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「体験型読書」は面白い✕面白いの掛け算なのか?

自分の中でも結論は出ていないのだ……。

こんにちは、先日話題の新作小説が発売されました。

道尾秀介の「N」という作品です。この作品、何が話題かといえば帯に「あなた自身が作る720通りの物語」と書いてあるのですが、全6章ある物語をどこから読み始めてどの順番で読んでも成り立ち、読む順番により物語の読後感や世界が変わるよ、みたいな触れ込みなのです。
つまり、6!(6✕5✕4✕3✕2✕1)=720通りの物語があると。
しかも、そうは言ってもいい子の日本人は章立て順に読みそうなものじゃないですか、それを避けるためにわざわざ章ごとに印刷を逆さまにしているのです。

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こういうヘンテコな本は……「お前、こういうの好きやろ?」と煽られているのを感じる……。仕方ないのでホイホイ購入して読みました、はい。

「N」の感想も含めて、こうした読者が能動的に体験する感覚を味わえる作品をいくつかご紹介しようと思います。

はたして、「体験型読書」は面白い✕面白いの掛け算なのでしょうか……?

袋とじまみれの本

2冊書いたくなる、マーケティングの鬼のような本(違う)

こちらの小説、本屋で見かけたら手にとってみてください。びっくりしますよ。大量の袋とじで構成されているんです
そして、袋とじを閉じたまま読むと短編小説が楽しめて、袋とじを開けて読むと長編小説が出てくるんですが、袋とじの短編小説は消えてしまうのです
頭おかしいでしょ……書く作者も作者だし、GOを出す編集や出版社もだし、印刷を請け負った印刷所もだし。ぜんぶがトチ狂わないとできない素晴らしい作品。

ヨギガンジーシリーズはしあわせの書も読んだのですが、こっちもこっちでやばい。「絶対私なら思いつてもやらないwww」をやるから痺てちゃう。

証拠が入た本

本は本の形を取るだけが本じゃない(?)。推理小説の世界では、読者である私(あなた)が推理することを主眼においた作品がたまに登場します。そのなかには、証拠や手がかりが筆者による小説という形以外で提示されるものがあります。

私が持ってない作品もあるので、簡単にご紹介まで(欲しい)。

暗号で書かれた本

全編が暗号で書かれた本です。読めません。

実験小説

なんなんだこれは。

おわりに

文学で言えば、ある種の実験小説と言えるのかもれないですが、しかしエンタメ寄りの小説でこういうカオスなことをされると、実験型小説よりも体験型小説と呼びたい気がしてきます。

きっと、100年前は「読者への挑戦状」でキャッキャしていたのでしょう。しかし現代の舌の肥えた我々はそれだけでは満足できず、挑戦状以外の作者の遊びを探してしまうのです。

ここでは取り上げませんが、もう現代の小説は紙の本を飛び越え、トランスメディア、クロスメディアで作品を作り上げる時代になっています。これはいわゆるIPものだけではありません。こわいね。

さて、冒頭のNの感想ですが、思ったほど面白くはなかったな……、とぼんやり思っています。まあ、どの順番で読んでもいいし、たしかに読む順番で読後感は変わるだろうけど、それだけというか……。まあ、それだけですよね……。読む順番が変わると犯人が変わるみたいな、そういうのを想像していたから肩透かしだったな。残念。

小説よ、もっと実験しよう。
エンタメよ、もっと実験しよう。


面白い本の購入費用になります。