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あなたの「好き」は気持ちから?言葉から? -「好き」は作れるというはなし-

好きな人はいますか?
片思いの相手、恋人、結婚相手、主従関係の相手、パートナー、セフレ、不倫相手、沼(って最近言わなくなったわね…)、忘れられない相手。相手との関係性は何であれ、「好きだなあ」ってたまに思う人のことです。

楽しいですよね、「好き」の気持ちって。
何しているのかなあと考えてしまったり、素敵なものを見つけたら共有したくなったりとか、もしかしていま同じ月を見ているのかなあと想像したりとか。ふとそんなことを考えてしまう自分に気が付いた時、「ああ、もしかしてこれが『好き』という感情なのかしら」なんて考えたりします。

「私には恋というものがわからない」と日々公言して憚らないのですが、私は子どもの頃にどこかの少女漫画で読んだこんな言葉を忘れずにいます。
「恋に落ちる理由はない。恋に落ちる瞬間があるだけだ」
というものです。なるほどな、こういうものなのだと思って平成を生き抜き令和を過ごしています。

さてはて、そんな「好き」という感情ですが、本当にその「好き」は「好き」から出てきたものですか?

言葉が関係性を作る

「私たちは友達である」とか「私たちは恋人同士である」とか、そうした関係性はいつ生まれるのでしょうか。
現実世界はゲームではないので、好感度が○○を超えたら友達関係である、なんてものはありません。LINEの友達になったら?一緒に遊びに行ったら?サシ飲みしたら?どこからが友達って、考えてみるとよくわかりません。
でも「恋人」は、告白という明確な契機を経てそれ以前は「友達」または「知り合い」とかで、それ以降は急に「恋人」になるわけです。考えてみればそれも変な話です。
たった一言二言で関係性がゴリゴリッと変わって、相手への接し方が変わるなんて、ヘンテコです。
実際問題、告白の直後から相手への接し方が変わるのは中高生の恋愛くらいな気がします。ある程度段階を踏んで、親密さを増していくことになります。それは「我々は恋人同士である」という共通認識が出来たから産まれます。
告白を受ける際に、お互いの「好き」が両方MAXではないこともあるでしょう。まあいっか、別に断るほどでもないし、といって恋人同士になったとしても、なんとなく一緒にいるにつれて好感を持っていくのです。

恋人ではない場合、最近よく見かける主従関係においてはこれはなおさらに顕著です。
ある日突然、一方は「ご主人様(またはその関係性で適した言葉)」に、一方は「奴隷(またはその関係性で適した言葉)」になるわけです。
よくSMを知っていそうな人たちは「SMには信頼関係が必要で、信頼関係を築いてから関係を持とう」なんて言います。でも、実際問題「関係を持ってみないとわからんこと」がたくさんあります。意図的な嘘つきでなくても、これは当然あることです。
のめり込みやすいタイプなら、「君は今日から僕の奴隷だよ」と言われて、そのままキュンと入り込んでしまうのでしょう。でも、みんながみんなそうじゃないですよね。少しずつそういう関係性でお互いにコミュニケーションを取るうちに、自然に2人のいい感じの関係性に収束していく。
新しく2人の関係を作るのは、時間がかかって、面倒くさくて、大変で。だからこそ尊いものではないでしょうか。

しかし、その関係性を作る時間を短縮する方法があるのです!
というわけで事前に調理しておいた料理がこちらです(料理番組のてい)。

他者の視点が関係性を加速させる

「私たちは友達である」と認識しているけど別に特に言葉に出して「私たちって友達だよね?」と確認しない2人がいます。
そこに第三者が現れて「お前たちって本当に仲がいいよな」と言われると、「ああ、私たちって仲良く見えてるんだな」と思うわけです。そうして2人は友達であると周囲に扱われ、より友達になるわけです。

主従関係においても、第三者に向けて「我々は主従関係にある」と明言することで、さらに関係性が加速していきます。
他者からそう扱われること。あなたが○○である、私は××である。
なんとかの監獄実験を例にとらずとも、ごっこ遊びは複数人で本気で行うことで「真実」になっていくのです。

そしてもう一つ。SNSで「我々は主従関係にある」ということには別のポイントもあります。相手のことを「ご主人様」「飼い主」「ペット」「奴隷」……なんでもいいんですが、そう呼ぶこと、つまり能動的に発することにより、どんどん自分自身に「相手は××なんだ」という認識を刷り込んでいくのです。

「私は可愛い」と言い続けると本当に可愛くなります。本当です。だから、最初は違和感があっても、相手を無理くり「ご主人様」と呼び続けることで、いつの間にか本当に「ご主人様」であるなあ、と認識してしまうのです。
相手のことを「好き」と言い続けるうちに、気づけば「あれ?なんか本当に好きな気がしてきた」と気持ちが出来ることだって、全然あります。

だから、SMプレイにおいてS側はマゾに対して「ご主人様」「○○様」と呼ぶことを躾の第一歩にするわけですよね。それだけではなくへりくだった言葉遣いをさせることが、関係性構築のためのプレイの第一歩になるわけですねえ。

悪いことではない

批判的にというか、皮肉的に書いていますが、最初に関係性に名前を付けて2人の仲を深めることは、決して悪いことではありません。むしろ仲良くなっていいんじゃないですか。

ただ、どうしても世界には「悪い人」がいて、「悪い人」はこういうことを悪用してきます。あなたの好意を、あなたの善意を、あなたの恋心を。
上手に遊んで、上手に遊ばれる。遊び上手、遊ばれ上手だけが世界にいるわけじゃないのが現実です。

そして、冒頭にも書いた通り、「私には恋というものがわからない」というのがあります。恋ってなんじゃ、わからん。
だから、無邪気に「恋」という関係性を信じられるあなたが、羨ましいのです。

それだけ。

面白い本の購入費用になります。