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菅総理の出身地、秋田県でいいの? 首相官邸ホームページの「出身地」記載を調べてみた

2021年9月3日、菅義偉首相が自民党総裁選への不出馬を表明した。そんな菅首相の出身地が、官邸のオフィシャルウェブサイトで「秋田県」と表記されている(2021年9月9日時点)。

首相官邸HP 2021-09-09 214930

秋田県湯沢市で生まれ育ったんだから当たり前だろうと思われるかもしれないが、首相官邸ホームページの「出身地」記載ルールは、歴代内閣一覧のページで下記のように明記されている。

4: 出身地は原則として、戦前は「出生地」を、戦後は「選挙区」を記載した。

この原則に従うなら、菅義偉首相の出身地は神奈川県になるはず。ホームページリニューアル前の記述だが、現行サイトの歴代首相プロフィールを見ても、このルールが引き続き受け継がれたようだ。2001年以降に新たに就いた総理大臣を振り返ってみた。

1、安倍晋三氏

東京生まれ東京育ち、選挙区の山口県を記載。

首相官邸HP 2021-09-09 214924

ちなみに第1次政権時も山口県で表記。若いですね。

首相官邸HP 2021-09-09 214928

2、菅直人氏

山口県生まれ山口県育ち、選挙区の東京都を記載。

首相官邸HP 2021-09-09 214925

3、鳩山由紀夫氏

東京生まれ東京育ち、選挙区の北海道を記載。安倍氏と同じパターン。

首相官邸HP 2021-09-09 214926

4、麻生太郎氏

福岡県生まれ東京育ち、選挙区の福岡県を記載。

首相官邸HP 2021-09-09 214927

5、福田康夫氏

東京生まれで関東地方を転々。選挙区の群馬県を記載。

首相官邸HP 2021-09-09 214929

※生まれ育ちと選挙区が一致している野田佳彦氏(千葉県出身)や小泉純一郎氏(神奈川県出身)は割愛した。

菅義偉首相にだけ新項目

ここまで並べてお気づきの方もいるだろう。菅義偉首相だけ、出身地とは別に新たに「衆議院議員」の項目を設けて「神奈川2区、当選8回」と記載している。日本の総理大臣のポジションは、慣例的に代議士たる衆議院議員からしか選ばれない。もちろん制度上は参議院議員にも資格はあるが、衆院選出である菅義偉氏が首相のタイミングで、わざわざ別項を立てて書く必要は薄いだろう。当選回数の表記も、総理大臣就任時点の回数なのかどうか分かりにくい。

歴代の首相については今のところ記載していないようだが、今後更新されるのだろうか? また、次の衆院選で菅義偉氏が当選した場合、当選回数は更新するのだろうか。

秋田県初の総理大臣という功名

先述の記載ルールには「原則として」という、霞ケ関らしい注釈が付いている。では、単純明快な出身地の記載ルールで、なぜ原則を外れる書き方をしたのか。おそらく、菅首相としては「秋田県出身初の総理大臣」として就任を盛大に祝ってくれた秋田県の支援者も、自分を8回も当選させてくれた神奈川県の有権者も無下にできなかった。菅首相の2か所の大切な地元をどう記載するか、官邸スタッフが知恵を巡らせた結果、新しい項目を設けたのではないか。

本件について、9月6日に首相官邸ホームページから問い合わせてみたが、今のところは回答はない。コロナ対策で忙殺されているであろう官僚の方に、こんなトリビア的な問い合わせを投げてしまったので、手が空いた時にお答えいただけると幸いである。次の首相着任までに答えが届いたら追記したい。

菅直人氏は山口県出身ではない?

総理大臣の出身地を巡っては、山口県庁が主催した「山口県の総理大臣展」が話題になったことがある。

本県出身の安倍総理大臣の総理在職日数が憲政史上最長となられたことを祝するとともに、本県が輩出した8人の総理大臣の業績等を広く紹介する「山口県の総理大臣展」を下記のとおり開催します。

山口県庁の公式サイトは、堂々と「本県が輩出した8人の総理大臣」と書いてある。宇部市で生まれ、17歳まで山口県で過ごし、山口県で教育を受けた菅直人氏を含めると9人になるはずだ。しかし、東京生まれ東京育ちの安倍晋三氏は大々的に取り上げても、菅直人氏のほうは完全にスルーした。当時の山口県庁は、新聞社や雑誌社の取材に、首相官邸ホームページの記載ルールに従ったという旨の実に役人らしい他責的な回答をなさっていた(この取材に対応した職員も大変だったろうなと思う)。筆者も菅直人氏が良い首相だったとは思わないが、それなら潔く「県として菅直人氏を出すのは恥ずかしい」ぐらいに答えればよかったと思う。

次期首相の出身地はどうなる?

フリーターから立身出世を果たした菅義偉氏。前任者の坊ちゃん育ちが無責任に放り投げた火中の栗を拾わされて大変だったと思う。個人的には衆愚に惑わされずに東京オリンピック・パラリンピック開催を成功させた点や、新型コロナワクチンの素早い確保、携帯電話料金の引き下げ、デジタル庁創設など公約を着実に実行されたことを、1人の有権者として素直に評価している。短い期間でしたが、本当にお疲れ様でした。

さて、自民党総裁選では有力候補の名前が挙がってきたが、次の首相となる人物の首相ホームページ上の表記はどうなるのか?

岸田文雄氏なら出身地が東京都、選挙区が広島1区。

河野太郎氏なら出身地が神奈川県、選挙も神奈川15区。

高市早苗氏なら出身地が奈良県、選挙区も奈良県2区となるはずだ。

仮に岸田氏が就いた場合は、菅義偉首相のように項目を設けて、選挙区と出身地を分けて書くのか。出身地と選挙区が同じ河野氏と高市氏なら、また「出身地」表記に戻るのだろうか。

後任の方には、ぜひ長期政権を築いてほしい。またメリーゴーランドのように首相が1年で交代する悪夢ような時代に戻ってほしくない(その端緒になったのは第1次安倍政権だ)。事実上の日本の次のリーダーを決める政党総裁選の行方を見守りたい。



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