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きいろちゃんの短歌まとめ 08

春めいた空に飛び出し四月から魔法少女の資格を取ろう

少女への鍵を見つけたデコレーションケーキの上の砂糖の兎

ミモザ柄のロングスカート未練ではないけど二度と履けないかなって

えんぴつが削られていく丁寧なナイフ遣いが忘れられない

昨春に猫が寝ていた陽だまりにただタンポポが群生している

さっきまで猫を持ってた手に触れる 間接的に愛されている

今日だって世界おわるの 買い置きのハムでつくるサンドイッチと

花筏 優等生でいたかった立ち上がって進む、此岸へ

往復で買わない切符さようなら十八年間ありがとう、町

夜に見た夢は可燃ごみで出す 幼心(おさなごころ)は不燃ごみへと

AIの時代が来てもあなたへのLINEだけは自分で打つから

いつもならここらで帰る遊歩道 曲がってみよう猫町へ行こう

悠久の天使が告げる真実は(白鶺鴒(ハクセキレイ)の尾羽が揺れてる)

飛び込んで。人工の水は清潔で清潔すぎて貴方には毒

来世ではちゃんとするためスクラップブックに貼った去年の落ち葉

君が吐く銀色のけむり空に溶け春をいっしょに迎えられない

正確に覚えた台詞を紡ぐとき神様はいて(もっと飛べるよ)

ねえ聞いた? 総務の新人、去年まで卒塔婆背負ったアイドルだった

堕落論読む君の手ごと抱き寄せた 湿った肌と埃の記憶

もくもくとルーズリーフに綴ってた夢とか着たいお洋服とか

ただいまの日本海の灰色さ取り壊された商業高校

何度目のリープだろうか 君がいた痕跡のない世界で、ぼくは

おなじ棚見てもぜんぜん違うもの買うふたりだから友達なのよ

愛されぬ日々に乳房はただ肉の一部となって体重を増す

文鳥の死骸を埋めた 春が来て庭にポツンと咲いた水仙

百均の南京錠を買い占めるもう誰からも閉じ込められない

人生に仮題をつける「平凡に猫と暮らしたはなし」そうなる

美しく生きたい雨が降った日はレインブーツを忘れず履きたい

この世界救うために辞めますと言えずに一身上の都合と

ホッカイロ代わりに買ったカフェラテのほの温かさ君の眼差し

これ以上生きる意味が無いと泣く彼女が摂った2000kcal

遠くから外郎売りが聞こえてる野生の演劇部員だろうか

素数には二が含まれるぼくたちがいつか溶け合う暗示のように

雪の日に傘をささないふたりだしヒトより少しペンギンに近い

問題は膨らみきった蕾からいったい何が生まれてくるか

黴臭い幻想文学の書を捲るあなたはまるで賢者のようで

プリンには玩具みたいみたいな赤いチェリー私の指にはガラスの指輪

海のようなバターで作るオムレツを「幸福」と名付け彼は笑った

もう少しページを繰れば終わるけど終わらせるのはいやよね、アリス

ぽつねんと啜るコーヒーこれまでの因果の果てとしてのひとりだ

幸せな夢を見ていた気がしてる起きたら泣いてしまってたから

本当はどこでもいいの行先は流行りのパフェを口実にして

今週はおさんぽ運が絶好調おにぎり持って果てまで行こう

寂しさの応急処置をしていますジェネリック恋差し上げてます

これからは毎日パンを焼こうと思うたまにはジャムを塗ろうと思う

照り焼きが上手く焼けない日があって三年前の手紙を捨てた

どんな日も酒場の明かりは優しくてせんべろセットは裏切らないね

好きという言葉だけでもぎ取った暴利のような一晩だった

はっきりと言葉にすれば逃げるから歌ってあの日のメロディのまま

愛情を出前で頼みあつあつの鍋焼きうどんが届いたはなし

【交換】求:無償の愛とめし 譲:あなたにうまれる母性

脳髄に機械刺しこみAIに拡張させた思考は誰の?

洗い物少なくするため丼に乗せられた目玉焼きの気持ちは

また君は谷崎が好きと言い張って春琴抄しか読んでないのに

棄てられた人工の夢 屋上で観覧車はまだ廻りたいのに

アカウント脱ぎ棄て変える人格はアルファベットの羅列に過ぎない

幸せは状態であり動作じゃない幸せをするたったふたりで

少しずつ減るような恋ばかりだとあなたは花弁をちぎり飛ばした

ねえ私いつもとどこか違わない?そうなの脳のアプデをしたの

君にしか救えない夜 恋人ができる前にはなかった孤独

巣穴からあたまを出した子うさぎが幸せだけを見れますように

狭義では恋をすること広義では並んで花や月を見ること

今ごろは犬を抱いているだろうふるいLINEを読み返す夜

ハローハローこちら2023年 未来の今日は晴れていますか?

教養や詩情があれば淋しさを正しく伝えられられるか詩人

あの人の来世はきっとトンカツの宣伝をする豚のキャラクター

壁に貼る絵葉書、ポスター、ポラロイド 壁に染み込めわたしの感性

股のぞき見える世界は少しだけ違っています飛ぶペンギンら

電車には見知らぬ「誰か」が詰まってて全部に意思があると思うとこわい

赤と青どちらを切っても爆発しそれは選ばれなかった悲哀

時止める能力をもつうさぎありそれはそれはとてもふわふわ

そのむかし、うさぎが神であったころ雪は救いと同義だったと

ぐつぐつと蟹味噌を炙る真夜中の磯丸水産で祈る安寧

乱視用眼鏡を外せば月が増え世界はとことん不確定です

今はもう平気ですけど内臓に刺さったままのあなたの棘が

食パンに納豆チーズ乗せて焼く家のなかでは自由でありたい

60分以内に全ての謎を解き僕を愛せば脱出成功

面白い本の購入費用になります。