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きいろちゃんの短歌まとめ 10

あゝ盛夏 さかりを過ぎた向日葵が種子つけるまでに終わる関係

飲み干したレモンスカッシュ ここからは君を名前で呼ぶことにする

幸せのちょい見せみたいに見切れてるフルーツパフェの背後の彼女

たいせつな石は十回水を切り川底でながい眠りについた

こう見えてひとりでラーメン食べれるしポイントカードも溜まりそうだし

嬉しくてお酒を呑んで悲しくてお酒を呑んでともだちにになる

わたくしを養分として咲く花に言葉をつけてください かしこ

ならば鵼、つひに飛ぶのかわたくしはとうにをんなになつてしまつた

深海のように静かな図書館で青春たちが私語をしており

不機嫌な君に差し出すまんまるのポムポムプリンは*(おしり)を見せて

わたしたち揃って前厄だけれども今夜のビールも美味しいですね

思い出になってく過程で消えていく埃や塵を絵葉書にする

一発の打ち上げ花火で足を止め繋いだその手はひんやりとして

飛ばされた帽子はやがてこの街を抜けて海へと漕ぎ出すだろう

きっかけは平凡すぎて一冊の本にもならない恋をしたこと

あたらしい慣用句になる寝姿で猫は新居で根城を見つける

あの人も魔法が使える顔をして、所詮人間だった、解けた

本当のことを歌えと先生は言うけど、それならあの夜の歌

本ならばここで区切りとなるような入道雲を見つけた僕ら

もう着ないだらう浴衣を捨てられずあの子はとうに大人になりて

立ち眩み どっちを見ても青空で夏に囚われひとりぼっちだ

どれだけの夜が明けたらあの朝に繋がるだろうか水蜜を剥く

本当にふるさとだらうか 老人がすいすい自動改札を抜ける

チョコミントパフェの巨大な引力に逆らいきれずに扉を開けた

万華鏡に閉じ込められた魔女がいて安いビーズは星屑になる

冷コーは魔法の言葉 どの街のカフェもすぐさま大阪にする

自販機は売り切ればかりで蝉たちがさらに激しく暑さを煽る

代替品ばかり食べてる放課後に寄り道をした中華そば屋の

テンションが低めの君を見かけたらねこの写真を送ってあげる

ある意味で、本屋は給水所であって干からびた街の救いでもある

同じ日に芽吹いたぼくらの運命が些細な陽当たりとかで別れた

いつだって扉の鍵は開いていて脱出しないことを選んだ

限りなく人間らしく振舞って汚れてしまったこころよ、ごめん

100いいね200いいねと重ねてもまだ君からのLINEは来ない

面白くなかったねと言い笑い合うために利用し消費している

右側に君の不在を感じても右向きに寝る癖が消えない

また本屋の文具コーナーが広がって世界と私が断絶している

夏だねと浮かれて小玉スイカ手にあれ君の家に包丁あるっけ?

巻貝を耳にあてれば海鳴りとともにあらはる幼年期の我

ふるさとが他人のように出迎える建て替えられた駅舎に降りる

ひと花に留まる蝶がいないごと君を飛び立ち夏へ向かった

守れない約束ですがもし君が死ぬなというなら善処しますね

わたしでは絵にならなくて半分に割ったパピコを渡せなかった

はじめての盆地の夏は耐え難く一回生らが群がる部室

咲き果てて茶色く朽ちて強すぎる陽に晒されてまたね紫陽花

あの夏夜、確かに世界がぼくたちのものであったあの日の絆を

夏だから愛してください それくらい軽率にいる人類であれ

恋猫に数はわからぬまた買ってしまった漫画の五巻を並べる

またダメにしてしまった冷蔵庫の中のモヤシに処刑されます

この星の玄関として選ばれた駅前の松屋に並ぶ異形ら

少しだけ大人になったし許可しますカップ焼きそばも焼きそばでいい

だいすきなあなたの欠片くちに入れじっくりと噛むひとつになれる

どんぶりの底に書かれたありがとうのために摂った塩分が死因

ただ花を見にいくために揺られてる電車がカーブを曲がる、見えた

いつかぼくらお終いが来るそのときのためにシチューのレシピをあげる

ひとりでもホラー映画は見られるしほら、もう君がいなくてもいい

向日葵が太陽になる国があり目が潰れるまで眺めていました

この地までガシャポンの森が侵食し東京に少し天気雨降る

愛情は潮(うしお)のように満ちていき海が世界を覆う日がくる

久々に食べる故郷のラーメンは中華そばって呼んであげたい

八十億ぼっちの人類 天の川越えるてつながる夢をみている

賃貸の壁に画鋲を刺していくわたしはここでまだ生きてます

わかってるずっといっしょに居れぬこと けれど並んで眺める落日

残念なことに賢く生まれたしあなたの心もわかってしまう

かっこいい王子はとうに絶滅しわたしがきみを攫っていこう

強くなるために支払う代償を考えわたしは弱いままです

穏やかな海しか知らぬ人といてわたしのなかで遠く雷鳴

お隣のビルまで竹を通してさ、流し素麺してみたくない?

太ももに並ぶ痕跡 彼のもの蚊のものどちらが長く残るか

夢くらい自由に見せて夕暮れのサターンバレーで淹れるコーヒー

干からびたミミズの死体 蝉の殻 わたくしの皮 真夏の陽射し

失恋の経過観察 あすからはケーキは控え週2にしましょう

シロクマの毛は透明だと教わった頃のわたしも透明だった

模倣するAI(あい)に心はなきとても僕らの声と結ばれてゆく

音もなく不在通知を入れていく忍者のあなたへクレーム入れた

傷ついたバッグはなぜか新品のときより馴染んで愛おしくって

修理して使い続けた心だし、死ぬまでなんとかわたしでいたい

残ってる野菜をまとめて煮たものです名前のつかない今日の夕食

ほどかれるためにリボンを結ぶ夜はじめてアロマキャンドル点けた

本よりも重たいものを持ちすぎた右手を労るやうな霧雨

猫背でも二重顎でも猫かわいい 猫背矯正ベルトを捨てる

烏有、烏有 全部無くしてがらんどうの心にきれいな石を詰め込む

通行人Aを演じて歩くときあなたは誰かと手を繋いでいる

淋しさの起源を調査・分類し気圧とホルモン以外はほぼ無い

繰り返す内出血も失恋も特効薬は焼肉のみで

美しき比喩が得意な恋人が酔ゐてただただ好きと云つてる

いくらでも値段をつけて昏昏とねむるわたしは買われていつた

堅牢な砦のなかにひと粒のプチトマトを置き腐らせるごと

肺病みの祖父の声ふと思い出し時間は途切れず続いていること

いっせーの「頑張らないでモテたい金地位欲しい無理かごめんね!」

怒ってる/怒っていない 感情を花占いへ託して仰ぐ

前よりも上手になった生き方と無くしてしまった感情たちと

悠か、とはかういふものよと山頂で三ツ矢サイダー空へ掲げる

さても夏 入道雲はおそらくはアイス屋さんの手先であろう

午後五時に魔法はとけてOLの姿が消える仕様のわたし

子を為さぬ行為は遊戯 あたしたち大人になったら交尾をしよう

面白い本の購入費用になります。