【多重解ミステリ】が好きだ~~~~!ってはなし
というわけで、「犯人選挙」を読み終わりました。やっぱり多重解モノは面白い~~~~!!! でも、なかなか多重解モノのミステリってないですよね。ということで多重解モノについておしゃべりしたいなあと思いました。
多重解ミステリとは
「多重解」ミステリ、ミステリマニア以外にはピンとこないワードかもしれません。「多重解ミステリ」は、その名の通り「解(真実)」らしいものが複数ある作品のことを指します。犯人が複数あるものもありますし、トリックが複数あるものもあります。
えっ、「真実はいつも一つ」じゃないんですか!?
犯人が複数(共犯ではない)ってどういうこと!?
と思われるかもしれません。多重解ミステリは「推理合戦」モノと言われることもあります(全てが全て推理合戦ではないと思うんですが)。登場人物たちが1つの事件についてそれぞれ推理を行い、それを披露しあう。
まさに舌戦。ミステリのカタストロフである解決編が続きまくる面白さ!
推理合戦を行うなんて、もちろん登場人物の多くが探偵やミステリマニアになります。まさにミステリマニアのためのミステリ、メタ的な楽しみがあるのも多重解ミステリの魅力です。
そんじょそこらのミステリ(刺激)は飽きてきた私は、多重解ミステリを求めてしまうのだった――。
ということで、好きな多重解ミステリをご紹介します。
その可能性はすでに考えた/井上真偽
「探偵が早すぎる」あたりが有名な井上真偽の作品です。これがとにかく面白くて、めちゃくちゃ好きで、めっきり多重解ミステリ好きにさせられました。
何の説明もなく登場する「上苙丞」(読めない。うえおろじょう)――青髪に赤い装束、<奇跡>を証明するのが目的というなんともキャッチーな名探偵に、ワトソン役は姚扶琳(ヤオフーリン)という中華美女。しかも彼女は探偵に多額の金を貸しているという。最初に読んだときは「シリーズもので過去作をすっ飛ばして読んでしまったのか…?」と思ったものですが、そんなことなかったです、カオス。
彼らが挑むのは、過去に山村で共同生活を挑んでいたカルト宗教団体で起きた斬首集団自殺の真相。あの時に起きたのは果たして奇跡なのか?
昔の事件だからこそ情報も少ない中で、探偵が事件を推理――
すると思いきや、推理を披露するのはぽっと出てくる謎のライバル!たち(!?) バンバカ披露される激ヤバ推理!!
<奇跡>を証明するのが目的である上苙は、「あらゆる可能性を否定し、それでも否定できなかったら<奇蹟>が証明される」という。
だからこそ、どんなトンデモ推理でもなんでも「否定されない(矛盾がない。論理的にツッコミが出来ない)」のであれば奇跡となる。
ライバルたちが展開する「いやそれ無茶があるでしょ!でも論理的に矛盾はなさそう!?!?!?!」なハチャメチャ推理に対し上苙が言い放つのです。
「その可能性はすでに考えた」――と。
とにかく面白い、めちゃくちゃ好きなミステリなのでぜひ読んでね!(※ウエオロの推理って、JDCシリーズ(清涼院流水)の霧華舞衣ちゃんの消去法と一緒だなって思ったんですけど共感してくれる人は友達になりましょう)
ミステリー・アリーナ/深水黎一郎
冒頭で「犯人選挙」を引用しておいてミステリー・アリーナのほうを紹介するの!?という幻聴が聞こえますが、絶対的にミステリー・アリーナのほうが面白いです。
深水黎一郎作品は読めていないものも多いのですが、最初に知ったのは「読者が犯人」というトンデモトリック(?)で有名な「最後のトリック」でした。ミステリの犯人の意外性はもうやりきっていて、探偵が犯人で全員が犯人で作者が犯人でとかはもうある!という中の残された手段「読者が犯人」をやり切った作品で、とにかくもうトンチキで……というのはおいておいて。
そんな尖った作品を世に出す作家による作品です。
まさに多重解モノに正面から挑み、料理しきった名作だと思います。多重解モノって、推理合戦が基本だから勢いがあって一気読みしたくなるんですが、それだけではなくオチまで秀逸なのでまさに「最後までチョコ(ミステリ)たっぷり」な気持ちです。
冒頭で引用した「犯人選挙」も面白い試みの作品です。というのもタイトルの通り、WEBで問題編を掲載し犯人を読者投票させた、という作品なのです。もしかするとリアルタイムでこの選挙に参加したら、もっと面白がれたのかもしれません。
でもなんかあれだよね、メールゲーム(プレイバイメール)みたいだよね。メールゲームのミステリ版みたいな感じがしなくもない。
密室殺人ゲームシリーズ/ 歌野晶午
この作品、大ッ好きなんですよ~~~!!!何度読み返したことか……!
ミステリマニアが高じすぎて、現実世界でミステリのような殺人事件を自分の手で起こし、その出題に対し推理をし合う――
話題になっていないだけで、バトルロワイアル並みの問題作だと衝撃を受けたんですが、それは私がミステリマニアだからでしょうか?
設定、キャラクター、興奮、びっくり。もうすべてが最高で、2年に1度くらい友人に「密室殺人ゲームみたいなことがしたい~~~!」とわめいて問題児を見る視線を得ています。
やりたくない? 私はやりたいけど殺人は出来ないよ……。
「日常の謎ゲーム」くらいならだれか乗っかってくれるかな……。
おわり
最初にも書きましたが、多重解ミステリって本当に「ミステリマニアのためのミステリ」なんですよね。
最近は密室殺人が起きたときに「なぜ密室を作ったんだ!」「ミステリマニアとしての血がうずいたのさ」みたいな密室理論は古臭くなってしまい、見かけなくなったものです。しかし、たとえば密室殺人ゲームのような作品なら「ミステリマニアのための殺人」が当たり前ですし、「殺人事件をゲームか何かのように茶化して……」なんて面倒なお説教も「うるせえこっちは推理合戦をしてるんじゃ」と一喝できます。
ミステリマニアである読者=私がどことなく客観視され、そしてメタ的に作品内に存在しているような。
多重解ミステリは、面白い!
というか、面白い多重解ミステリがもっと世に出てくれますように!
面白い本の購入費用になります。