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きいろちゃんの短歌まとめ 07

神様の飴と鞭ですお別れのあとにはぜったい素晴らしい虹

どこにでも光はあって寝室のクッキー缶にも月光がさす

必要なぶんだけ残し幸せを瓶に詰めてガレージセール

玄関の扉が海に繋がってしばらく仕事をおやすみします

なんとなくキスの空気が流れたがマスクを取ってするほどではない

袋からピルを取りだしトイレへと放り流せば広がる芳香

ヒイラギでドレスを作るわたくしは処女のままで死のうと思う

自覚なく嘘をついてる(大丈夫、うん、平気だよ。それじゃあ、またね)

あの人は(きっと誰でも好きと言う)ひとつの鈴を私にくれた

ミステリの解決編を破き棄て幻想小説と君は言いはる

我々は宇宙人です果てしない孤独に耐えてハムを焼きます

にんげんをひっくり返す内面を外に出したらあなたウニです

今日までの魔法が溶けたシンデレラめいた社内のオフィスカジュアル

赤ペンで印をつける来月の何でもない日に予感を込めて

意味もなく淋しい日だからラーメンにジャンボ餃子3つのセットで

大雪が降った日のこと覚えてる?ホットワインと犬と無音で

白銀に閉じ込められて世界へと繋がっているのはテレビだけです

わたくしの本質であるえぐ味まで染み出していく冬の露天湯

食卓はまぼろしのごと君たちはステーキとともに消えてしまった

ウィジャ盤で短歌を作るこの場合詠み人はたぶんキツネであろう

現代へ生まれ変わった卑弥呼たちばかり集めたデスゲームです

人生の門外漢のぼくたちの恋の先には結婚がない

「にんげんがいっぱいだね」と言うときの君の背中に天使の羽が

「一人なら殺していいよ」という君は選ばれる者の自信に満ちて

おやすみで終わるつもりのスタンプにスタンプがきて「好き」をうぬぼれ

駅前で序章みたいな歌うたうバンドマンのあたまに、雪が

電脳の世界でぼくらは四季とかを感じられずに川柳を詠む

声上げて泣きながら夜の逃避行 逃げたい例えばあの月とかから

居酒屋でにおいが着くとイヤなのに君が吸ってたにおいなら、まあ

床ともにした夜あの人は今日より遠くなつてしまつた

本当は君を信じていないこと 嘘も含めて好きであること

カツ丼を食べた私に新作のパフェの名を吐すメフィストフェレス

すみませんあいにく良心は留守でして、やさしく返事はできない消えて

これからも変わらないよと言う君はいつしめ鯖が好きになったの?

ひとパック豆腐が落ちてる杉並の住宅街を見守る天使

真剣な話があるのに鰹節は踊るよ on The 豚玉モダン

書いた願い叶えてくれるノートあり書き込まぬまま共に生き、死ぬ

君だけが花に姿を変えました人間が滅び消えた東京で

ぼくたちは選ばれなかった責任をとって立派に人間になる

「あの春の日の思い出をくれるなら、賞金を倍にしてあげますよ」

炬燵ごと浮遊していき会社ではタマと蜜柑と業務をしている

口ずさむ知らないメロディ朝靄でレーテのほとりでことり囀る

途中まで読んだ本を投げ捨てる続きは2人で交互に書こう

わが国はその名を寝具と言いまして本と服と、ぬいぐるみで成る

何枚も写真を撮ってもぜんぶもう過去になっちゃうだから繋ぐ手

あの町は牢獄だった十七のわたしの残滓ごと取り壊せ校舎

人類がふたりぼっちになればいいそれでもきっとコンドームを使う


面白い本の購入費用になります。