

<表紙・本文>
印刷所|ブロス
サイズ|文庫本(A6)
ページ|130ページ(表紙込)
表紙|エスプリコートVエンボス180kg(アラレ)
遊び紙|クラシコトレーシングFS 52kg(うす青)
本文用紙|美弾紙ノヴェルズ

☆15冊目の節目になった同人誌です


▶印刷所について

プリントオン様とブロス様の合わせ技です。
カバーを先に入稿したので、本文の背幅との戦いをしていました。

カバーだけを小ロットで印刷しようとすると、いくつか候補の印刷所様はあるのですが、箔の種類と使い勝手の良さからプリントオン様を利用しました。

プリントオン様は言わずと知れた、小ロット特殊加工といえばの印刷所様。
通常で置いてあるセットの豊富さも勿論のこと、季節フェアを使うことでのお得さや、オーダーメイド(細かいカスタマイズはお見積もりからお問い合わせくださいね)でカスタマイズが豊富なところが魅力的です。
普段はあまり利用することのない印刷所ではあるのですが、小ロットで箔押しができるカバーを作るとなると印刷所が限られてきますので、今回印刷をお願いしました。

ブロス様は久しぶりに利用しました。
今回1番拘っていたのが本文用紙だったので、1度利用してみたかった美弾紙ノヴェルズを扱っていたのがブロス様でした。
製本の角がしっかりしておりますし、見積もりも何度か取っておりますが、回答が丁寧な印刷所です。また、データ確認から様々なご連絡が丁寧で、また利用したい印刷所様です。
特殊紙も豊富ですし、特殊加工のオプションも多いのですが、何よりも通常入稿日が水曜日でして、ほかよりも遅いという点はギリギリまで書く方向けの印刷所様です。
締切に追われがちな方は一度ご検討してみてはいかがでしょうか。


▶紙について

今回、ホログラム箔をどのように活かすのか、という点に重きを置いています。
この本自体が新しいシリーズの1冊目で、象徴的な1冊目にしたいと考えておりました。
「水辺の純潔」というタイトルをつけていますが、文字通り水辺から浮かび上がるような蓮の花のイメージを添えてセンターの花を箔押しにしています。
ダークブルーの地からのホロ箔が美しく見えるようにしたり、タイトル部分にもホロ箔がかかっているので、透明ホログラム箔をベースの色地の明暗を出すことで、2つの違いを一面で楽しんで貰えるような工夫をしています。
自然光の下で見ることで、より自然なきらきらとしたホログラムを見ることができます。

普段はパールやラメの特殊紙が好きですが、今回は箔押しが主役なので、コート紙にマットPPをかけ、落ち着いた印象になるようにまとめています。

表紙には、エスプリコートVエンボス(アラレ)を使用しました。180kgではありますが、めくりやすく120kgくらいの他の紙と大差ないように感じられます。
アラレにしたことで、少しギザギザとした目を見ることができ、表紙のデザインにはテクスチャをかけたので上手く合わさったと思います。

遊び紙はクラシコトレーシングFSのうす青を使用しました。当初はこれの星くずしが使いたく、一抹の望みを掛けて問い合わせましたが、使う頃には無くなっておりました……。(見積もりの頃はまだ在庫があった)

本文用紙は、一度利用してみたかった美弾紙ノヴェルズです。
twitterではよく本文用紙の話をするのですが、同人誌なので正解はないと思っています。
背幅を出したい人、普通のオプションで使えればいい人、読みやすさにこだわりたい人など、それぞれです。
ちなみに私は利用する印刷所にもよりますが、本文用紙が選べる時は「捲りやすさ」を重視しています。
文庫本の特性上、サイズが小さいので薄くて柔らかく捲りやすい、開きやすい紙であると、読む時の負担を軽減できると考えています。
その点、美弾紙ノヴェルズは柔らかくて開きやすい紙です。
名前の通り、美弾紙のなかでも小説向きの紙なので63kgと薄いです。
美弾紙についてはスズトウシャドウ印刷様のページがわかりやすいです(https://suzunet.co.jp/manual/kamikami/)
説明を読む限りでは、上質紙の厚さがあるのですが印刷所によって取り扱いが異なるのかは、わかりません。
ただ、捲っている時に薄いという印象はないかもしれません。背幅も淡クリームより出ますので、個人的には嵩高の紙のような印象でした。
ページがかなり嵩むと、背幅が出てきて少し開きにくいと思うので限界~250ページくらいでしょうか……。


▶本文フォント

今回初めて、本文に筑紫オールド明朝を利用しました。
目次には筑紫アンティークS明朝を使用しております。
今までフリーフォントに頼りきりだったのですが、有料フォントである筑紫フォントに密やかに憧れておりまして、フォントワークス様が提供している、mojimoの定額サービスを利用しました。

利用しているサービスは、年間ライセンスで利用できる「mojimo-kirei」という、きれいな書体の多いフォントパックになります。(https://mojimo.jp/kirei/)

twitterで装丁紹介をする時に合わせて本文のフォントの話をしたら、フォントを作っておられる方からRTをされ、大変恐縮した覚えが記憶に新しいです。

この本のあとがきにも、うっとりしたと書いたのですが、可読性が高く、筆致が残るような流れる書体の美しさには時々うっとりしています。

ウェイトは少しあるけれど、さらりとした印象とオールドフォントにあるレトロさと、きちんとした雰囲気が合わさったフォントが好きで、筑紫オールド明朝はそれらを兼ね備えたフォントだと思っております。

少しシリアスな雰囲気も出るので、比較的落ち着いた話が多いものを書かれる方にもオススメです。

ちなみに、mojimoは月額で利用できるプランもありますので、有料フォントにはなかなか手が届かないという方も、お試しがしやすいかと思います。


②2021.12月頒布|文庫本

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<カバー>
印刷所|プリンパ
カバー用紙|クラシコトレーシングFS 90kg
特殊加工|シルバーインク印刷

<表紙・本文>
印刷所|ホープツーワン
サイズ|文庫本(A6)
ページ|146ページ(表紙込)
表紙|OKムーンカラーホワイト 120kg
特殊加工|箔押し/銀箔
遊び紙|キュリアスTLイリディセント 55kg
本文用紙|ナチュラル


▶印刷所について

プリンパ様とホープツーワン様を利用しました。

プリンパ様は昨年も利用しておりますが、相変わらず印刷がきれいです。

ホープツーワン様は初めて利用させて頂きました。以前から利用してみたいなと思っていた印刷所のうちのひとつです。
季節ごとフェアのなかで使える紙の豊富さ、箔押しや空押しがお手頃な価格で押せるところが魅力的です。
通常のセットでも利用できる表紙の紙、遊び紙も豊富で、特殊紙が好きな人にはたまらないかと思います。


▶紙について

カバーにはクラシコトレーシングを使用しました。
今回の本は、ジャンル10冊目の本なのですが、真冬の話になっていますので、冷たくてきれいなイメージをたくさん詰め込んだ表紙デザインにしています。
冷たいイメージを包み込み、磨りガラスで閉じ込めるようなイメージで、クラシコトレーシングにしました。

シルバー印刷を初めて利用しました。さらっとした印象になりやすいのですが、印刷面を傾けるとぎらりとしたシルバーの反射を感じることができます。
折り込み部分には雪の結晶を散りばめているので、表側とは少し違う雰囲気を楽しんでもらうことができます。

表紙にはOKムーンカラーホワイトを使用。
とってもきれいなパール紙です。120kgと厚すぎず、柔らかい紙なので開きやすいです。
パール感はペルーラと近いタイプのパールです。
想像以上にきれいな印刷で届いたので、現物見た時に驚いてしまいました。きれいに色が乗っていたので、お手にした方はぜひカバーありとなしで、紙の雰囲気が変わるのを楽しでくださったら嬉しいです。
この表紙に銀箔を押したことで、より美しさが際立っていると思っています。
銀箔も、英字フォントで少し細いかなと思っていた部分もきれいに箔押しされていました。
恐るべき印刷所様の技術。

遊び紙はウィンターセット限定のキュリアスTLイリディセント。
キュリアスのトレペです。キュリアスは好きな紙ですが、さらに好きな紙が増えました。とってもキュートな紙です。
トレペではあるのですが、表面に加工がされておりピンク色のちょっとエンボスっぽい雰囲気のトレペになっているので、下の紙が透けて見えます。
また偏光色に反射する紙で、反射すると緑色に見えるので、偏光が好きな人にもたまらないのではないでしょうか。
今回この遊び紙が使いたくて、ウィンターセットを利用しました。

本部用紙はナチュラルを使用しました。
小説で出される方はあまり使用しない紙なのかなと思いつつ、黄色っぽいよりは赤味のある紙が好きなので選びました。
個人的には読みやすいなと思う紙なので、また使ってみたい紙としてインプットしております。
開きやすさは淡クリーム73kgと変わらないかなと感じたので、選ぶのに迷われる方はどの色味の紙で読みたいかで選んでも差し支えないと思います。

余談ではありますが、この本も本文のフォントは筑紫オールド明朝です。


来年はまた何か挑戦したものを作っていけたらいいなと考えております。今年はきれいな本が多かったので、可愛い本も作れたらいいなと願いつつ、マイペースに創作をしていくのが目標です。

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