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東大に入っても安心できない現実【履修と進振り】

〜前回までのあらすじ〜

2018年4月、一年の浪人生活を終え、晴れて東大理IIに合格した俺は入学直後から「東大の闇」をまざまざと見せつけられていた。

有名進学校出身者が我が物顔で跋扈する駒場キャンパス、そして女子大との出会いの場として機能し、東大女子の入部が許されない「インカレ」サークル...

しかし、これはまだ「東大の闇」のほんの一端に過ぎなかったのである。


〜本編〜

授業開始から3週間ほど経った。この頃になると大学の授業にも少しずつ慣れてきて、自分が大学でどう友人と絡み、どう振る舞っていけば生きていけそうかがわかってきた。

(東大生はいわゆる「クセが強い」+自分の興味のない話に関心を示さない奴が多いので、特に入学当初は「聞き上手で攻める」のが賢明)

そんなこんなしているうちに、「アレ」の時期が近づいて来る。


「履修登録」である。


一般の大学であれば「どの講義を取るか」というのは「どれだけ楽に単位が取れるか」でしかなく、さほど重要なものではない。

しかし、こと東大はワケが違う。東大生には今後の人生を大きく左右する「進振り」という制度があるからだ。


ここで「進振り(今は「進学選択」とか言われている)」についてご紹介しよう。

進振りは簡単にいうと「1,2年の前期教養のテストの点数が良かった人から好きな学部学科に行けますよ」という制度である。

普通の大学は「経済学部経済学科」とか「工学部物理工学科」とか、高校時点で学部学科を絞って出願・受験するが、東大の場合は入学時点ではどの学部学科に行くかは未定であり、文系なら文科I,II,III類、理系なら理科I,II,III類という大まかな括りで出願、入学する。

しかし、この分類によって「進振り時に定員が多く設定されている学部」が異なり、文科I,II,III類の順に法学部、経済学部、文学部が最も多い。理系ならば理科I,II,III類の順に工学部、農学部、医学部といった具合である。

そういう大まかなカテゴリーに属した上で、各学部から指定された評価方法(わかりやすくいうとテストの平均点)で進振りを行うわけである。

とはいうものの、東大生のほとんどは将来やりたいことなど考えず、周りが行くから「なんとなく」東大に入ってしまった(それでも十分すごいけど)ような人ばかりであるため、「文一だけど法律興味ねえ」とか「合格点低いし、浪人したからとりあえず理二入ったわ」(私)とかいう人が続出する。

そういうモラトリアムな東大生を点数で競わせ、怠け者を排除し、入学後も「点数至上主義者」を量産し続けるシステムが「進振り」なのである。(怖

つまり、東大の教養課程の存在理由はひとえに「選別」と「差別化」であり、入学後の「落ちこぼれ」を徹底的に冷遇するエリート思想の産物なのである。

よく「入学後に専門を決められることに魅力を感じた」と語る東大生がいるが、完全に洗脳されていると思った方がいい。

そもそもそんな保障は誰もしてくれないし、行きたい学部に行けなくて泣きを見る者もゴマンといるのだから...。(しかも、たいていそういう人の情報は表に出てこない)

つまり、新入生は入学したと同時に「高校4年生」となり、過酷すぎる「受験戦争」をもう一年戦わされるハメになるのだ。

となれば、賢い東大生の意識は「いかに楽に単位を取るか」だけではなく、いかにコスパよく「点数」を取れるか、というところに向く。あくまで基準は「点数」なのだ。


しかし、知り合いや先輩がおらず、有益な情報をゲットできない東大生はどうすればいいのか?


心配ご無用、東大には「逆評定」なる最強の味方が存在するのである。

逆評定とは時代錯誤社というヤバめの宗教団体のようなサークルが出版している冊子で、各教員が行う授業の単位取得のしやすさ、高得点の取りやすさ、テストの難易度等が一覧となって表示されている。

時代錯誤社の定期新聞はいかがわし過ぎて誰も買わないのだが、逆評定はまさに「飛ぶように売れる」。逆評定発行の時期になると、駒場生が駒場キャンパス正門前に溢れかえり、コロナ禍の今では考えられないほどの「密」状態が出来上がる。

確か一冊300円くらいだったと思うが、東大生はとにかく「高得点を取りたい生き物」なので、クラスのほぼ全員が逆評定を買い、食堂で同クラと集まって「分析会」を催し、どの講義を取れば点数が最大化されるかを日夜(授業中も)考えるのだ。

そうなれば、当然「コスパの良い授業」に人が殺到し、講義室が人で溢れかえる。1000人くらいは収容できそうな駒場で最も大きい900番講堂でさえ立見の学生でごった返し、既に少し暑い5月あたりには教室が真夏のような熱気に包まれる。

そんなこんなで右往左往しながら、東大生は履修を決定していく。

確かに、同クラが多く取っている授業の方が対策しやすいし、何よりテストの時にはクラスから選出される「シケ対」(=試験対策委員。たいてい開成や灘の人が担当し、過去問とかを解いて皆に共有してくれる)が有益な働きをしてくれるので、そういう意味でも「長いものに巻かれる」のも一つの選択だと思う。

ただ、注意してほしい。逆評定も完璧ではないし、教員が逆評定の存在を知っていて前年と出題傾向を変えたり、評価方法を一新することもないわけではないのだ。これから東大に入る人は、その辺りを教員の話や友人から探りつつ決めていくのが良いだろう。

進振りは人によっては天国も、地獄も経験しうる。いつか入学されたあなたが、東大の「闇」に飲み込まれないよう、引き続きリアルな情報をお届けしていこうと思う。では。。

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