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愛はきっと伝播していく

『どこ座るー?体勢辛かったら言ってねー』
行きつけのパン屋でパンを頬張っていると、髭を生やしたおじいさんと、3.40代の女性が、隣にやってきた。
どうやら会話を聞いていると、父と娘のようだ。女性は自分の息子の写真を、父親と思われる男性に見せている。おじいさんは孫の写真を嬉しそうに見ている。

 今日は去年亡くなった祖母の命日だ。母親も、祖母や祖父に、入学式、卒業式、旅行のときに撮影した私の写真を毎回毎回焼き増しして、渡していた姿に重ねた。そんなに渡してどうするだろうと、子供の私は感じていた。それでも、可愛いなあ、よく撮れているよ、と微笑む、祖父母を思い出した。

 年老いた父親と娘が、歳を重ねてもこうして、お茶をしている光景が、どこか微笑ましくも、切なく、自分自身と両親、両親と祖父母、そうやって続いていく愛をふと感じた。
気づいたらパンをかじりながら、目が涙でいっぱいになっていた。自分にとって、絶対的な存在だった両親もこうして歳をとっていく。隣にいる親子のように、歳を重ねても、結婚をして旦那さんという大切な存在ができても、近くのショッピングモールで、お父さんに気晴らしの時間をつくってあげられるような娘でありたいなと思った。

 側に全力の愛を注いでくれる両親、そして彼氏や友人がいる。すごくありがたいことだ。なのに、今とても寂しいのは、きっと祖母が亡くなったときの寂しさを思い出してしまったからだ。だけどせっかくなら、寂しさではなくて、今日を感謝の日にしないと。

 とにかく伝えたい、愛をたくさんありがとう。泣いてちゃだめだ。私もこれから愛をたくさん与え続けられる人にならなきゃなあと。なんとも言えない切ない気持ちと感謝が不思議なくらいわき出てくる。だけど、きっと明日起きたら、涙は渇き、すっきりした朝が待ってる。
明日からもまた頑張らなきゃ。

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